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209話 限界マシマシ

猶予があったにも関わらず引っ越しを後回しにして引き渡し期限に間に合わず。掃除もせず原状回復も怠った。

俺のエレノアへの信頼は元々高くは無かったがほぼ無いと言っても良いのかもしれない。


2年近く放置されて埃を被った寝具を使う気にはなれないのでベッドやらは全て買い替えよう。

テーブルや椅子は普通に使えるし問題無い。

ベッドを買い替えるのは俺の気分の問題なので仕方無いとして・・・鍛冶場に寝具を放り込んで締め切って放置された事で鍛冶場全体がカビ臭くなっている。


2年振りに火を入れるならメンテナンスが必須なのは同じではあるが、これは炉や煙突も傷んでいる可能性が高い。


「進捗は如何ですか?」

「あ、ジョーさん」

「ん・・・少しカビ臭いですね」

「そうなんですよ・・・」


エレノアへのフラストレーションが溜まっていたのでジョーさんにぶちまけた。


「ふむ・・・流石にそれはちょっと舐め過ぎですね」

「ですよねっ!?」

「ちょっと痛い目を見て貰いましょうか」

「え?」

「家って住まないと傷むんですよ」

「って言いますよね」

「なので格安で住む事を許可しました」

「はい」

「まぁ、ミトさんの家なのに私が許可を出すのもおかしな話ではあるのですが」

「いやいや、ジョーさんに任せてますよ」

「ありがとうございます」


この人に任せておけば変な事にはならないと信頼している。


「許可した訳ですが。家を傷ませない為です」

「はい」

「そして、ミトさんが帰って来たら即座に明け渡す事」

「はい」

「原状回復しろとは伝えてませんでしたが、夜逃げ同然での引き渡しは想定してませんでしたからね」


夜逃げ・・・まぁ、そうか。自分らの事しか考えてないもんな。


「前回の賃料も未払ですし。そこに鍛冶場の修繕費。それから、原状回復に必要な費用その他諸々を纏めて一括で請求しましょう」

「え?絶対払えないですよね?」

「払えないでしょうね」

「え?」

「なので、農協から借り入れして一括で返済して貰いましょう」

「ふむ・・・」

「そうしたら、借金を返し終わるまで農協からの依頼を格安で受けざるを得なくなりますよね」

「お、おぉ・・・怖っ・・・」

「利子も発生しますからね」

「でも、そんないきます?修繕費とかで」

「迷惑料やら慰謝料も込み込みで増し増しの盛り盛りでいきましょう」


と、満面の笑みで怖い事を言っている。


「こう言っては難ですが・・・」

「はい」

「意外とやってる事はやってますからね」

「えっ?」

「オーパスポーカスに戻った理由とか」

「何かあるんですか?」

「エーリッヒさんの得意先とか全部掻っ攫ってますからね」

「おぉー・・・」


やるなぁ。

思ってる以上に打算的なのか。やっぱ女って怖ぇ。


「まぁ、当のエーリッヒさんが居ない以上、誰かが取る事にはなるので弟子のエレノアが取っても問題無いんですが」

「そのエーリッヒが帰って来てどうなるんですかね?」

「そこの対応次第で増し方と盛り方が変わってきますね」

「なるほど・・・」


うん。この人は絶対に敵に回したらダメな人だ。


「えっと、あの、昨日、ちょっと渡すタイミング逃しちゃって・・・」

「はい?」

「ジョーさんとマーシーさんへのお土産って今渡しても大丈夫ですか?」

「あー、はいはい。ありがとうございます」

「これ、俺も怖くて試せてないんですけど普通の唐辛子の数十倍辛いらしくて」

「本当ですかっ!?」

「見た時にこれは絶対ジョーさんに買っていかないとって思って」

「ありがとうございます!」

「いえいえ。マーシーさんには普通に焼き菓子の詰め合わせで面白味は無いんですけどね」

「そんなそんな。よぉし、やる気出て来ました」

「え、あ、はい」

「奴隷落ちさせる勢いで搾り取ってやりましょう!!」


えぇー・・・そんなつもりじゃ・・・。


そうして、やる気に満ち溢れたジョーさんは帰っていった。


ガコン───。


「よし、とりあえずはこれで良いか」


鍛冶場から回収した家具の設置も終わった。

なんだかんだでもう夕方だ。完全に1日仕事になってしまった。


晩ご飯をどうするか。

面倒だからアイテムボックスの中の物で済ませても良いが食べに出ても良い。

おっさんを絡めると酒で長引くからなぁ・・・エーリッヒはここ数ヶ月ずっと顔を突き合わせていたからしばらくは要らない。


まぁ、久しぶりの我が家で久しぶりの1人の時間を堪能するか。



そうして、軽く始めた晩酌だったが気付けば深夜まで独り飲みをしてしまい2日続けての二日酔いになってしまった。


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