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20話 悪事千里を走る

執事さんが入室してからものの5分程で領主様がやって来た。

何故か勝手に3-40代で同世代だと思い込んでいたが、部屋に入ってきたのは老人だった。


「すみませんね。お呼び立てしまいまして」

「あ、いえいえ」

「ミトさんでしたかな?」

「はい」

「本当のお名前を伺っても?」

「あー・・・えっと・・・清水徹です」

「ふむふむ、やはり聞き慣れない響きですな」

「あの・・・」

「何故、分かったかですかな?」

「はい・・・」

「お答えする前に」

「はい」

「腰を下ろしたい所ですな」

「え?あ・・・はい。失礼します」

「では、私も失礼してっと・・・」


テーブルを挟み、お互いソファに腰を下ろした。


「セバスチャンお茶を」

「畏まりました」


執事さん・・・セバスチャンっていうのかよ・・・。


「やはり気になられますかな?」

「えっ?」

「父が名付けたのですよ。執事と言えばセバスチャンだろ。と」

「あー、なるほど」

「ですので、我が家では筆頭執事の事をセバスチャンと呼ぶ習わしになっとるんですよ」

「あぁ、本名ではないんですね」

「それで、お呼び立てした理由ですが」

「はい」

「父の故郷の話をお聞かせ願えたらというのと」

「はい」

「その知識でアドバイスを頂けたらと思いましてな」

「なるほど・・・」


国に爵位も領地も奪われた俺に助言を求めるか・・・。


「あぁ、それから。何故、貴方がニホンから来たと分かったのか説明しておくべきですな」

「何で分かったんですか?」

「失礼致します」


と、そのタイミングでお茶を出された。


「どうぞ」

「あ、はい」

「如何ですかな?」

「はい、美味しいです」

「ホウジチャです」

「そうですね。焙じ茶ですね」


何だ?


「父が広めた物で。この街にしかないのですよ」

「ん?焙じ茶がですか?」

「はい。製法は秘匿しておりますゆえ」

「あ、もしかして他のお茶の種類とかを教えれば良いんですか?」

「いえ、何か気付きませんかな?」


えー・・・?全然、分からん。


「シミズ殿が良く参られております居酒屋ございますな?」

「あぁ、はい」

「領主管轄で営業しておる店なのですよ」

「そうなんですか?」

「そこで出される食べ物や飲み物。ニホンにまつわる物が多数ありましてな」

「あー、はい。確かに」

「そういった物に違和感を抱かずに普通に食せるのはニホン出身の可能性が高い訳ですな」

「なるほど・・・」

「ムギチャはお好きですかな?」

「好きですよ」

「父も好きで。夏は冷たいムギチャに限ると言っておりました」

「日本の夏って感じですね」

「あの居酒屋でも提供しとりましてな」

「そうなんですか?」

「飲まれておるはずですよ」

「そ、そうでしたっけ・・・」

「そのくらい違和感を抱かずに食されてた訳ですよ」

「なるほど・・・」


聞けば、冷たい麦茶は日本特有らしい。

この世界の定番はもっと濃く熱いまま飲むのが主流だそうだ。そうするとコーヒーっぽくなるらしい。


ってか、居酒屋で冷たい麦茶出てきて違和感を抱けってのは無理がある。


「決定打はアレですな」

「?」

「エダマメ」

「あぁ、確かに久しぶりに食べました」

「アレの食べ方が分かるのはニホン人だけでしょうな」

「え?あぁ・・・そうか・・・さやは食べずに中身だけって初見じゃ無理か・・・」

「それで報告があり、しばらく調べさせて頂きました」

「なるほど・・・それで、俺で何人目ですか?」

「初めてですな」

「そうなんですか?」

「お互いに聞きたい事がありすぎて困りますな」

「あー、そうですね・・・」


俺が本当に聞きたいのは俺の事をどこまで知っているのか?そして、俺をどうするつもりなのか?だ。


「まずこちらからお話しておくべき事を忘れておりました」

「はい」

「敵対する意思はございませんのでご安心下さい」

「はい・・・」

「そう言われても安心は出来無いかもしれませんがな」

「ま、まぁ、そうですね」

「父と同じくあの国で召喚され。同じく追放された方に敵対なんぞする気は起きませんな」

「あぁ、やっぱそこまでバレてるんですね」

「時間もありましたし。お名前も教えて頂けましたのでな」


この人、地味で無能な2代目って評判だけど・・・やり手なんじゃ?

先代なんてただのチーターだから凄くて当たり前だし。現状維持って端から見たら低下して見えると思う。

チート無しで最低でも現状維持、全体的には微増。そんな感じなんじゃないかな?

それって為政者としてはかなり凄い事なんじゃないかと思う。


「先ほども申し上げましたが。この街へのアドバイスを頂ければと思っておりましてな」

「はい」

「成果に見合った報酬はお支払いさせて頂きます」

「はい」

「金でも物でもご希望の物があれば仰って下さい」

「はい」

「まぁ、使い切れない程に金は持っとるみたいですが」



バレてーら。

あんまりこの人に対して適当な事は出来無さそうだ・・・。


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