208話 雑魚
宴もたけなわ・・・。
って、宴会の終わりの合図の様な言葉だから盛り上がった宴会が落ち着いてきて時間も良い感じだし、そろそろ解散にしますか。という意味っぽいけど、実際は宴会のピークを指す言葉だと知った時は違和感しか無かった。
まぁ、何が言いたいかというと・・・そろそろお開きなタイミングになってようやくエレノアの4人が駆け込んで来た。汗だくで。
おっさんの飲むペースに巻き込まれエーリッヒは撃沈。俺もかなり酔っ払っていてうつらうつらと舟を漕いでいる。
そんな状況で叩き起こされた。
「「「「おかえりなさーい!」」」」
「う、うん・・・ただいま・・・」
エーリッヒは揺すっても叩いても起きないのでエレノアの標的は俺に絞られてしまった。
4人が代わる代わる俺に何かを言っているのは分かるが酔っていて脳の処理が追いつかず何を言っているのかまでは理解出来無い。
しばらく何かを捲し立てた後、満足したのか帰っていった。
「お前ら今日はもう泊まってけ」
断ろうかと思った。が、俺はともかくエーリッヒは到底自力で帰るのは無理なので言葉に甘えておっさんの家で泊まらせて貰う事になった。
「エーリッヒはともかくお前は無理だろうからな」
「へ?逆だろ」
「エーリッヒは宿だから良いが、お前・・・帰ってから家具を配置して寝るつもりか?」
「あ・・・」
そうか・・・俺の方が寝る場所に困る状況なのか。
いや、待て。だったら俺が使っていた家具はどうなった?
「え?でも、俺が元々使ってた家具あるだろ?あれは?」
「明日だ、明日。寝て起きてから自分の目でじっくり見れば良いだろ」
「そりゃそうだけど・・・」
「面倒臭ぇな。さっさと寝ちまえ」
「寝ろってんなら布団くらいくれ」
「今、用意しますから」
「あ、すいませんっ」
タイミング悪くマーシーさんに聞かれてしまった・・・。
「客のクセに偉そうなヤツだな」
「くそう・・・」
リビングでエーリッヒと雑魚寝させて貰い、深酒した事もあって朝までグッスリだった。
「どうぞ」
「すみません」
完全に二日酔いだったので解毒ポーションをキメていると、同じく二日酔いで頭を抱えながらジョーさんがやって来たのでジョーさんにもポーションのお裾分けをした。
「簡単な物ですみません」
と言いながらマーシーさんが持って来てくれた朝ご飯は炊きたての白ご飯に干物に卵焼きに味噌汁。
これ以上の朝ご飯があるか?いや、無い。
日本人としてはほぼほぼ理想的な朝ご飯だと思う。
そう思うのはおっさんになったからもしれないが・・・。
朝ご飯までご馳走になった後、ようやく我が家へと向かった。
恋い焦がれた懐かしの我が家は・・・すっからかんで家具は一切無く。恐らく、家具を運び出すだけで必死だったのだろう・・・掃除にまでは気が回らず部屋の隅には埃が積もっていた。
こんな事ならシェリルさんにでも一緒に来て貰えば良かった。などと思いつつも愚痴った所で誰かがやってくれる訳でも無いので掃除に取り掛かった。
家具が無くて掃除は楽だが、恐らくタンスがあったであろう場所の壁には埃が付いていたりする。掃除は上からという事で天井を雑巾で乾拭きして壁もそのまま乾拭きしていく。
それから、床の掃き掃除をして、雑巾がけをしてと念入りに掃除していくと気付けば優に昼を越えていた。
汗だくになったので外に涼みに出ると丁度おっさんが来た。
「おう、どうだ?」
「掃除だけで死ぬ程キツい」
「マーシーさんがお前にってよ」
「なに?」
「昼飯」
「おぉー」
渡されたのはデカめのおにぎり3つにお味噌汁。
「染みるぅ~」
汗をかいたのもあって尚更美味しい。
「そういや、エーリッヒは?」
「お前が帰った後に起きてきて」
「うん」
「ウチの便所を占拠してさっき帰ってった」
「あぁ・・・」
エーリッヒはそこまで酒強くないからな・・・。
「おっさんは二日酔いは?」
「んなもんなるかよ」
「それもそうか・・・」
バカみたいに強いからな。このおっさんは。
「マーシーさんも昨日は結構飲んでたはずだけど」
「マーシーさんは俺より遥かに強いからな」
「マジか・・・」
あんなに飲んだのに誰よりも早く起きて朝ご飯作ってくれて大変だと思ったけど・・・おっさんより遥かにってバケモノか・・・。
朝炊いた残りのご飯でキツいめに握られたデカいおにぎり。そして、熱々のお味噌汁。
最強のコンボではあるが3つは流石に多い。
「食わねぇのか?」
「2つが限界だな・・・」
「なら、貰うぞ?」
「おう」
「んで、鍛冶はやんのか?」
「どういう意味でだ?」
「これからも鍛冶を続けんのかって意味だ」
「それなら続けるつもりだ。今日はやらんと思うけどな」
「そうか。よし、んじゃ帰る」
「お?んじゃ、マーシーさんに礼言っといてくれ」
「おう」
おっさんに鍛冶の話をされたので鍛冶場も覗いてみる事にした。
ガチャ───。
中に入ると・・・俺が使っていた家具が乱雑に詰め込まれて埃を被っていた。
「なるほどな・・・」




