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198話 容赦無し

部屋に戻ると狭い部屋に無理やり置かれたベッドの6つの内2つに他の客が寝そべっていた。


流石にこの状況下で2人だけで酒盛りをする訳にもいかないので・・・俺達2人が飲みながら喋るのを我慢して貰う為にその2人にも酒を振る舞った。


「足りなくなったらまだあるから言ってくれ」

「中々に大盤振る舞いだな」

「景気良さげで羨ましい」

「って事で騒がしくするが勘弁してくれ」

「あんまり遅くまでは勘弁してくれよ?」

「そこは流石に気を付ける」


と、お許しを得たので狭い部屋なのでどこで喋ろうが一緒だが・・・一応、エーリッヒと端に行って乾杯をした。


「早速だが・・・一緒に帰らないか?」

「・・・・・・」

「フーバスタンクの屋敷に住んでも良いし、オーパスポーカスでも」

「まだダメだろ・・・」

「大丈夫じゃないか?」

「え?」


いざとなればコネを最大限に使って・・・エーリッヒをナエジの所に仕官させるなりすれば他所の貴族も簡単には手出し出来無いだろう。

それでもまだ手出しをしてくる様であれば実力行使しか無い。


エーリッヒが冒険者として大成して貴族でも手出し出来無い程の存在になれるのが最善ではあるが・・・今の様子を見る限り見込みは薄い。


「オーパスポーカスじゃなく、フーバスタンクを拠点にして貰わないといけないかもしれないけどな」

「何か考えがあるのか」

「おう。まずは・・・」

「いや、任せる。見て分かったと思うが・・・名を上げるどころか日銭を稼ぐので精一杯だからな」

「っぽいな・・・」


であれば、首根っこを掴んででも連れ帰ろう。

まぁ、エーリッヒも乗り気だからそんな必要は無いが。


その後、小雨になったりもしたが長雨は1週間も続いた。

その間に空いていた2つのベッドも埋まり。1週間も顔を突き合わせていたので仲も深まった。


「やっと止んだな」

「こっちに来る機会があれば絶対に尋ねて来いよ?」

「そっちこそ」


そんなやり取りをした後、各々は別々の道へと別れて旅立っていった。


「ん?」

「どうした?」

「あの豪華な馬車はどうしたんだ?」

「あー、これはフェイクだ」

「ん?」

「あんなの預けてたら盗まれるだろ?」

「そりゃあ、な」

「だから、村とか街に出入りする時はこのボロい荷台にしてる」

「なるほどな」

「っても、俺がイジった荷台だから性能は悪くないけどな」

「へー」


元々、あまり興味は無かったが偽装用の荷台を修理したりしている内に木工スキルも生えたり上がったりした。

その結果、自然と頭にサスペンションの構造とかも浮かんだし作り方もどこに配置するかも自然と理解出来た。


「あの馬車と比べたら?」

「流石に勝てない」

「そりゃ、そうか」

「素材が悪過ぎる」


良い木を使えば性能は天井知らずで上がっていくが、そうなると見た目も良くなってしまって偽装用の荷台の役目を果たせなくなってしまう。

そんな理由から、ボロい木を使わざるを得ないので性能では勝てない訳だ。


そりゃ、思い通りの素材を使用出来ればあの馬車よりも遥かに良い馬車に仕上げられる自信がある。

そんな事を思ってしまう程度には物作りに対してのプライドを持つに至ってしまった。


「まぁ、軋んでんもんな」

「その割に振動は少ないだろ?」

「まぁ、そうかもな」


反応薄くないか?


「いや、待て」

「ん?」

「かなり振動が軽減されてるんだぞ?」

「おう、まぁ、そうなんだろうな」

「いや、分かってない」

「分かってる」

「最近、馬車乗ったか?」

「乗ってないな。金が無くて徒歩だ」


しょっぱ過ぎる・・・。


「そ、そうか・・・」

「だから、比較は出来ん。もう馬車の乗り心地なんて覚えてねぇ」

「お、おう・・・」

「な訳無いだろ」

「へ?」

「感覚くらいは覚えてるわ」

「え・・・?」

「お前、流石に俺の事憐れみ過ぎだ」

「あ・・・すまん・・・」


そうだな。

俺達は友達で対等な関係なんだ。


「っても、金が無いのは本当だから帰りに掛かる費用はお前任せで頼む」

「お前・・・」


当然、そのつもりだった。

とはいえ、臆面もなくそう言われると微妙な気持ちになる。

いや・・・でも、何も言われずにズルズルと金を出させ続けるのはもっと微妙か。

だったら、最初にそう言われた方が気分もまだマシか?


「だったら、御者として雇ってやるよ」

「マジか・・・」

「給料は馬車の乗り賃と飯。それから、村とかでの宿泊費だ」

「破格ではあるか」

「思いっ切り。な?」



旅は道連れ世は情け。

エーリッヒの様に当て所無く旅を続けジリ貧で先細りの生活を送っていた訳では無いが・・・目的地は近付けどもまだまだゴールは先で俺は俺で心が折れそうにはなっていた。

そんな折に現れた友人に救われたのは実は俺の方だったのかもしれない。


そうして、オーパスポーカスへの帰路はこれまでよりも賑やかで楽しいものになった。


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