192話 天使の取り分
おっさんの元奥さん。ジュジュさんと言うらしいが・・・。
ジュジュさんから逃れる為に見学はかなり早く切り上げる事になった。
「これで目的は達成した訳だがどうする?」
「エレノアもナエジも当分戻らないっぽいからなぁ・・・」
本当にする事が無くなってしまった。
「ジョーさんとマーシーさんに土産買うくらいしか無いな」
「俺には?」
「欲しいのがあったら自分で買えよ・・・」
「土産なんていくら貰っても嬉しいもんだろ」
「酒以外でもか?」
「・・・・・・」
「破綻しすぎだろ。それに、一緒に行動してるやつに土産なんて聞いた事無ぇよ」
「いや・・・」
「ん?」
「自分への土産とかはあるんだから無くは無いだろ」
「うーん・・・そう言われると・・・無くは無いの・・・か?」
「ほらみろ」
「まぁ、酒以外で欲しいのがあったら言え。考えてはやる」
「くっ・・・」
「アイテムボックスには入れてやれるから重い物でも嵩張る物でもいくらでも買っていいぞ。自腹だけど」
「そうか、なるほどな・・・」
「ん?何かあるのか?」
「いや、な・・・金貸してくれ」
「なんでそうなるっ」
「いや、金持って来て無ぇんだわ」
「いくらだよ・・・」
すると、思っていたよりも遥かに大きな金額を言われて、一瞬引いたが・・・普段から世話にもなっているし、そのくらいなら。と、その場で手渡した。
「よし、行くかー」
「どこにだよ」
「酒買いに行くぞ」
そりゃそうか・・・。
アイテムボックスを人前で堂々と使う訳にもいかないのでアイテムボックスから小汚い麻のカバンを取り出してアイテムバッグ(偽)として使う。
「ここから、ここまで」
「はい?」
「ん?ここは酒屋だよな?」
「はい・・・」
「だから。ここから、ここまで」
「お、お買い上げでしょうか?」
「おう」
「あ、ありがとうございますっ」
夢のここからここまで全部買いをしている・・・。
しかも、棚に並ぶ酒瓶ではなく・・・倉庫に並ぶ樽でここからここまでをやっている。
「配送はいかがなさいましょう?」
「いや、コイツがアイテムバッグを持ってるからそのまま貰ってく」
会計を済ませてから樽をアイテムバッグ(偽)にどんどん入れていく。
「「「ありがとうございましたー」」」
店員さん達が店の前まで出て頭を下げている。
まぁ、あれだけ買えばそんな対応にもなるか。
「あんなに買ってどうすんだよ」
「酒は飲むもんだろ?」
「1人で飲みきれる量か・・・?」
「まぁ、それは置いといて」
「うん?」
「すまんが、もうちょい金貸してくれ」
「え?」
次の店でもここからここまで買いをして、また貸した金を全部使っている。
「いやいやいや、どう考えても1人で飲める量じゃないだろ」
「ちゃんとオーパスポーカスに帰ったら金は返す」
「そういう問題じゃ・・・あ、そこの店寄って良いか?」
「おう」
以前にも来た香辛料を扱っている店に入り辛そうな香辛料を片っ端から買った。
これは当然ジョーさんへのお土産だ。
そして、マーシーさんにも色々と甘い物を買ったのでお土産はこれで十分だ。
「すまん。もうちょい良いか?」
「金か?」
「おう」
「だからそんなに買ってどうすんだよ」
「いや、な?」
「うん?」
「買って飲む。買って飲む。それも悪くは無いんだが」
「ん?おう」
「こんだけ買えば嫌でも寝かせられんだろ?」
「あー、熟成って事か?」
「妖精の取り分で目減りするのは微妙だが。その分、味も良くなるからな」
「そんな言い方するのか」
「天使だったり妖精だったり、取り分だったり分前だったりするな」
「へー」
「それにな?」
「うん?」
「熟成させてから売れば、買った時よりも高く売れるから儲かる」
「あー、なるほど」
投資か。
しかも、将来の酒代を先払いしただけと考えれば絶対に損はしないのか。
飲み進めていけば熟成が進んで味が良くなり、売れば儲けが出る。
「まぁ、あんまり売る気は無いんだけどな」
「無いのかよ」
「熟成でどんだけ味が変わるのか、保管室の温度や湿度が味にどう影響を及ぼすのか」
「実験かよっ」
「あー、まぁ、実験だな。昔から気にはなってて良い機会だと思ってな」
「なるほどな」
その探究心が今のおっさんを作ったのか。
私利私欲ベースっぽいのがおっさんらしい。
「だったら俺のアイテムボックスに入ってる酒もその実験に加えるか?」
「お?良いのか?」
「数が多い方が正解を導きやすいだろ」
「そうか・・・そこに入ってるウイスキーとかも飲み放題か」
「飲むなよ?実験の為だろ?」
「なんでだよ。飲まないと変化が分からんだろ」
「そ、それもそうだけど・・・飲むのが目的になってないか?」
「飲むのが目的だろ。なに言ってんだ?」
「実験目的じゃないのかよ」
「酒をいかに美味く安く大量に飲むか。だ」
ブレねぇ。一切のブレが無いなこのおっさんは・・・。




