231話 ポシャ
漬物を買い込み、買い物欲は満たされたがこれで家に帰っていたら普段と何も変わらないのでこのまま散策を続行する事にした。
路地裏にある店は民家か店舗なのか判断付きにくいものがあり。店舗なのかと思い覗き込んでいると怒られたりもした。
聞くと前の住人は店舗兼住宅として使用していたらしく頻繁に間違えられて勝手に入って来る人も居て迷惑しているんだとか。
だったら看板を取り外せば多少はマシになるだろうと伝えた所。ここは賃貸で、大家にクレームを入れたが金が掛かるからと断られたらしい。外したいなら自費で外せと言われ、その物言いが気に入らなかったらしく意固地になって外していないそうだ。
知らんがな・・・。
全てを回りきった訳では無いが収穫としては漬物くらい。
色々と疲れたので帰ってきてダラダラとしている。
「エーリッヒさんがお見えです」
「エーリッヒが?」
「リビングにお通ししてお待ち頂いております」
「はい」
エーリッヒと会うのもしばらく振りか。
「おう」
「どうした?」
「それはこっちのセリフだ」
「え?」
「何でメイドが居て、新しく何か建ててるし。何があったんだよ」
「あー・・・色々?」
「何の説明にもなってねぇ」
「で、どうしたんだ?」
「説明する気無しかよ・・・いやな?フーバスタンクに行く依頼受けたぞ」
「あー・・・その話はポシャった」
「は?」
「エーリッヒに剣の輸送依頼するつもりだったんだけど」
「おう。そう言ってたよな?」
「月1で取りに来てくれるらしくてな」
「マジかよ」
「さっき言ってた今建ててるのもそれを管理する関係の建物らしい」
「大事になってんな」
「もっと小ぢんまりとやりたいんだけどな・・・」
「って事は、仕事は無いって事か」
「そうなる・・・いや、ある」
「お?」
「いつから行くんだ?」
「明後日出発だな」
「これなんだけど。保存食とはいえ食べ物だから直前に取りに来て貰って良いか?」
「それは構わんが。何だこれ?」
「漬物」
「酢漬けか?」
「似た感じだ」
ナエジは確か滋賀出身で柴漬けとすぐきは京都の漬物だから故郷の味・・・というのは暴論になるか?
「これと手紙の配達を頼む」
「分かった」
「いや、待て」
「ん?」
「シェリルさん」
「はい」
「ナエジって外交か何かで出てますよね?」
「はい」
「戻るのって当分先だったり・・・」
「します」
「すまん。これもポシャった」
「おいっ」
「何だ?そんなに生活費厳しいか?」
「ま、まだ・・・しばらくは・・・」
「ギリギリじゃねぇか」
2-3ヶ月は保つんじゃなかったのかよ。
「まぁ、仕事を振ってやるって約束はしたからなぁ」
「割が良くて楽な仕事を寄越せっ」
「安全で楽で飯が食えて雨風を凌げるけど無給ならどうだ?」
「無給?タダ働きかよっ」
「いや、住む場所と飯がある」
「宿代とイコールって事か」
「いや、3食出るから宿代+αだ」
「ふむ・・・」
渋ってるな。
やっぱり無給ってのは流石にか。
「拘束時間は?」
「んー、ノルマ制だな。ノルマこなせば後は自由時間。働こうが遊ぼうが休もうが自由だ」
「ノルマってどんなだよ。ってか、何やらせる気だ?」
「俺が打った剣の研ぎだ」
「ふむ」
「1日に3本研ぐのがノルマ。で、どうだ?」
「どんぐらい掛かるんだ?素人だぞ?俺は」
「俺でも出来たんだから何とかなるだろ」
「お前は鍛冶屋じゃねぇか」
「あのおっさんの雑な説明くらいでしか教わった事無い鍛冶屋だけどな」
「本当かよ?」
「いや、お前も知ってるだろ」
「忘れねぇよ」
「ほら」
「最初は一緒にって言ってたのに。お前だけ先にやってたからな」
「そこまで覚えてんなら俺が完全に素人だったのも覚えてんだろっ」
「まぁ、そうだった気がする」
なんで、そこはあやふやなんだよ。
「ほぼ独学で何とかなってんだからエーリッヒなら余裕だろ」
「そうかぁ?」
「やってみてやれそうなら継続して受けりゃ良いし、無理だったらこの話は無し。それで良いだろ」
「だな」
「あ、それで1日に3本ってのは暫定な?」
「増やす気か?」
「慣れたら増やす」
「そりゃ契約違反だろ」
「だったら初日から3本完璧に研げるか?研げなかったら飯も無し住む所も無しだぞ?」
「ふむ・・・」
「最初は大目に見てやる。んで、慣れてきたら増やす。別に無茶は言わねぇよ」
「ふむ・・・まぁ、とりあえずやってみるか」
「上手くいけば手に職も付くんだし一石二鳥だろ」
「なんだそれ?」
「1個の事で複数に良い結果が出るって事だ・・・」
「ふーん、そんな言い回しがあるんだな」
また微妙に伝わらなかった。
もっと変な言葉が伝わったりするから線引きが本当に分からない。
まぁ、何にせよ・・・エーリッヒへの仕事はこれでどうにかなるかな?




