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189話 1本

セバスチャンさんからの呼び出しを受けてやって来た訳だが・・・。


「会えてはないんですけど。手紙を持たせたエレノア達はどうでしたか?」

「将来有望な冒険者だそうで。ナエジ様とも意気投合なされておりました」

「会ったんですね」


もしかしてナエジも居なくてエレノアも居ないという事は・・・。


「もしかして、エレノアをナエジの護衛にしたとか?」

「まさか」

「あれ」

「流石に実力も信用も足りません」

「まぁ、ですよね」

「それから、エーリッヒさんですが」

「あ、はい」

「どうも動いているのがカギノ家とは全く関係の無い貴族な様で・・・」

「あー・・・はい」


そうか。

それこそ、配下とは言わないまでもカギノ家と関係があってカギノ家よりも格が下の貴族だったなら一言忠告するだけで事は収まったのか。


「お力になれず申し訳ございません」

「いやいや、悪いのはその厄介な貴族であって・・・」


そう簡単に事は運ばないか・・・。


「そういえば」

「はい」

「最近、鍛冶を始めまして」

「はい、伺っております」


鍛冶師として名を売りたくない事を説明し、ゆくゆくはカギノ家を介して卸したいと考えている事を伝えると快諾して貰えた。


「でしたら、拠点をフーバスタンクに移された方が便利では?」

「あー・・・でも、向こうに愛着があると言うか・・・それに、鍛冶場もありますし」

「鍛冶場でしたら新たにお作りになられれば問題は無いかと」


まぁ、あれだけ庭も広いんだから鍛冶場くらいいくらでも作れる。


でも、前までは良くはしてくれるが無理に手元に置こうとはしなかったのに・・・何故か俺をフーバスタンクに住まわせようとしているような?

いや、あの豪邸をくれた時点で手元に置こうとはしてるか・・・。


「それで、作品はお持ちでしょうか?」

「あー・・・打ったやつは全部おっさ・・・鍛冶の師匠みたいな人に預けて、代わりに卸して貰ってるんで。今、手元には無いですね。すみません」

「でしたら、1本依頼させて頂いても宜しいでしょうか?」

「え?」

「いえ、直ぐという訳ではなく。オーパスポーカスに戻られてからで構いません」

「それなら」

「出来次第、送って頂ければ」

「分かりました」


ナエジの異母兄弟の1人に剣術スキルを持つ子が居るらしく。その子用に1本ショートソードを打って欲しいとの事だった。


「代金の方は現物を見てからで宜しいでしょうか?」

「はい、全然それで構わないです」


そして、もしナエジが直ぐに帰るならしばらくこちらに滞在しても良いと思ったが、当分は戻らないらしく待つのもお菓子等の置き土産をするのも微妙だった。


「今回はフーバスタンクにどのくらい滞在される予定でしょうか?」

「メインは鍛冶を見せて貰おうと来ただけなので、2-3日もあればって感じなんですが・・・」


おっさんの隠し子問題やらがあってどのくらいになるかは不明だ。


「お帰りになられる前に連絡頂ければと思います」

「それはもちろん」


実際に滞在していたのは1時間程だが・・・どうにもセバスチャンさんと会うのは緊張してもっと長く感じる。

そして、帰りも馬車で送ってくれると言われたが大した距離でも無いので歩いて帰る事にした。


陽も傾き始め夕日が町並みをオレンジ色に照らし中々に良い雰囲気だ。

そんな良い雰囲気に浸りながら我が家に帰って来た訳だが・・・門を開ける前から嫌な予感がしている。

門を(くぐ)り、玄関に着いた頃にはその嫌な予感は完全に確信に変わっていた。


「お帰りなさいませ」

「ただいま・・・どうなってます?」


屋敷の奥からそこそこの人数がどんちゃん騒ぎをしている気配が伝わって来る。


「ご友人を何名か呼ばれ、宴会が始まりまして今に至ります」

「なるほど・・・」


たったの1時間くらいで?


「何人くらい居ますか?」

「最初のお2人を含めまして、全部で10名です」


結構だな。

でも、久しぶりに会ったなら仕方ない事なのかもしれない。


人ん家で勝手に人を集めて宴会するのはどうかと思うが・・・。


「こちらお返ししておきます」

「ん?え?」


と、置いてきた酒が返って来た。


「今、飲んでるんじゃないんですか?」

「ご友人方がご持参なされました」

「なるほど・・・」


類友って事か。


「んー、そうだな・・・」


挨拶した方が良いのかもしれないけど、巻き込まれて飲まされるのは確実だ。

昔話に花を咲かせている全く知らないグループに1人放り込まれるとか地獄でしか無いから挨拶は明日にしよう。


「ツマミ程度なら欲しいって言われたら対応してあげて下さい」

「はい」

「それ以外は放っておいて良いです」

「畏まりました」

「それと、10時くらいには解散させて下さい」

「はい」

「飲み足りないなら飲みに行くよう言って下さい」

「畏まりました」



そして、俺は巻き込まれないように夕食は外で済ませてくると伝えて退避した。


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