205話 ニ度あることは
フーバスタンクでの滞在も初日や2日目は帰って来れた喜びやエーリッヒを狙っていた貴族への警戒で危機意識があったりしていたが・・・。
「今日はどこに飲みに行く?」
「そうだなぁ」
5日目ともなると完全に危機意識もどこへやら。暇を持て余して飲み歩いていたりしている。
「そういやどうするんだ?」
「なにがだ?」
「1週間の猶予だろ?」
「おう」
「今から帰ったら丁度1週間じゃないか?」
「あ、そうか。でも、1週間滞在するつもりだったんだよな」
「ややこしいな」
手紙が届くまでのタイムラグもあるから尚の事ややこしい。
「そういやオーパスポーカスに帰ってから大丈夫なのか?」
「ん?貴族は俺の事忘れてるって話じゃなかったか?」
「いや、住む場所やら生活費とか大丈夫なのか?」
「まぁ、お前のおかげで2-3ヶ月は何とかなる程度に蓄えが出来た」
「そんだけあれば冒険者に復帰する準備も余裕か」
「だから復帰じゃなくて、ずっと現役だからな?」
「あー、はいはい」
開店休業中の現役冒険者さん。
オーパスポーカスまでの宿泊費や食事代を持つと言質を取られてしまったのでフーバスタンクでの飲み代も俺持ちになってしまっている。
貯蓄があるのなら酒代までは払わなくて良い気もしてきた。
「そういや」
「ん?」
「迷惑やら心配も掛けたんだから。挨拶回りだけじゃなくて手土産も要るだろ?」
「あ?俺か?」
「そりゃそうだろ」
「俺は仕方無かっただろうが」
「いや、俺の方が仕方無くないか?」
「まぁ、そうか。でも、全員に召喚云々の説明すんのか?」
「そうなんだよなー。まず信じて貰えないよな」
「お前の非常識っぷりを知ってる・・・例えば、ジョッコさんとかなら即信じるだろうけどな」
「めちゃくちゃ常識人だけどな?」
「そう思ってるのはお前だけだけどな」
「いやいや、そんな訳・・・」
「・・・・・・」
「イヤ、アレだ。アイテムボックスとかな?そりゃスキルとかは非常識だけど俺自身は・・・」
「・・・・・・」
「しょうがないだろ。元々、この世界の住人じゃないんだから」
「そうやって自覚するのが大事だからな?」
「うっせぇよ」
「言っとくけどな」
「もう良いって・・・」
「お前はジョッコさんより非常識だからな?」
「マジ・・・?」
「6:4・・・いや、7:3でお前の方が酷いな」
「そ、そんな訳・・・」
「諦めろ。自覚する事が最初の1歩だ」
「そんなにかよ・・・」
そう言われたのがショックだったのもあったし、自重して大人しくしていようという考えも多少は芽生えたので飲み歩きツアーは中止にして屋敷で大人しく残りの日を過ごした。
ちなみにエーリッヒはバカなので自腹で飲み歩いていた。
「次に召喚された時は帰る前に手紙を出すなりしなさいよね」
「手紙出すより早く帰って来たつもりなんだけどな・・・ってか、もう召喚なんてされねぇよっ!」
されて堪るか・・・どんな確率だよ。
「2度ある事は?」
「3度あるのか・・・?勘弁してくれよ・・・」
オーパスポーカスへの帰り間際ナエジに盛大なフラグを建てられた気がしないでもない・・・。
「あ、そうだ。セバスチャンさんからの依頼でショートソード打ったんだけど」
「あー、うん」
「勝手に使われて歪んだから帰って調整してからまた送るわ」
「うん、分かった」
ってか、帰ってからセバスチャンさんに会ってないな・・・もしかして・・・。
「ナエジ、あのさ?もしかしてセバスチャンさんって・・・」
「うん・・・」
「マジか・・・」
「後進が育ったからって引退して地元に帰った」
「ん?えっ?」
「死んだと思った?」
「先代の事もあったからな・・・」
「あー、そっか。ちょっとブラックジョークが過ぎたか」
「マジでビビった」
「元気だから安心して良いよ」
「なら良かった・・・」
さっきの2度ある事は~じゃないけど前例があるだけにビビった。
そうして、ナエジやシェリルさん達に見送られフーバスタンクを後にした。
「そういや、なんでエレノアはオーパスポーカスに戻ったんだろうな」
「お前ん家が気に入ってたとか?」
「勘弁してくれ」
気に入ってようが気に入ってまいが俺ん家なんだから勝手に住むな。2回も。
「フーバスタンクで仕事が上手くいかなかったとかかな?」
「どうだろうな。フーバスタンクでもお前の屋敷に住んでたんだから、金に関してはかなり楽だったはずだからな」
「だとしたら、また厄介なやつに目を付けられたとか?」
「かもなー」
これも前例があるだけに2回目があってもおかしくはない。
「帰ったらやっと鍛冶が出来る」
「帰るなり早々に働くのか?」
「働くっていうか趣味みたいなもんだからなぁ」
「俺も働くか・・・」
「お前は働かないと食ってけないだろ」
「お前くらい金あったら絶対働かねぇ」
金があってもやる事が無いと時間を持て余して地獄だからなぁ。
だから、生きていく上で趣味は必要だ。
金はある。だから、趣味に生きていたいとは思うが・・・何かしらに巻き込まれてそれどころじゃない事があまりにも多すぎる・・・。




