188話 よぉ
「よぉ」
「ん?あ・・・ジョッコか!」
「久しぶりだな」
と、聞いていた関係とは思えない程にあまりにも軽い挨拶から入っていった。
「ちょっと頼み事があるんだが」
「いきなりだな。他にもっと無いのか?」
それはそう。
フーバスタンクに着き、まず俺の屋敷に行きシェリルさんにしばらく滞在すると伝えてから馬を預けて鍛冶師の組合に来たが、我が物顔でズケズケと入って行き事務作業をしている人の前に立ち軽~い感じで挨拶をかましていた。
「ミト!こっち来い!」
「え、あ、おう・・・」
「コイツはウェイン」
「んで、こっちがミト」
「お、おう?」「ど、どうも・・・」
俺は事情を聞かされてるからまだしも、ウェインさんからしたら全く持って状況を理解出来無くて頭の上にクエスチョンマークが飛び交っている。
「コイツに鍛冶してるトコ見せてやってくれねぇか?」
「それは構わんが・・・誰だ?」
「ん?さっきミトって言っただろ?耄碌したか?」
「そういう意味じゃねぇよ」
「あー、コイツも鍛冶やってるんだが色々あってな」
「ほう・・・って、それよりもジョイはいいのか?」
「どうしてる?」
「俺に聞いて満足する気か?」
「・・・・・・」
「場所変えませんかっ?」
「そうだな・・・」
おっさんとウェインさんを連れ出し・・・たは良いが、ゆっくり喋れる場所なんて知らない。
無言の重苦しい空気のままアテもなく歩いていると見知った景色になっていき、気付けば自分の家の前に来ていた。
「お、おい。なに勝手に・・・」
「ここ、俺ん家なんで」
「!?」
門を開けて中に入るとリンさんが居たので来客を伝えると慌てて走り去っていったがメイドさんがそれで良いのか?とは思うが、主人が不在の屋敷の維持が主な仕事だから多くは求めるべきでは無いか。
少し歩き、屋敷の玄関を開けると中ではシェリルさんが既に待機していた。
「お帰りなさいませ」
「応接室に案内して貰えますか?」
「畏まりました」
ちなみに、俺は応接室がどこにあるのかは知らない。
そして、折角来たにも関わらずエレノア達は依頼で出払っていてしばらく帰らないそうだ。
更に、エーリッヒも居ない。エーリッヒはフーバスタンクに来た初日のみこの屋敷に宿泊して翌日には次の街に向けて旅立って行ったらしい。
なのでエレノアとエーリッヒも会っていないそうだ。
という訳で、大人数が居ると思われた俺の屋敷には俺達とメイドさん達しか居ない。
「こちらです」
この部屋に入るのは恐らく初めてだ。
住むつもりも無かったし子供でも無いから探検なんかもしていないのでどこにどんな部屋がるのかを全く把握していない。
「お飲み物はどうなさいますか?」
「あー、お茶でお願いします」
「畏まりました」
ウェインさんはいきなり連れて来られた豪邸に目を白黒させている。
まぁ、何の説明も無く貴族街の豪邸に押し込まれたらパニックになって思考停止するのも分かる。
そして、おっさんも予想以上だったのか辺りを見回しまくってお上りさん状態になっている。
「積もる話もあるんだろ?ここなら人目も気にしなくて良いから気が済むまで話し合いしてくれ」
「おう、助かる」
「済んだら呼んでくれ」
「いや、お前もここに居ろよ」
「なんでだよっ」
「お前の話もあるだろ」
「そこがメインじゃないだろ」
「ここに来た理由もお前だろ」
「気不味いからって俺を巻き込むな」
「くっ・・・」
「って事なんで、ごゆっくり」
部屋を出るとお茶の準備をしに戻ったシェリルさんと鉢合わせた。
「向こうに酒置いとくんで要るっぽかったら出してあげて下さい」
「畏まりました」
どうせ酒も飲まずに腹なんて割って喋れるかとか言い出すに決まってる。
そして、そうなると長くなるに決まっている。なので巻き込まれる前に避難した方が良い。
まずはデレクの所にでも行ってセバスチャンさんに連絡を取って貰って時間があればナエジとかにも会いたい。
そう思いながら玄関を出ると家の前に馬車が止まっているのが見えた。
「ミト様」
「え?俺?」
フーバスタンクに来て最初にシェリルさんに馬を預けた訳だが、その時点でセバスチャンさんに連絡は行ったようだった。
そして、セバスチャンさんからの呼び出しが掛かったという訳だった。
「ご無沙汰してます」
セバスチャンさんに会うのは本当に久しぶりな気がする。
そして、ナエジはまだ挨拶回りの最中らしくあっちこっちと飛び回り、たまに戻ってはまた挨拶回りに出発と忙しなく動いているそうだ。
能力や知識などは領主として十二分に満たしてはいるが。年齢が若すぎるのもあって舐められてしまうらしい。
なので、直接会って舐めて掛かると痛い目見るぞ?と、理解させておかないと舐め腐ったバカがわらわらと湧いてくるのが定番だそうで・・・念入りに挨拶回りをしているそうだ。
ナエジの挨拶回りは思っていた以上に大変で思っていた以上に重要だった事を今更ながらに知った。




