118話 準
フーバスタンクからオーパスポーカスへの帰り道。
執事見習いから渡された手紙を開く。
まずはナエジからの手紙。
結構な長文が書かれているが要約するとたまには顔を出せの一言だった。
色々、この半年間の感謝とかも書かれていたがそっちはオマケだろう。
そして、セバスチャンさんからの手紙。
今回の護衛任務への報酬。
そう言えば報酬がいくら貰えるのか、何が貰えるのかそういった話をした記憶が無い。
読み進めると分かった。
この手紙はただの報酬の目録だった。と・・・・。
まずは金。そして、酒や麦等の食品。
そして、ビックリしたのが準騎士という、それは本当に爵位か?と言われると怪しいが絶妙に平民でも無いような爵位をくれるそうだ・・・。
後、フーバスタンクの永久市民権と税金免除。それと家もくれるっぽい。
市民権とか税金免除はカギノ家がフーバスタンクの領主である限り有効だそうだ。
そして、その中でも1番厄介そうなのが・・・ナエジ・カギノ伯爵の相談役という正式な役職を拝命したっぽい。
これによって毎月給金も出るそうだ。
これを口頭ではなく書面で伝えてきたのは拒否権が存在しないからな気がする・・・。
そうして、オーパスポーカスに帰ってきた。
「ただいま」
「おう、次はどこ行くんだ?」
「行かねぇよ」
「珍しいな」
「珍しくねぇよ・・・いや、うん、珍しくは無い・・・」
「んじゃ、しばらくはここに居る予定か?」
「しばらく・・・うん、しばらく?どこかに行く予定は一切無い」
「ふむ。だったらやっと鍛冶も出来るな」
「あー、そうだ。鍛冶場勝手に使ってないよな?」
「使ってねぇよ」
「鍛冶場は」
「ん?鍛冶場は?」
「先に言っとくは俺じゃねぇぞ?」
「ん?おう、おっさんじゃない。じゃあ、誰だ?」
「お前ん家、女の子が住んでるぞ」
「は?女の子?誰?」
「なんつったか?エーリッヒの弟子が住み着いてんぞ」
「エレノアがっ!?」
「あー、そんな名前だった気すんな」
「なんでっ?」
「俺から聞くより本人から聞けよ」
いや、確かに。
変に周りから聞くと拗れる可能性がある。
「ほれ、ちょうどそこに居るじゃねぇか」
「あ、アンジェラ」
「あー、ミトさんお久しぶりです!」
「そいじゃ、俺はこれで」
と、おっさんは仕事に戻ったのかは怪しいが去っていった。
「この間、帰ってきたとは聞いたんですけどタイミングが合わなくて」
「うん」
「ありがとうございます」
「ん?」
「ミトさんの家を貸して頂いてるので」
「そう、それっ」
「はい?」
「聞いてないんだけど?」
「なにをですか?」
「いや、家を貸すとか」
「あー!ミトさんおかえりなさい!!」
と、ジョーさんが焦った様子で駆け寄ってきた。
「すみません。私の方から説明させて頂きますね」
「え?」
ジョーさん曰く。
エレノア達が移住してきてしばらくした頃。ストーカー被害に遭ったそうだ。
宿を変えてもしつこくつきまとい。冒険者ギルドを介して注意して貰っても効果が無く。
それこそ、不在時に宿に不法侵入されたりした事もあったそうだ。
宿の関係者が賄賂を受け取って鍵のやり取りがあったとか無かったとかもあり人間不信に陥ったそうだ。
そこで、従業員用の社宅を勧めたかったが丁度空きが無くどうしようも無かったタイミングでエーリッヒが俺の家を使えば良いと言い出したのがキッカケらしい。
俺の家は比較的ポツンと一軒家な感じで田んぼのど真ん中にある。
当然、人通りも無く人の目が無いから危ないんじゃ?と思ったが。
逆に人が居る時点で怪しいから攻撃しても良いと思った方が気が楽との事だった・・・。
「それで、その犯人は?」
「巧妙で証拠が残って無いとの事で。不問です」
「マジか」
「厳重注意と次に疑わしい事があれば今までの事も合わせて。と言う話にはなっていますが・・・」
「ふむ」
「街ですれ違うとかでは罪に問えませんからね」
「あー、今もまだ付きまといっぽいのはある訳ですね」
「その様ですよ」
くそう。
と、なると俺の家に住むのが条件的には良いのか・・・。
「街に行くと付きまとわれる感じ?」
「はい。冒険者ギルドには定期的に行かないといけないので」
「あの家に居る間は安心?」
「はいっ」
うん、いい笑顔・・・。
出て行けとは口が裂けても言えないな・・・。
「言い出したのがエーリッヒさんですが。私が許可しましたので・・・」
「いや、しょうがないですね・・・条件的にも他だと厳しそうだし」
「すみません」
「いや、悪いのはそのストーカー野郎とエーリッヒなんで」
「「エーリッヒさんもっ?」」
「アイツが捕まる覚悟でその犯人を殺せば話が早かったはずじゃないですか」
そうすれば俺の新居が住む前に中古物件になる事は無かったし。
やっと帰ってこれたのに、相も変わらず宿住まいになる事も無かった・・・。




