203話 流れ作業
もう直ぐフーバスタンクという事で少し無理をして強行した結果。フーバスタンクに到着したのは深夜というか・・・もう少しで空が白み始める様な時間だった。
「うおっ・・・」
「ん?」
「寝てた」
「おいおい、しっかりしてくれよ?」
居眠り運転かよ・・・まぁ、車と違って馬車だからそう簡単には事故らないとはいえ危ない事には変わらない。
まぁ、夜は人間よりも馬の方が見えてるっぽいので馬に任せた方が事故らない可能性も無くは無い。
「いや、フーバスタンクの外壁が見えて気が抜けたっぽい」
「あー、分からんではない」
街に入り、屋敷に向かう。
俺が行方不明になって2年近く経っているのであの屋敷ももう俺の物じゃなくなっている可能性もあるが・・・。
門の前に馬車を止め。
「んー、まだ早いよな」
「朝まで待つか?」
「その方が良いよな?」
「だったら」
そう言うとエーリッヒは馬車に乗り込んだ。
「一眠りする」
探索スキルの範囲を屋敷の方に広げるとシェリルさんとリンさんはまだ居る様だ。
ただ、当然こんな時間なので寝ている。なので起きるまで待つ事にした。
「俺も軽く寝る」
どのくらい眠っただろうか?10分くらいな様な気もするし2時間くらい寝た気もする。
ただ、外は完全に明るくなっていたのでそれなりの時間眠っていたのだろう。
おもむろに馬車のドアを開けてステップに足を掛けて降りる。
「「お帰りなさいませ」」
「た、ただいま・・・」
目が覚めて、外に視線を移した時にシェリルさんと目が合った時は本当にビックリした。それこそ、猫が驚いた時に飛び跳ねるくらい。あのくらい飛び跳ねそうになった。
「お疲れでなければこのまま領主邸にお願い致します」
「え?」
「ナエジ様がお待ちです」
「あー・・・って、なんでもう知ってるんですか・・・?」
「先程、リンを使いに出しました」
「なるほど・・・」
「じゃあ、ちょっと行ってきます」
「はい」
馬車をゆっくり発進させる。徐々にスピードを上げるとちょっとした段差で跳ねた。
その衝撃でエーリッヒが起きたのか後ろで何やら喚いている。
無視して馬車を進ませたのでしばらくするとエーリッヒも静かになり領主邸に到着した。
「ここって領主様ん家じゃないのか?」
「そ」
「こんな朝から大丈夫か?」
「いや、来いってさ」
「へ?」
「お待ちしておりました。そのまま中にお入り下さい」
門の所にメイドさんが待機していたが、どこかで見た顔な気がする・・・。
「はい。あ・・・ナタリーさん?」
「はい」
俺の屋敷に配置されたメイドさん4人の内の1人だ。
シェリルさんに対応して貰う事が多くて影が薄かったがシェリルさんと娘のリンさん。それからナタリーさんと娘のコールさんの4人だったはずだ。
「お帰りなさいませ。ご無事で安心致しました」
「はい。ご心配お掛けしました」
「ナエジ様がお待ちですので」
「はい」
と、馬車をそのまま門の中へと進ませる。
少し進むと今度は壮年の執事さんが待機している。
「馬車をお預かり致します」
「はい、お願いします」
今度は玄関前にコールさんが居た。
「ご案内致します」
工場のベルトコンベアーで流されながら少しずつ盛り付けられていく弁当にでもなった気分だ。
コンコン───。
「はーい」
「ミト様がいらっしゃいました」
「どうぞー」
ガチャ───。
扉を開けた先にはよそ行きの服に身を包んだナエジが居た。
「お?」
「どこ行ってたのよ。会いに行ったら居ないし」
「すまんすまん」
「で、今度は何があったの?」
「話せば長くなるって言うか・・・ナエジ、お前デカくなったか?」
「た、縦によね・・・?」
「縦に」
「横にって言われたら貴方を殺して私もってなる所だった」
「勘弁してくれ・・・」
まずそんな関係じゃないし、言ってから気付いたけど親戚のおじさんみたいなセリフでちょっとヘコむ。自分で言っといて。
「その時は心中じゃなくて普通にダイエットしろ」
「いや、もうそういうの良いから。どこ行ってたの?」
「え、あ、おう・・・」
召喚をされた事。それから同じ世界だと発覚して急いで帰って来た事等を掻い摘んで話した。
「2回もこの世界に召喚されるとかどんな確率よ・・・」
「本当にな・・・」
「呪われてるんじゃないの?」
「のろっ・・・お祓いとか行った方が良いかな?」
「そういう系、信じてるの?」
「信じては無いけど・・・召喚とか異世界とかもあるんだからあってもおかしくはないだろ」
「それもそっか」
「1回行ってみるか・・・」
「それは良いとして。後ろで死んだ顔してる人は良いの?」
「え?あ、忘れてた」
エーリッヒが前回挨拶したのはセバスチャンさんでナエジとは初対面だったので改めて紹介したりした。




