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18話 ふわっち

Aランクにまでなった元冒険者で現在は商人だという厄介そうなやつから連絡先を渡されてしまったりもしたが・・・それ以上は追求されなかったので他の人の所に逃げ込み。また果汁100%に加水したジュースを配って歩いた。

その都度、アイテムバッグに注目されて入手ルートや金額を聞かれたが最初と同じ様に適当な嘘でお茶を濁した。


ポーションのおかげでお馬様の歩様(ほよう)は安定しているし、肉を振る舞ったりジュースを振る舞ったおかげで乗客達の空気感も和らいでいる。

商人的にはタダより高いものは無いと言った所かもしれない。貰った分は情報で返すといった感じで色んな情報を聞かせて貰う事が出来た。


色々な国の情勢や勢いのある商会。勇者召喚に魔王討伐の噂。そして、俺を召喚したあの国が滅んだという話もあった。

高品質のポーションが出回り、そのポーションを研究して新たなポーションの精製方法が出来たとか出来なかったとか。


そして、興味深い話があった。

ここからはかなり離れているが獣人の国があるらしい。更にはエルフの国もあるとか。

エルフは伝説に近くて存在する確証は無いらしいが獣人は確実に居るそうだ。

この世界に来てから人間と魔族しか見ていないので獣人にはかなり興味が湧いた。


「獣人の国を目指すならばとにかく東を目指して旅を続けなければなりませんな」

「どのくらいとかは・・・」

「そうですなぁ。少なくとも1年や2年は掛かると思われますな」

「そんなにですか・・・そういえば、皆さんは獣人に会った事はあるんですか?」

「僕はあるよ」

「私は無いですな」

「俺も無いな」

「私もないですね」


会った事があるのは元Aさんのみか。


「冒険者時代に依頼が被って臨時パーティーを組んだんだよね」

「へぇ~」

「とにかくパワーとスピードが凄かったね。バカだったけど」

「あー、なんかイメージ通りかも」


フィジカルお化けの脳筋タイプ。イメージしたまんまの獣人だ。


「まぁ、僕が会ったのは1人だけだったから他の種族はどうか分からないけどね」

「どんな人だったんですか?」

「詳しくは聞いてないけど。多分、イノシシなのかな?の獣人で」

「「「「バカっぽい」」」」

「多分、イメージ通りだと思うよ」


猪突猛進。力こそパワーなイメージしかない。


「武器は斧でとにかく単騎で突っ込んでぶん殴る。それだけだった」

「うわー・・・逆に邪魔そう・・・」

「そう!連携も出来ないし、作戦を伝えても敵を目の前にしたら忘れるらしくて・・・」

「組みたくねぇ・・・」

「射線空けるように言っても聞こえてないみたいでね」

「きっつ・・・」

「獣人全部があれだとは思わない。思わないけどイノシシの獣人は大なり小なりあんなのなんだと思う」

「やっぱりその人は武者修行的な?」

「だねぇ。強いのと戦いたいって」

「っぽいですよねぇ」

「だから僕は挑まれなかったよ」

「そ、そうなんですか?」

「力が強い=強い。って考えしか無いみたいだったからね」

「なるほど。だったら今頃は死んでそうですよね。罠に掛かったとかで」

「言うねぇ。搦め手で楽勝に倒せるだろうから死んでるとは思うけど」


嫌いだったんだろうな。その空気を感じたから強い目の言葉を使ったら思いっきり乗ってきた。


「僕は斥候だったからね。弓とか遠距離と探索がメインの」

「強さって1つじゃないですからねぇ」

「そう!」

「知識が強さの時もあれば力の時もあるし。その時その時で強さの形も変わりますからね」

「うん、やっぱり気が合うね」

「え、いや、あの、一般論ですよ・・・そ、そう!場合によっては口だったりもしますからね」

「商人にとっては言葉が1番の武器という事ですな」

「いやいや、商人にとっての1番は知識でしょう」

「ふっ。商人に1番大切なのは信頼ですよ」

「人の数だけ強さがあるって事で!」


やばいやばい。回避したはずが別の地雷を踏みかけた。


一瞬ギスり掛けたが概ね和気藹々と楽しく旅をする事が出来た。

そうしていくつか村を経由し、乗客も増えたり減ったりと入れ替わったりもしたがそろそろお別れの時が来た。

これまでと違い少し大きい街に来た。


「それじゃあ、俺はここで」

「気が向いたら連絡してね」

「は、はい・・・気が向いたら・・・」


ただの逃避行だったが、獣人の国を目指すというふわっとした目的も出来た。


とりあえず山越えをして国境を越えた。これで追手も付きにくいはずだ。

そして、思ったのは。こちらの国の方が文明・・・というか、文化的に進んでいるように思う。

財政的に豊かなのが要因だとは思う。


まず、物流の量が多い。人の出入りも多い。まぁ、その分治安は悪いが詐欺やスリといった類が多いだけで路地裏に入った瞬間に小銭目当てに殺されたりする様な治安の悪さではない。


貧乏性を発揮して安めの宿に泊まったが接客がかなり良かった。

出てきた食事も美味しかったのでこの宿が特別なのかとも思ったが他の店でも普通に美味しかったし接客も良かった。

ある種、日本的なものを感じたが日本に居たのは10年以上昔なので懐かしさは感じなかったしもう忘れてしまった。



安い・・・訳ではない。値段相応というか常に値段以上のクオリティがある感じ。

何を食べても美味いし過ごしやすい。米もあるし出汁もあるし醤油っぽいものもある。


ふわっとした獣人の国を目指すという目的を完全に見失ってしまった。


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