220話 あっさり
食事の前にエーリッヒの土産のトルネードポテトに齧りつきながら配膳をしていく。
「何か手伝うか?」
「いや、座って食ってろ」
食器棚とかから出してるならともかく、アイテムボックスから食器も鍋も出してるんだからやって貰う事なんてほぼ無い。
「にしても、意外と美味いな。これ」
「変わった事思い付くヤツも居るもんだよな」
一時期、ショート動画やらで流行ってたのは知っているが食べた事は無かった。が・・・まさか日本で食べずに異世界でトルネードポテト初体験をするとは思ってもみなかった。
「たぶん、ナエジだな」
「ん?フーバスタンクのお子様領主がどうかしたか?」
「たぶん、あいつが広めたんだと思う」
「へー、子供の方が頭が柔軟って言うからな」
まぁ、バリバリの盗作だけどな。
「ほれ、エールだ」
「最高の組み合わせだな」
トルネードポテトをツマミにビールを飲み始めた結果・・・なし崩し的に夕飯というよりも酒盛りになってしまった。
そして・・・。
「おい、エーリッヒ起きろ」
「んあ?」
「そんな飲んで宿まで帰れんのか?」
「余裕だ、余裕」
と、言いつつも目の焦点は合ってないし動きが緩慢で雑になっていて完全にコントロール出来ていない。
「あー、もう・・・今日は泊まるか?」
「いーや、帰るっ。荷物持って帰るっ」
「そんな酔ってて帰れるかも怪しいのに荷物なんて無理だろ」
「余裕だ、余裕」
ガタン───。
いきなり立ち上がって椅子を倒した。
「あー、もう・・・」
「んじゃ、ご馳走になったな」
「あ、おい、待て」
と、そのままドアを開けて出ていった。
放っておこうかとも思ったが流石に心配なので外まで追いかけると・・・旧鍛冶場に向かって千鳥足で歩いていた。
「あー、もう面倒臭ぇ・・・エーリッヒ!」
「んー?なんだぁ?」
「ここにベッド出してやるからそのままここで寝ろ」
「おう、おやすみぃ」
「まだ出してねぇよ」
やっとの思いでエーリッヒをベッドに押し込み寝かせる事に成功した。
「ふぅ・・・」
朝になって起きたら適当に荷物持って宿に帰るだろう。
そう思って1人でゆっくりと飲み直した。
チビチビと1人で飲み。良い感じに酔いの回ったタイミングで無性にラーメンが食べたくなったが当然そんな物は無く・・・マーシーさんが作ってくれた味噌汁にうどんを入れて食べた。
美味しい。ものすごく美味しい。
でも、何故かラーメンでしか満たせない何かがある気がした。
とはいえ、わざわざ自分で中華麺の開発をしたりラーメンスープのレシピを考えたりする余裕は無く。酔いと満腹感から来る眠気には抗えずそのままベッドに滑り込んだ。
翌朝、起きて階段を下りていくと。
「よう」
「帰ってなかったのか」
「折角だから朝飯食わせて貰ってから帰ろうと思ってな」
「宿で出ないのかよ・・・」
「宿よりこっちのが美味いからな」
「お前・・・いい加減、金取んぞ」
「良いじゃねぇか、ついでだろ?ついで」
「まぁ・・・今回だけだからな?」
と、渋々了承した。
「昨日、飲みすぎたからな。あっさり目で頼む」
「待て待て待て」
「ん?」
「まず、俺は起きたばっかだ。便所にも行きたいし顔洗ったり色々したい」
「ん?おう。さっさとすりゃ良いだろ」
「んで、金は払わないクセに贅沢言いすぎだろ」
「要望ってのは伝えた方が良いだろ。なんでも良いが1番困るって言うだろ?」
「まぁ、いい・・・続きは後でだ・・・」
トイレに行ったり顔を洗ったり深い溜息を吐いたり。
「そういや、あんま覚えてないんだけど。なんで俺は鍛冶場で寝てたんだ?」
「ベロベロに酔っ払って歩けもしないのに荷物持って帰るってゴネてたから鍛冶場で寝かせたんだよ」
「ふーん」
「ところで・・・お前、金無いだろ?」
「無いな。正確には今はまだ多少あるけど、しばらく大した収入が期待出来無いからジリ貧でキツくなるのが目に見えてる。って感じだ」
「だったら宿代もバカにならんよな?」
「その宿代が1番の出費だからな」
「だから、鍛冶場で寝泊まりするか?って聞こうかと思ってたんだよ」
「おおっ!良いのか?」
「でも、そうなったら毎日飯を集りに来るだろうから、その話は無しだ」
「なんでだよっ。毎日は来ねぇよ」
「実際、来てんじゃん・・・」
「たまたまだろ?」
「いや、朝昼晩と毎食集りに来るのが目に見えてる」
「俺だって仕事はあるんだからな?」
「まぁ、その仕事は振ってやるから。さっさと自立してくれ」
「養って貰ってる訳じゃねぇだろ」
「じゃあ、飯を集りに来んな」
「分かった、分かった。それよりも今は朝飯を食わしてくれ」
俺の言葉は届いてないな・・・。
鍛冶場の防犯的にもエーリッヒに住ませれば良いかと思ったが毎日毎日飯の世話をするとか絶対に無理だから何か別の方法を考えないとな。




