219話 プロの手仕事
おっさんの助言で鍛冶場の施錠というか防犯にも気を付けないといけないという事に気付けた。
「で、この山は何だ?」
「あー、それはエーリッヒがギルド倉庫に預けてた素材やら道具」
「なんでこんなトコに置いてんだ」
「宿には置けないし、ギルド倉庫を使う権利も今は無いらしくて」
「ふむ」
「こっから持ってかせて、売っ払わせる」
「アイツそんな金に困ってんのかよ」
「エレノアの尻拭いで走り回ってるっぽい」
「なるほどな」
「だから、何か割の良い仕事があったら振ってやってくれ」
「それは、お前の方が色々あるだろ」
「一応、振るつもりだけどな」
「まぁ、考えといてやる」
考えれば考えるほど不憫なやつだ。
弟子を庇って逃げるハメになって、弟子の尻拭いで駆けずり回って、金に困って溜め込んだ素材を安く売り払わないといけなくなっている。
「すみません、確認お願いします」
「はーい」
と、新鍛冶場の方を工事してくれている職人さんからお呼びが掛かった。
「ちょい行って来るわ」
「俺もそろそろ仕事に戻る」
「おう」
鍛冶場に向かうと外から見ても換気口が複数取り付けられているのが分かる。
「空気の流れは実際に炉に熱が入らないと分からないのですが」
「あー、はいはい、そうですね」
「一応はこれで大丈夫かと思います」
「ありがとうございます」
内側からも外側にも換気口には柵が取り付けられていて小動物が入れない様になっているらしい。
冬場は特に暖を取る為に動物が寄って来てしまうのでその対策らしい。
そして、外側には小さな雨樋が付いていて雨の侵入を防いでいる。
更に換気口は外に向かって少し傾斜があるので水等が入って来にくくはなっているそうだ。
「不具合があれば連絡頂ければ直ぐに直しに参りますので」
「はい」
「では、失礼します」
「ありがとうございました」
職人さん2人が帰った後、換気口をチェックしたがちゃんと丁寧な仕事ぶりで感心した。
序盤見ていた時はオタオタしていて覚束手付きなかったが、もしかしたら見られて緊張していたとかなのかもしれない。
さて、やっと1人になったので残った剣を研いでいく。が、鍛冶の時とは違って集中力が持続しない。
朝、職人さん達が来てから研ぎ始め。直ぐにおっさんが来て喋りながら一応研いではいたが・・・ながら作業なので大して進んでいない。
そして、昼前には工事も終わり研ぎに戻ったが直ぐに飽きて昼食休憩を取ったりして遅々として作業が進んでいなかったりする。
気を取り直して昼食後に研ぎに戻ったが換気口の効果を確認した過ぎて研ぎに集中出来ない。
「うん、先に確認しよう」
炉に火を入れて鍛冶場の室温を上げていく。
ドアも閉めて普段よりも火力を上げて室温を上げていく。以前の鍛冶場内上部のみ風が抜ける仕様とは違い下部にも緩やかな風の流れを感じる。
ただ、灰が舞い上がったりするほどの風量では無い。
なので、以前は籠もっていた熱がしっかりと外に排出されていてだいぶ涼しく感じる。
炉の温度が上がり切った状態でドアを開けても突風が吹いたりはしなくなった。
「まぁ、何て言うか?折角、炉に火も入れたし?打たないともったいないよな」
換気口の効果を実感した。
プロの仕事っていうのも実感した。
それに何故か対抗意識を燃やしたのかもしれないし、研ぎから逃げただけかもしれないが・・・研ぎを途中で放っぽりだして鎚を握って鍛冶場に籠もった。
「おーい」
外からエーリッヒの声がする。
ガチャ───。
「どうした?」
「ん?あぁ、そっちに居たのか」
「おう、改修工事も終わったからチェックがてらな。で、どうした?」
「いや、預かって貰ってたのを持ってこうと思ってな」
「あぁ、別に勝手に持ってって良いのに」
「いや、ついでに飯も食わせて貰おうと思ってな」
「完全にそっちがメインじゃねぇかっ」
「まぁな」
隠せ。
下心は隠してこそ下心って言うんだ。
「もう1回言っとくぞ?」
「なんだ?」
「お互いがお互いに顔を見飽きてんだ。毎日は来んなよ?」
「わーってるって」
この軽さはきっと理解していない。
「今、鍛冶の途中だからもうちょい待ってくれ」
「だったら1回宿に荷物持ってくわ」
「あー、たぶんそれで丁度良いくらいだ」
「そうか。んじゃ、また後でな」
途中だった鍛造を切りの良い所までしてから炉の火を落とした。
それから軽く汗と汚れを落として、食事の準備に取り掛かった。
コンコン───。
「開いてるー」
ガチャ───。
「お?待たせたか」
「いや、丁度良いタイミングだ」
「そうか。土産だ」
「お?気が利くな」
エーリッヒのお土産はトルネードポテト。
最近、フーバスタンクで流行ってオーパスポーカスでも露店での販売が流行の兆しを見せているらしい。
恐らく、発信源はナエジなんだろうな。




