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196話 勇者

依頼票を剥がし受付で説明を受けているが5人も居て職員の話を聞いているのは1人だけだったりする。


数を(こな)した方が早くランクが上がって逆に効率良く稼げると言っていたが5人も居てその依頼1つだけだとしたらどう考えても赤字だろう。

若いからこそ、そういった失敗という経験も糧に成長していけば良いだろう。

俺としては無事に届けてさえくれれば彼らにとってプラスになろうがマイナスになろうが関係は無い。


そんな事を思いながら帰ろうと冒険者ギルドを出た。


「おい、先に行くなって」

「うおっ、邪魔なおっさんだな」


と、先程の俺の依頼を受けたであろう冒険者パーティーが後ろから駆け足でやってきた。


「え?」


そう思った瞬間に足元に魔法陣が展開された。

考えるよりも先に飛び退こうとしたが足が固定されているかの様に地面から離れない。


「なんだこれっ!?」

「え?え?え?」


視界を光が覆い尽くし目を開けていられなくなり。再び目を開けた時には・・・。


「勇者様。我々をお救い下さい」


なにやら既視感を覚える光景がそこにあった。

前回、異世界に召喚された時と同様に男3に女2のグループと異物感満載の俺の計6人が召喚された様だった。


玉座の間に召喚され、周りをフルプレートアーマーに身を包んだ騎士達に囲まれ半ば脅しの様な状況でご都合主義な説明を受け。その流れで6人のステータスチェックになった。


「おぉっ!この方が勇者様にございます!!」


5人の中で1番ヤンチャそうな子が勇者らしい。どういう基準かは分からないが1人ずつステータスチェックを行い皆が皆かなり良い数値だったらしく鑑定を行う毎に歓声が上がっていた。


「次の方」


俺の番だ。

本当はこんなのを受けたくは無い。どうせ面倒な事にしかならないのだからさっさと逃げ出したい。


「ほいほい」

「この水晶に手を」

「ほい」

「ぬ・・・この方はアイテムボックスのみにございます。ステータスも平凡です」

「なに!?」


え?もしかして、全てリセットされてしまったのか?

焦りながらステータスウィンドウを開くとアイテムボックス以外の各種覚えたスキルも健在だしステータスもバカ高い。

それこそ、個で国を簡単に滅ぼせる程に。


理由は分からないが鑑定がバグっていて雑魚認定をされた様だけど、それならばこのまま追放してくれれば厄介事に巻き込まれずに済む。


「アイテムボックスがあれば荷物持ちとしては使えましょう」

「ふむ」


解放してくれないらしい・・・。


その後、5人は豪華なディナー。俺は粗末な部屋に押し込められて固い黒パンと野菜くず欠片が入っただけの塩スープが与えられた。


「どうしたもんか・・・」


とりあえず、この不味そうな食事は食べる気にもならないが・・・食べないのも怪しまれるかもしれないので中身だけアイテムボックスに入って貰った。

というか・・・スープに顔を近づけた時に生ゴミの様な腐敗臭から顔を背けたが。同時に麻薬が入っている事にも気付いた。

恐らく薬漬けにして言う事を聞かせようという魂胆だろう。

俺に対してだけなのか勇者様達にもなのかは分からないが・・・こんな国からはとっとと逃げた方が良さそうだ。


翌日、勇者様達は城の中庭にある屋外訓練場でスキルの試し打ちを行っていた。

召喚特典によるスキルを試している様だったが・・・。


「あいつ・・・」


俺が打ったショートソードを勝手に使ってやがる。


文句を言いに外に出ようと思ったが部屋の鍵が閉まっている。


「なんで外から鍵が掛かってんだよ・・・」


壊して出るのは簡単だけど、まだ事を荒立てたくはない。


ガチャガチャ───。


鍵を開ける音がする。

計画を実行するチャンスなので壁に向かって横になる。


「晩飯だ。食っておけよ?」

「調子悪いからそこに置いといてくれ」


晩飯もクソもない。勇者様達は日に3度食事があるが俺には日に1回しか無い。


配膳に来た兵士にそう言った瞬間に気配を断ち、堂々と兵士の横を通って部屋の外に出た。

探索スキルを広げて城の内部をサーチする。

まず勇者に充てがわれた部屋に向かいショートソードを取り返した。


「くそ・・・結構な自信作だったのに歪んでる・・・」


下手くそが振るった所為で刃先はガタガタだし軸がブレている。


続いて向かったのは宝物庫。遠慮無く全て頂いた。

そして、食料庫からも片っ端から頂いた。酒に麦にジャガイモにトウモロコシに・・・って・・・。


「白パンあるじゃねぇか!なんでわざわざ黒パン食わせようとすんだよっ!」

「ん?誰か居んのか?」

「あ、まずっ・・・」


再び気配を断って宰相の執務室に向かった。


「あった、あった」


わざわざこんな所にまで取りに来たのは地図だ。



そこに記されていたのは、予想通り見た覚えも無ければ聞いた覚えもない地名ばかりだった。


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