232話 カーテン
早速、エーリッヒに研ぎを教えるべく旧鍛冶場へと向かった。
「研ぎをやるならここを使って良い」
「ここかよ」
「不満ならこの話は無かった事にして良い」
「ちょ、待て・・・やる・・・」
だったら文句言うなよ。
「ちゃんとベッドやら家具も置いてやるから」
「ベッドは必須だがアレ着けてくれ」
「なんだよ」
「カーテン」
「要るか?見られて恥ずかしいって年でもないだろ」
「いや、見られたくはないだろ。それに、メインは夜以外に寝る時にカーテン無いと無理だ」
まぁ、確かに。
鍛冶場として建てられた建物だから窓は大きくて多い。
外から丸見えなのも直射日光が顔面を直撃するのも問題ではあるか・・・。
「分かった、分かった。カーテンも着ける」
「ってか、なんでカーテン無いんだよ」
「そりゃ、鍛冶場だからだろ。燃えやすい物は極力無くしてる」
「そういやそうだったな」
「で、他には何が要る?なるべく善処はする」
「いや、ベッドとカーテンがありゃそれで良い」
そこは贅沢言わないのかよ。
「後はそうだな・・・施錠はちゃんとしてくれ」
「おう」
「基本、ここの管理は任せるから防犯とかも頼むぞ?」
「おう」
「飯はそうだな・・・俺が用意しても良いけど、絶対とは言えないからシェリルさん任せても良いですか?」
「畏まりました」
「って事だから、腹減ったらシェリルさんに言てくれ。ただし、無茶は言うなよ?」
「言うかっ」
「他に何か気になる事は?」
「細かい条件は始めてみない事には見えない部分もあるだろうからな」
「まぁなぁ」
「その辺は追々として。研ぎってよ」
「うん?」
「3本でどんくらい掛かるんだ?時間は」
「どうだろ・・・最初は1本研ぐのにも無限に時間掛かった気もする」
「は?」
「いや、研いでも研いでもゴールが見えなくて何が正解かも分からなくてな」
「ふむ」
「今だと3本で1時間も掛からないくらいか?」
「そんなもんか」
「いや、慣れてコツ掴んだからだぞ?」
「最初からノルマ3本じゃないんだろ?」
「まぁ、最初はな」
「ゆっくりコツ掴んでくわ」
「ゆっくりじゃ困る。さっさと本数研げる様になれよ」
「ま、まぁ、なるべくな・・・?そこまで期待はするな」
習うよりも慣れろ。
明後日からフーバスタンクに行くかもしれないが今日から研ぎの練習をして貰う事になった。
「試しにこれ研いでみてくれ」
「これは?」
「たぶん、返り討ちにした盗賊から巻き上げたゴミみたいな剣」
「あー・・・まぁ、練習には丁度良いか」
そう。
俺が打った剣を練習で潰されても困るのでアイテムボックスから引っ張り出してきた。
「おーい、ちょっと良いかー?」
「あ、はーい。どうしました?」
「いや、にーちゃんじゃ話にならんからシェリルさん来てくれねぇか?」
「行って参ります」
「はい」
と、親方に呼ばれてシェリルさんが去っていった。
うん、俺じゃ話にならないのはそうなんだけど面と向かって言われると微妙にショックを受ける。
「どんぐらい力入れるんだ?」
「んー、あんま入れない方が良い」
「ほーん」
手本を見せたりしつつ研ぎ方の指導をしていく。
「失礼します」
「あ、どうかしました?」
「いえ、母が外したので私が代わりに」
「あ、はい」
「何かございましたらお申し付け下さい」
「はい」
と、シェリルさんに代わりリンさんが背後で待機する事になった。
「どのタイミングで目を細かくしてくんだ?」
「分からん。感覚なんだよなぁ・・」
「なんだそれ」
エーリッヒへの指導を続けていて気付いた事がある。
「やってみます?」
「!?」
「いや、気になってそうだったんで」
「良いですか・・・?」
「全然、良いですよ」
と、リンさんが研ぎに興味津々だったのでアイテムボックスからまたゴミみたいな剣を出した。
「切れ味は悪いですけど気を付けて下さいね」
「はいっ」
エーリッヒとリンさん。同時に指導していくが誰がどう見てもリンさんの方が上手い。
「いかがですか?」
「んー、これなら全然OKですね」
「やった・・・あ、ありがとうございます」
エーリッヒよりもかなり遅れてやり始めたにも関わらずエーリッヒよりも遥かに早く研ぎ終えた。
そして、その様子を見て明らかにエーリッヒは不貞腐れている。
「現状、1本2時間って所か」
「まだ終わってないけどな」
「そこまで研げてりゃほぼほぼ完成だ」
「いや、まだここが甘い・・・」
「それが分かってりゃ上出来だろ」
「3本で6時間かよ・・・中々だな・・・」
「最初でそれだったら1本1時間くらいなら直ぐだろ」
「そうか、3時間で宿代なら割も良いか」
生活に困窮しそうなやつがタイパを気にすんなよ。
ここで働けば食うに困らないのに。




