13話 求肥
翌朝、目を覚ますとマルコの姿は既に無かった。
商人の朝は早くて早朝から仕事に明け暮れている。と言うわけではなく・・・ベッドを奪った詫びとして夕食後にアイテムボックスに仕舞い込んでいた秘蔵の酒を振る舞ってやった。
いや、振る舞い過ぎてしまった。
その所為でマルコは村長さんの家のトイレに住み着いた妖怪と化している。
ガチャ───。
「おう、おはよう」
「うう・・・」
「辛そうだな、ほれ」
「これは?」
「解毒ポーション」
「???」
「二日酔いには1番効くんだよ」
「はぁ?そんなもったいない事・・・」
「要らないなら返せ」
「いや、貰う!」
そう言うと一気に飲み干した。
「あれ?これ本当に解毒ポーション?」
「そうだけど?」
「前に飲んだのはもっと不味かったんだけど」
「質の悪いやつだったんじゃねぇか?」
「いや?ちゃんとした店で買ったやつだから・・・」
「まぁ、それはちょっと良いやつってのもある」
「マジかよ。金は払わねーぞ」
「良いよ、そんくらい」
どうせその辺に生えてる薬草から作れるし。
「昨夜の酒もあんな美味い酒初めて飲んだし。テツさんって実は凄い人?」
「かもなー」
「間違えた。凄い悪い人?」
「なんでだよっ」
「ベッドも譲ってくれなかったし」
「ベッドで寝たかったらジョセフィーヌのトコにでも行って来いよ」
「それは言わない約束だろー」
コンコン───。
「はーい」
「朝食はどうされますかな?」
「頂いても宜しいんですか?」
「是非食べて行って下され」
ついさっきまでグロッキーだったマルコも解毒ポーションのおかげで朝食をペロリと平らげていた。
「お世話になりました」
「いえいえ、これからもこの村をよろしく頼みます」
「こちらこそです」
再び荷馬車を広場まで移動させると、そこには既に村人達が集まっていた。
「おはようございます。すぐに準備するので少々お待ちくださーい」
2日目も飛ぶように売れていく。
「塩をもうちょっと欲しいんだけど」
「いやー、すみません。塩は完売です」
「そうなの?次はもっと持って来れる?」
「頑張ります!」
荷台にはまだあったはずだ。
「マルコ」
声を掛けようとすると無言で制された。
「塩は完売なんで胡椒とかどうですかー?」
「胡椒?高いじゃないの」
「物は良いんで値段は張りますけど。その分、少量でもガツンときますよ!」
「う~ん。それじゃあ少し頂こうかしら」
「ありがとうございます!」
客が一瞬切れたタイミングでマルコが近づいてきた。
「ここで全部売り切る訳にはいかないんだよね」
「あー、なるほど」
「嗜好品ならまだ良いんだけどね」
「死活問題か」
「そー」
「了解」
塩や薬といった物はマルコの中で各村毎に販売量が決まっているようだった。
「そろそろ行こうかー」
「お?出発か?」
「の前の仕入れだねー」
村によって多少の特色はあるとはいえ直線距離で見れば大して離れていない村同士でそこまでの差が出るはずもなく。
その村固有の特産品というのは滅多には無い。
「この村はねー」
「うん?」
「乳牛の飼育が盛んだからチーズとかが特産なんだけど」
「昨夜の村長さん家でも出てたな」
「美味かったでしょー?」
「確かにあれは美味かった」
「ところでさ」
「うん?」
「そのアイテムボックスって時間は?」
「な、なんの事だ?」
「止めれるんじゃない?」
「そんなん伝説の中の話だろ?」
「んー、停止じゃなくても遅らせられたり出来るんじゃないの?」
「それも一緒だろ。伝説ってかおとぎ話の中の能力だろ?」
「チッ・・・違ったかー」
お?カマかけられただけだったか?
バレたのかと思って焦った。
「だったら良いなー。って思ったんだよねー」
「無茶言うなよ」
「もしそうだったら牛乳とかも他の村に持ってけたのになー」
「道中で俺等が飲む分くらいならいけるんじゃないか?」
「まぁ、それが限界だよねー」
牛乳なんて重いわすぐ腐るわで売り物に向かないと愚痴っていた。
ただ、この村では捨てる程あるので捨て値で買い取れるからチャンスだと思ったらしい。
「まだ入りそ?」
「もうちょいかな」
「まぁ、でもこんなトコにしとくか」
大量のチーズに鞣した牛皮や牛革に牛骨や牛の角なんてのも俺のアイテムボックスに詰め込まれた。
「こんなに仕入れて大丈夫なのか?」
「まぁ、大丈夫じゃないかな?」
「ふわっとしてんな」
「飛ぶようには売れなくても需要は絶対にあるから大丈夫だよー」
「まぁ、革は絶対要るもんな」
「骨とか角もだよ?」
「そうなのか?」
「入れ歯とか差し歯ってさー」
「うん?」
「安物だと木で作るんだけど」
「良いやつは骨とか角から?」
「そー」
「歯だけじゃなくても色々加工して使えるからどっちも売れるし」
「へー」
「特に角は飛ぶように売れるんだよねー」
「なるほどなぁ」
そうか。
考えてみれば革は他の動物からも取れるか。




