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195話 セラー

前におっさんを熱中症にさせた事もあったので途中何度か休憩を挟みつつロングソードを打ち終えた。


「出来はどうだ?」

「うん、良いんじゃないかな」


フーバスタンクに行っていた間、鍛冶から離れていたし寝る時に金床や鎚を抱き枕にはしなかったのでスキルは上がっていないし増えてもいない。

そして、ブランクから下手になっている可能性も考えたが前よりも上手く打てる様になっている気がする。


「打つの見たいって言ってたけどどうだった?」

「んー、分からん」

「ん?」

「ウェインやら、あの工房のヤツらよりも動きが洗練されてるのは分かるが。何がどうなってこの差になってるのか皆目見当が付かん」

「そんなに違うか?」


いや、自分で言っておいて難だし、自分で言うのも難だけど・・・差は明確にある。


「はぁ~・・・お前は何を見て来たんだよ・・・」

「いや・・・差はあるな・・・」

「お前、流石にそこまでいくと謙遜じゃなくて嫌味になるから気を付けろよ?」

「お、おう・・・」


外に出てロングソードを振ってみる。


ビュッ───。


「どうだ?」

「うん、良い感じ」


元々の重量を重い目にした上に重心を少しだけ切っ先側にしてあるので遠心力が効いている。


「粘りがどうこう言ってたのはどうなんだ?」

「あー、どうだろ?振っただけじゃ分からん程度かも」

「実際に斬った時には感じるのか?」

「どうだろ?体感があるかどうか微妙なラインじゃないかな?」

「ふむ・・・そのラインを狙ってやったのか?」

「一応?」

「なるほどな。それで完成ならさっさと研いじまえ」

「いや、ちょっと休憩したい」

「休憩すんなら俺は帰って寝る」

「えっ?」

「眠気が限界だ」

「なら、俺ん家で寝るか?」

「そこまでじゃねぇよ」


もしかして熱中症の症状の1つとして眠気があったりするのか?と、そんな考えが一瞬頭を過ったが・・・よくよく考えるとフーバスタンクから帰るなり飲みに行って、飲んだ帰りに鍛冶をしてるんだからそりゃ眠くもなるか・・・。


「だったら帰ってゆっくり休んでくれ」

「そうする。んじゃあな」


本当に限界だった様で、そのまますんなりと帰っていった。

そして、またお土産や酒樽を渡すのを忘れていた。


「研ぎか・・・」


いや、研ぎよりも・・・折角、炉に熱が入ってるんだから先に打った方が効率が良い。

ナエジの兄弟のショートソードを打つ依頼もある。

どうやって郵送すれば良いのかは分からないが・・・って、郵送だと郵便局を介して発送する事だから郵送では無いか。

って、本当にどうやって送れば良いんだ・・・?


どれだけ考えても答えは出ないので諦めてショートソードの制作に取り掛かった。


「それなら冒険者ギルドで依頼を出せば良いかと」

「あー、なるほど」

「定期便であれば商業ギルドでも構いませんが、急ぎなら冒険者ギルドが良いでしょうね」


それもそうか。

冒険者って荒事がメインな印象だけど。実際は何でも屋だから、そういう使い方をすれば良かったのか。


「後で行ってみます」

「はい」

「それから、まずこれがマーシーさんへのお土産で」

「ありがとうございます」

「こっちがジョーさんにで」

「私にもですか?」

「辛そうな香辛料を色々買ってみたんで試してみて下さい」

「おぉー、それは助かります」

「それから・・・大量の酒樽を預かってるんですけど・・・」

「あぁ、すみません」

「え?」

「急ピッチで進めるそうですが・・・」

「な、なにを・・・?」

「セラー。地下貯蔵庫を作るそうです。あのバカ親父は・・・」

「な、なるほど・・・」

「なので、申し訳ありませんが・・・もうしばらく預かっていて頂いても良いですか?」

「それは全然大丈夫なんで」

「普段からバカ親父の我儘に付き合わせてしまって・・・」

「いやいや、それは俺も助かってますから」


振り回されつつも俺の為にあれもこれもと手を尽くしてくれているのは十二分に理解している。


「立て替えて頂いたお代の方は農協の講座に振り込みますので」

「はい、お願いします」


ジョーさんにお土産を渡した後。一旦、鍛冶場に戻って昨夜打ったばかりのショートソードを手にして、冒険者ギルドに向かいフーバスタンクに送り届けて貰う依頼を出した。


「それではお預かりします」

「はい」


職員の説明によると。今日中には依頼は受諾され明日には出発されるとの事だった。

依頼料も思っていたよりも安かったが。これはフーバスタンクとオーパスポーカス間の行き来が激しく、商人の護衛依頼のついでに受ける可能性が高いとの事だった。


職員が依頼ボードに依頼票を貼り出すのを見届けてたので帰ろうと思った途端。


「お?これなんて良いんじゃね?」

「でも、安いぞ?」

「今はこんなしょーもない依頼でも数やってランク上げた方が逆に効率良いんだって」

「そういうもんか」



と、若い冒険者パーティーが貼り出されたばかり俺の依頼票を剥がして受付カウンターに持っていった。


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