2話 温度差
余りにもざっくりと足早に端折って話し過ぎたかもしれない。
そうだな・・・。
最初に召喚された時。高校生5人組は男3に女2の組み合わせだった。
元々付き合っていたのか、それともその寸前だったのかは分からないが異世界という特殊な環境に放り込まれた事も相まってか2ペアが早々に出来上がった。
残された1人と俺が必然的に話す機会も増えて多少仲良くはなった。
1ヶ月の準備期間を経て魔王討伐の旅へと無理やり追い出された訳だが・・・。
支度金を結構な金額で貰ったのもあってそいつを連れて飲みに行ったり。酔った勢いで風俗に連れていったり。それがバレて女の子2人から蛇蝎の如く嫌われたりもした。
従って旅の途中、野営等をする時はカップルがペアになって寝ずの番をするのでまたしても俺はそいつとのペアになっていた。
そうするとだ・・・。
少し離れたテントの中から嬌声が聞こえてくる訳だ。それもほぼ毎晩。
魔王討伐という目的の為に旅をしているにも関わらず毎晩の様に盛りまくっている。
にも関わらず風俗に行った俺等を批判する道理がどこにある?と思ってしまう。
まぁ、思うだけではなく2人でその事について愚痴りまくっていた。
ゴブリンに限らず大きな生き物の命を奪うというのは本当にストレスになる。
それだけではなく、自分の命も危険に晒されている。
そんなストレスからそういった行為に走るのは古今東西世界中で定番だと思う。
また言うが、自分達は野外で友人が間近に居るにも関わらず盛り倒している。にも関わらずそういうお店に行く俺達が不潔だと宣う。
本当に納得がいかない。
まぁ、そんな納得がいかない日々を過ごしながらも魔族領に向かって旅を進め。その途中でダンジョンに潜ったり色々な経験を積みつつ魔王城を目指した。
そして、最初の脱落者が出る訳だが。
パーティの役割としてはタンクの風俗仲間が最初の脱落者となった。
行くならちゃんとした店に行くよう言っていたのだが、立ちん坊を買い・・・その相手から病気を貰ったようだ。
まぁ、それが死因ではなく。陰部に異常があり膿が出たり痛みもあったようで。特に女性陣にバレないようにとトイレの時は必要以上に皆から離れて用を足していた。
その時に背後から魔物に襲われてアッサリと帰らぬ人となった。
召喚特典のチート能力があり、俺達の中で最もHPも防御力も高いはずだが油断している時に背後から一撃を貰うと案外呆気ないという事が分かってしまった。
高校生組は特に身近な人物の死にショックを受けナーバスになっていた。
戦力的にもタンクを欠き安定感も失い。連携も乱れ小さな怪我とは言えない様な怪我も増えていった。
こんな異世界に無理やり連れて来られ、更には慣れない旅に友人の死。
眠れない夜も続き心身共に参っていたのだろう。
些細なミスから女の子2人がゴブリンに攫われてしまい。全員で後を追ったが追いついた時には2人は慰み者にされている最中だった。
そんな状況で落ち着けと言う方が無理かもしれないが彼氏達は完全に頭に血が昇り彼女達に覆い被さっているゴブリン目掛けて突進していった。
が、それ自体が罠で。彼女達どころか覆い被さっているゴブリン諸共死んでも構わないとばかりに矢を射掛けられ。
彼女達を救出した後の彼氏達はハリネズミかのような様相で生きているのが不思議な程だった。
パーティ唯一のヒーラーである女の子は使い物にならず。手持ちの薬草とポーションでなんとか2人の命を繋いだ。
とはいえ、死んでいないだけと言った方が正しい。
矢じりには汚物が塗られており、感染症から来る高熱は一向に下がらず。骨が見える程に肉も腐り落ちていた。
1人はそのまま亡くなり、もう1人は苦しさに耐えきれず少し目を離した隙に剣を喉に突き立ててて亡くなっていた。
女の子の方も1人は自らの魔法で自死を選び。もう1人は精神が保たなかったのだろう正気を失い教会に預けられる事となった。
そうして巻き込まれて召喚された俺だけが残ってしまった。
そこからは中々に地獄の日々だった。
元々、俺は戦力として見られていなかったのでアイテムボックス活用してポーターの役割をこなしていた。
つまりは後方待機で損耗した武器や防具の交換、ポーションの補給が戦闘時の主な役割。
それ以外の時も野宿する時の設営も俺の役目だったし宿や飲食店で大量に注文した食べ物や飲み物が温かいまま冷たいままアイテムボックスに入っているので、ある意味シェフの役割も担っていた。
完全に後方支援だったにも関わらず、そこからは戦力が俺1人になり全ての役割を俺が担うハメになった。
ちなみに騎士様の役割は街に入る時に顔パス出来る事。その街の領主や偉いさんとの顔つなぎをして支援を受ける為の交渉役だ。
ぶっちゃけると身分証兼クレジットカードだ。
そんな俺以上に戦力外の騎士様は戦闘時アテにならず。移動時以外は別行動だった。
即ち・・・魔王討伐は俺の単独での功績と言っても過言ではない。
序盤は戦闘未経験だった事もあり、レベリングから始めた。
5人がやっていた事を1人で1からやり直しって感じで二番煎じに感じるかもしれないが・・・やってみると意外に楽しかった。
コントローラーを自分で握るか、それを後ろから見るかの差に近いかもしれない。
しかも、それが5人掛かりよりも俺1人の方が上手くいっているんだから楽しくて仕方がない。
今になって思うのは経験値分配が5人で1匹を倒すか1人で1匹を倒すかの差も大きい。
勘だけど5対1だと補正が働いて分配が更に減らされていたようにも感じる。
もしかしたら格上だと経験値が増えて格下だと減る。そんな仕様もあるのかもしれない。
とは言え・・・あの5人は格下も格下の相手にやられた訳だが・・・。
それを教訓として一切気を抜かずにレベルを上げ、経験を積み、常に安全のマージンを取り魔王を打ち倒した。
そうそう。
騎士様の仕事として。
勇者様御一行。5人+オマケ1人の監視。逃げないよう見張り。そして、小まめに国に報告を行っていた。
なので王都に戻る少し前。近くの街で豪華な鎧を着させられ、乗れもしない馬に乗らされ、その時初めて会ったやつらに長年連れ添ったパーティっぽい雰囲気を出され、ちょード派手な凱旋パレードをやらされた。
そして、登城して王様に謁見して爵位と領地を頂戴した訳だ。
まぁ、大変だった。
ゴブリンの巣に突っ込んだ時よりも魔王と相対した時よりもどうでも良い貴族様達からの長々とした挨拶を聞かされ続けた時間は地獄だった・・・。
名乗りがあって自領の自慢にウチの娘を嫁にどうかとか。娘といっても実の娘ではなく養子。救国の英雄である俺に唾を付けたいが為に婚戚関係が欲しいとの事らしい。
まぁ、そんなやり取りも1回目なら聞ける。
同じような内容のやり取りを何人からやられたか・・・。
パーティもお開きになり解放されたのも束の間。
公爵家の方から呼び出され酒を飲みながらまたしても娘を勧められた。
翌日も公爵とか侯爵程じゃないけど伯爵やら子爵やらが面会に来て同じやり取りをやらされた。辺境伯って何だよ・・・。
まぁ、その時に土産として貰った酒とかお菓子とかは売っぱらって結構良い小遣いになりました。
そうして王城に滞在していると休む間もなく貴族様の相手をしないといけないと悟り。貰った領地へと逃げる事にした。