199話 コーン・ウイスキー
1人での旅路は時間との戦いだった。
時間が無いのでは無い。膨大な何もする事の無い話し相手も居ない虚無な時間との戦いだった。
それが話し相手が居るだけで張り合いもあり楽しめるものへと一瞬で変容した。
「そこそこデカそうな街だな」
「だな」
「あのよ」
「ん?」
「おねぇちゃんの居る店にでも行かねぇか?」
「お前・・・人の金で女遊びかよ」
「しゃーねぇだろ。無い袖は振れねぇ」
「小遣いまでせびるつもりか?」
「そういう訳じゃねぇけどよ・・・」
「うーん・・・」
「金は貯まらんが、別のモンは溜まる。しゃーねぇだろ」
「まぁ、確かにな・・・いや、待て」
「なんだよ・・・」
「冒険者なんだから依頼受けて自分で稼げよ」
「はぁ?」
「短期で消化出来るやつ受けて。その金で発散しろよ」
「ふむ・・・」
俺の払った金でエーリッヒがハッスルするのは何か気分的に嫌だ。
「2-3日なら観光したり買い物したりで待っててやるから」
「それもアリっちゃアリか」
長旅に加えてエーリッヒという積荷が増えた事で馬も多少の消耗が見える。なので、そろそろ1度休ませたいと思っていたので良いタイミングではあった。
「まずは宿だな」
宿を取り、俺は観光がてら散歩に。エーリッヒは早速冒険者ギルドに向かった。
そこそこ大きな街ではあるが至って普通で特色がある様には感じない。
「串、1本」
「あいよ。このまま食うか?少し待てるなら温めるぞ」
「だったら温めてくれ」
街に着いたのは夕方で宿を取ったり馬の世話をしたりしていたので散歩に出た時にはすっかり陽も落ちていた。
「今日、この街に着いたんだけど」
「お?ようこそ。良い街だよ」
「特産とか見所ってあったりする?」
「そうだな。トウモロコシが特産だな」
「おー」
比較的どこにでもある。
って事は特産品は無しか。
「で、そのトウモロコシから作った酒があってな」
「バーボン?」
「知ってたか」
「どこで飲める?」
「この街で酒っつったらバーボンだからな。どこでも飲めるぞ」
おっさんへの良い土産になるな。
「よし、温まったぞ」
代金を払い、温められた串肉を受け取り屋台を後にした。
そして、アイテムボックスから取り出したパンに挟んで、肉がズレない様に串を引き抜いてホットドッグもどきにしてから口に運んだ。
小腹も満たされたので屋台のおっさんからの情報を確かめるべく飲み屋に向かった。
「いらっしゃいませ」
まだ早い時間帯という事もあってか他に客の姿は無い。
不人気な店じゃなければだが。
「バーボンがこの街の名産って聞いたんだけど」
「飲んだ事はありますか?」
「どうだろ?多分、無いかな」
「でしたら、最初はカクテルや水割りがオススメです。かなり度数の高いお酒ですので」
「じゃあ、最初は水割りで」
「かしこまりました」
良く見ると、ここは居酒屋よりもバーといった方が相応しい雰囲気だ。
もしかしたら、ちょっとお高いかもしれない。
ワイングラスにバーボンを注ぎ、そこに水を注いでいる。
「初めてという事でしたので通常の水割りでは無くトワイスアップという水割りの方がよろしいかと思いまして」
水割りはバーボン1に対して水を2。トワイスアップは1対1らしい。
「バーボン特有の甘みと香りをお楽しみ下さい」
グラスに鼻を近付け香りを嗅ぐと、キツめのアルコール臭が一瞬鼻をついたがバニラの様な香りも感じる。
少し口に含むとキャラメルの様な香りも感じる。
「如何ですか?」
「うん、美味しいですね」
ラム酒程は甘くは無いが口当たりの良さと甘い風味は中々に好みかもしれない。
「他にオススメの飲み方ってありますか?」
「1番はストレートです。軽く飲みたいのであれば水割りですね。そこに果汁を加えても爽やかになって美味しいですよ」
「なるほど」
「香りを楽しみたいのであればお湯割りもオススメですね」
「へー、そんなのもありなんですね」
熱燗とかもあるから洋酒でもホットはありか。
その後、カクテルとストレートも試した。
確かにストレートが1番バーボンの美味しさは感じるが度数も高くて量は飲めないし長時間飲むのであれば水割りの方が良いかもしれない。
そして、団体客が来たのを切っ掛けに退店して宿へと帰った。
隣の部屋がエーリッヒの部屋だがまだ帰っていない様だ。
本当は部屋を離して欲しかったが空きが無いとの事で隣の部屋になってしまった。
1人旅だと連れ合いが欲しくなるが、四六時中一緒に居るとそれはそれで苦痛になってしまうので部屋は離して街に居る間は完全に別行動の方が精神衛生上よろしい。
酔う程は飲んでいないが今日は早めの就寝にして。明日は午前中から街を散策しようと思う。




