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227話 メイド喫茶

女性陣がどんな話で盛り上がっていたのかは分からないが親しくなった様なので一先ずは安心だ。


そして、マーシーさんがジャコ君を寝かし付けに行ったタイミングでお暇する事になった。


「それじゃあ、送ります」


まだそこまで遅い時間ではないが陽も完全に沈んでいるのに女性だけで帰らせる訳にはいかない。


「いえ、私共がお送り致します」

「いやいやいや、意味分からなくないですか?」

「メイドがご主人様をお送りする。普通かと」


確かに。そう言われたらそうな気もしなくもないような・・・と、思ったがメイドさんはお出迎えとお見送りが普通だろ。送り届けたりはしないはずだ。

いや、それはメイドカフェか。


「じゃあ、ご主人様からの命令です。送ります」

「畏まりました」


あ、そこはすんなり折れてくれるのか。


という訳で、シェリルさんとリンさんを送り届けてから1杯引っ掛けて帰った。


翌朝、目が覚めると同時に打ってみたい剣のアイディアが舞い降りた。

忘れない内にと急いでベッドから飛び下り、階段を下りて玄関に向かおうとした瞬間。何かが視界を掠めた気がした。


「あれ?」

「おはようございます」

「リ、リンさん・・・?」

「はい。朝食の準備になさいますか?」

「え、いや、なんで?」

「え?朝なので朝食を・・・」

「いや、じゃなくて・・・なんでここに?」

「え?メイドなので?」

「いや、どうやって入ったんですか?」

「昨日、マーシーさんから鍵を譲り受けました」

「な、なるほど・・・」

「朝食はどうなさいますか?」

「あー・・・朝食は大丈夫です」

「かしこまりました」


玄関を飛び出し、鍛冶場へと向かい火を(おこ)し、諸々の準備を終えてから気付いた。


「どんなだっけ・・・?」


リンさんに驚いた所為か時間が経ち過ぎた所為かは分からないが寝起き早々に浮かんだアイディアは完全に霧散して跡形も無くなっていた。


「はぁ~・・・ナエジからの依頼はロングソードだっけか・・・」


諦めてロングソードを打っていく。

何度も打った事があるので面白味には欠けるが・・・その分、理解度も高いので細部に拘りを持って打つ事が出来る。

とはいえ、そう何本も打っていると更に面白味が無くなり。楽しいはずの鍛冶なのに集中も出来ない。


「ミト様!」

「!?」

「お体に障ります」

「え?」

「朝食だけならまだしも、昼食もお召し上がりになってませんし」


顔を上げると、リンさんが心配そうな顔をしてこちらを覗き込んでいた。


「そろそろお休みになりませんと」

「あー、うん」


窓に目をやると・・・あれ?外が暗い。


「え?夜っ!?」

「はい。夕食の準備も出来てますので、そろそろ休憩なさって下さい」

「夕食・・・もうそんな時間なんですね」

「さっきからそう言ってるじゃないですかっ」


リンさんに手を引かれ鍛冶場から引き摺り出された。


「うぷっ」

「じっとしてて下さいっ」


顔を粗めのタオルでゴシゴシと力任せに拭かれた。

絶妙に痛い。


「よし!」


拭くのに満足したのか今度は背中を押され母屋の方へと進ませられた。


家の中に入ると良い匂いが漂っている。リビングには昨日と既視感がある・・・テーブルの上に所狭しと大量の料理が並んでいた。


「どうぞ、お召し上がり下さい!」

「う、うん・・・」


ご飯の前に汗も流したいし着替えもしたいがリンさんの妙な圧に負けたので観念して席に座った。


「いただきます」

「はい」


まずは、ホウレンソウの煮浸し。

あれ?この味って・・・。


「マーシーさんの味っぽい」

「はい。マーシーさんが作って下さいました」

「あ、そうなの?」

「はい。ミト様がお好きとの事でマーシーさんに料理を習いに行かせて頂きまして」

「うん」

「お手本として作って下さった料理を頂いてきたので」

「なるほど」


習ったって事は、これからはこの味を家でも味わえるって事か。


「ってか、リンさんも一緒に食べましょう」

「いえ」

「いや、1人じゃ食べ切れない量ですし」

「いえ」

「メイドと主人で同じテーブルに着けないとかそういうのは良いじゃないですか」

「いえ・・・味見で食べすぎて・・・もう1口も入らないです・・・」

「あ、うん、そうですか・・・」


それもそうか。

テーブルいっぱいに並んでる訳だから品数もかなりの物だ。

それを作りながら味見していれば作り終えた頃にはそうなっていてもおかしくないか。


食事を終えてからリンさんを送っていった。

明日からはシェリルさんとリンさんの2人体制になるらしいが・・・この小さい家で2人もメイドさんが必要だとは思えない。


そんな事を考えながら鍛冶場の掃除や片付けをた。

泥棒云々の話もあったので剣等金目の物はアイテムボックスに収納して炉の熱もある程度下がったのを確認してから母屋へと帰った。



翌朝、予想外の来客がある事など気付きもせず。

思い出したかの様に金床と鎚を抱き枕にして眠りについた。


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