211話 糸目
土地の権利やら諸々についてはまたしてもジョーさんに丸投げ。
鍛冶場の建設に関してはエレノアが憎いというよりも今の鍛冶場よりも環境を良くしたいという欲が出てしまったという理由が大きい。
炉の位置。窓の位置や高さ。導線も自由に出来ると考えるとかなり便利になる気がする。
その為にエレノアが地獄に落ちるのは流石に罪悪感があるのでいざという時は俺が金を出しても良いとは思う。
「一月もあれば完成するそうですよ」
「へ?」
親方に配置やデザインのリクエストを伝え、ジョーさんと親方が何やら2人で話していると思ったらそんな言葉が飛び出してきた。
「早すぎじゃないですか?」
「金に糸目を付けずに最速でとお願いしました」
「材料も好きに良いのを使って良いんだな?」
「はい、最高級の物をふんだんに使って下さい」
「無駄に彫刻の柱とかにするか?」
「良いですね!」
「いやいやいや、必要な物が高いのは仕方無いですけど。無駄に出費を増やすのは止めときましょう・・・」
「冗談を真に受けんな」
あ、冗談か。
「冗談だったんですか?」
ジョーさんのは冗談じゃなかった・・・。
「鍛冶場にそんなもん要らんだろ」
親方はまともで良かった。
そして、驚いたのは施工が翌日からだった事だ。
もっと準備とか要るんじゃないかと思う。事前準備をしっかりした方が結果的に早く終わったりする。
そう訝しみながら見学をしていたが準備は万端だった。
そして、人数が異様に多い。これが一月で完成する理由だろう。結局はマンパワー。
飲み物と甘い物等を差し入れして家を建てた時の事なんかを思い出していると。
「始まりましたね」
と、ジョーさんも見学に来たようだ。
「この何もない状態から一月で出来るとか凄いですよね」
「熟練の職人がこれだけ集まればこそでしょうね」
「熟練の・・・」
「ミトさんの家を建てた時の職人さんもちらほら居ますね」
「おー、あの時の」
「今は皆さん独立されてますけど。来てくださってますね」
「独立・・・」
10年以上経ってるんだから、あの時の若手も中堅をすっ飛ばしてベテランになるか。
「って事は高そうですね」
「でしょうね」
ジョーさんってエレノアの事嫌いだったのか?
嫌いを越えて恨んでるレベルにも感じるけど・・・。
「そうですね。管理を任せたのですが雑な事をしたのが理由ですかね」
「えっ」
「違いましたか?」
え?声に出てたか?
「そこまでエレノアの事を嫌わなくても。って顔をされてたので」
「あー・・・正解です」
「私も確認を怠ったので同罪ではあるのですが・・・」
「いやいや、ジョーさんにはお世話になりっぱなしですし」
「そうですね。信頼して任せたのを裏切られた腹いせというのもあるのかもしれませんね」
「あー・・・」
可愛さ余って憎さ百倍みたいな?
「釘は刺しておくつもりですが」
「はい?」
「ミトさんに直接クレームを入れて来たり、泣き落としなんかをするかもしれませんが無視して下さい」
「あ、エレノアですか・・・」
「はい」
泣き落としか・・・女の子に泣き落としされたら落ちてしまう姿しか浮かばないけどどうしたものか。
「ちなみに」
「はい」
「エレノアの事は比較的嫌いです」
「えっ」
「ミトさんの事は勝手にですが友人だと思ってます」
「世話になりっぱなしですけどね」
「いえいえ、それはこちらもです」
そんな事はないだろ。
おっさんには振り回されて迷惑掛けられて酒を集られて・・・世話にもなってるけどトータルで世話してる気がしないでもないけど、ジョーさんには世話になりっぱなしだ。マーシーさんにも世話になりっぱなしだからこの夫婦には本当に頭が上がらない。
「私も世話になりっぱなしだと思ってます。バカ親父の面倒を見て貰ったりですよか・・・」
「あぁ・・・いやいや、おっさんには世話になってますよ。世話もしてるけど・・・」
「そうなんですよ。人と人なんて持ちつ持たれつだと思うんですよね」
「そうですね」
「あの娘達には感謝が無いんですよね。してるのかもしれないですけど感じられない」
「あー・・・」
分からないではない。
でも、若い女の子ってそういうもんな気もする。
いや?エレノアってもう言うほど若くは無いか・・・いや、流石にそれはライン越えだ。
「ミトさんにはかなりお世話になってますよね?主に住む場所関連で」
「そうですね」
「オーパスポーカスだけじゃなくフーバスタンクででもじゃないですか」
「はい」
「手土産も持たせて口利きもして」
「そうですね」
「その挙げ句がコレですからね」
それはそう。
家を勝手に使われたのは別に良い。掃除もせずに出ていったのは少しイラっとしたけど我慢は出来る。
でも、人の家具を適当に押し込んで所為で鍛冶場が傷んだのは許せない。
でも、借金地獄に落とすほど憎んでいるかというとそうでも無いから微妙な所ではある・・・。




