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21話 ブランデー

転移者の先代領主ではなく2代目の領主様に呼び出しを喰らい対面で色々と話す事になってしまったが・・・向こうが言うには悪いようにはしないっぽい。


「カギノ様。そろそろお時間が」

「ふむ。少し話し込み過ぎてしまいましたな」

「あぁ、すみません。長居しすぎましたね」

「いえいえ、またお呼び立てする事があると思いますがお応え頂ければと思います」

「はい」

「セバスチャン。後は頼みます」

「畏まりました」

「それでは失礼させて頂きます」

「はい」


と、領主様は仕事に戻っていったっぽい。


「ミト様。こちらを」

「?」


金貨?一瞬、今日来た事に対する報酬かと思ったがこんな金貨は見た事がない。


「カギノ伯爵家の徽章となります」

「キショウ・・・」

「カギノ家の関係者である証明になります」

「あぁ、なるほど」

「領内であれば絶大な、国内でもかなりの効力を発揮致します」

「でしょうね・・・」

「なので悪用や濫用はお控え下さい」

「はい」

「カギノ様にご用の際はこちらを提示の上で連絡頂ければと思います」

「分かりました」

「それから、こちらをお土産にお持ち下さい」


と、結構な量の酒が用意されていた。


「お好きそうでしたので」

「ま、まぁ、嫌いではないですね」

「存じ上げておりますのでアイテムボックスに入れてお持ち帰り下さい」

「は、はい・・・」


クセでアイテムボックスに入れ、いや、偽装してアイテムバッグに入れる振りを。と、逡巡した瞬間にアイテムボックスの事もバレてるぞ。と、言われてしまった。


うん、素性も能力も全部バレてると思った方が良いな。


「あの・・・」

「はい」

「伯爵様は俺に何のアドバイスを求めてるんですか?」

「私がこんな事を申し上げて宜しいのか悩みますが」

「はい」

「お父上の影を求めてらっしゃるのかと」

「影?」

「お忙しいお方でしたので。幼少の頃は一緒に居られるお時間も少なかったとお聞き致しました」

「あぁ、同じ日本人という事で俺から父親に通ずる何かを感じたいという事ですか」

「有り体に言ってしまうとその様になるのかもしれません」

「じゃあ、話し相手になれば良いって感じですね」

「先代・・・と、ミト様の故郷は食にこだわりがある国だとお聞きました」

「まぁ、そうですね」

「ですので、名物になる様な料理等をご教授頂ければと思います」

「いや、先代が色々広めてますよね?」

「食べ歩き等されて、無いと思った物をお教え頂ければ」

「ま、まぁ、それくらいなら・・・」

「掛かった費用は仰って下さればお支払い致しますので」

「食べ歩きのですか?」

「はい。調査費用ですので」

「分かりました・・・」


そうなると責任感が・・・。


「ご希望されるのでしたら最高級の宿もご紹介致します。勿論、費用はこちらが」

「いや、大丈夫です」

「そうでございますか」

「はい。あそこでも十分快適です」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、俺もこれで」

「はい。ご足労頂きありがとうございました」



ふ~~~~~~~。

やっと帰って来られた。


靴を脱ぎベッドに飛び込みようやく人心地ついた。


そして、面倒な事に気が抜けると同時に腹も減ってきた。

窓の外を見ると陽が傾き始めるかどうかという時間帯。まだ夕食の時間には早い。


我慢して宿の夕食を待つか。もう割り切って居酒屋に食いに行くか。それとも、頼まれたから食べ歩きでもして俺でも作り方を知っているがこの街に無い食べ物を探すか。


悩む・・・と見せかけて、何度も出かけるのも億劫なのでアイテムボックスから取り出した小さな干し肉を口に放り込み。先程貰った酒がどの程度の物か見てやろう。と、グラスに注いだ。


「あれ?これ・・・」


深い琥珀色。鼻腔をくすぐる仄かに甘い香り。

少し口に含むと香りが口の中で爆発した。


「お、おう・・・」


どう考えても王城から盗んだ酒よりも、冒険者ギルドで揉めた時に貴族から盗んだ酒よりも、商業ギルドから盗んだ酒よりも遥かに美味い。


飲み込み、喉を通り、食道を通り、胃に広がっていくのを感じるがアルコールの嫌な刺激を一切感じない。


「これいくらすんだよ・・・」


いや、待てよ。

先代が蒸留技術や熟成方法を伝えたからかもしれない。

そして、その技術を秘匿しているから他所には出回っていないだけでこの街でならそこまでの金額じゃない可能性も・・・まだある・・・あってくれ。


他所の国に持っていけばこの酒1本で余裕で家が建つ。しかも、貴族が住むようなそこそこデカい豪邸が。

それくらいの価値はあるはずだ


それを・・・10本も貰っちまった・・・。

これは見合うだけの知識なり情報なりを返さなければ・・・。



頭を抱え。気付いた時には宿の夕食が配膳される時間になっていた。

空腹には抗えず、酒の事なんかはすっかり忘れて宿の夕食に舌鼓を打った。


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