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10話 成立

本人から聞いた訳じゃないから推測になるが元は娼婦なんだろう。

貴族お抱えの娼婦って事はかなりの高級娼婦だったに違いない。

そんな女がこんな田舎のピュアボーイをカモにする街コンのサクラになっているなんて誰が想像出来ただろうか・・・?

そんなのは誰にも無理だ。


なので持ち前の巻き込まれ体質というよりは引きの悪さを発揮して荷馬車に腰とケツを痛めつけられながら目的地の無い旅の途中だ。


高級娼婦から街コンのサクラにまで落ちたという事は彼女も貴族に目を付けられて逃亡生活を送っているのかもしれない。だとしたら、逃げる必要はなかったのかもしれない。彼女も被害者なのだから。

いや・・・俺の情報を売る事で返り咲こうとするかもしれないし。どのみち俺の情報は金になるだろうから逃げた方が良い。


「難しい顔してるねお兄さん」

「え?」

「ずーっと眉間にシワが寄ってる」

「なるほど・・・」

「何かあった?」

「えっと・・・」

「当てようか?女絡みっしょ?」

「ま、まぁ、正解かな・・・」


彼はこの荷馬車の持ち主で行商人として村から村を渡り歩いては買い付けと販売を行っているそうだ。


「女は怖いからねー」


と、カラカラと笑う。


「行商人になってからは」

「うん?」

「長いの?」

「そうだねー。生まれた時から?」

「え?」

「親が行商やってて・・・あ、かーちゃんの腹の中に居た時からか」


と、再びカラカラと笑う。


「この荷台も馬も親から受け継いだやつでね」

「へー」


という事は・・・彼は俺よりだいぶ若そうで20代も半ばくらいに見えるが親は既に・・・。


「そんな親父もお袋も今はもう・・・」

「すまん」

「貯めた金で店舗構えて商人になりやがって!」

「そっちかっ!」

「死んだと思ったろ?」

「思ったよ・・・」


またカラカラと笑う。


「いやぁ、お兄さんが居てくれて良かった」

「ん?」

「行商は好きなんだけどねー」

「うん?」

「移動が暇で暇で」

「あー、なるほど。話し相手が欲しかった。と」

「そー」

「馬じゃ話し相手にはならんからなぁ」

「そうなんだよねー」

「だからか」

「んー?」

「行商なんて大変だと思うんだけど」

「うん」

「腹に子供が居ても行商続けた理由だったり、くっついた理由だったりな」

「あー、嫁さん見つければ移動も楽しいか」

「じゃないかな?って」

「今度、聞いてみるかー」

「嫁さんのアテは?」

「ないなぁ」

「無いかぁ」


村から村に移動するんだから出会いは多そうだけど滞在も一瞬だから発展はしないのかもしれないな。


「どの娘も行商に付き合ってはくれなそうだしなー」

「ん?どの娘も?」

「うん。どの娘も」

「複数居んのかよっ」

「まぁ、そりゃ、行商人はモテるからなー」

「マジかよ」

「考えてもみなよ?」

「うん?」

「数ヶ月に1回やってきて」

「おう」

「村に必要な物資を大量に持ってきてくれる」

「ありがたいな」

「んで、大量に買い付けしてくれる金払いの良い客でもある」

「ふむ」

「金持ってるように見えるだろ?」

「あー、そういう事か」

「実際は火の車だけどな」


本当に金があったらこんな過酷な一人での行商なんてやってない。


「村の娘なんて村の外を知らないからなー」

「都会への憧れか?」

「そー。それに、知ってる範囲がちょっと広いってだけで大人にも見えるし」

「なるほどなぁ。だったら、尚の事、付いて来てくれそうじゃないか?」

「そこはさ・・・」

「うん?」

「計算も何も出来ない村の娘を横に乗せてたら商売にならないんだよなぁ」

「あー・・・無駄に食い扶持がなぁ」

「そー」

「って事は、お袋さんは」

「バリバリのやり手」

「なるほどなぁ」

「親父は護衛」

「そういう事か」


それでちょっとひらめいてしまった。


「良い話があるんだけど」

「ん?儲け話か?」

「商売の話ではある」

「まぁ、聞こうか」

「俺を護衛として雇わないか?」

「お?タダ乗りに飽きて。今度は金取って馬車に乗ろうってか?」

「こう見えてそこそこ強いぞ?」

「ふ~ん」

「元冒険者だしな」

「ランクは?」

「最高はBまで上がったかな」

「今は?」

「所属してないからランク無し」

「う~ん・・・」


冒険者ギルドのライセンスも商業ギルドのライセンスも失効しているし、あったとして犯罪者だから使えない。

ライセンスが無い=そういう事だ。


「いくらぼったくる気だ?」

「乗り賃タダ」

「そりゃ、今もだろ?」

「プラス、飲み食い」

「それから?」

「そんだけで良い」

「へ?」

「とは言え、ずっとって訳にはいかない」

「ふむ」

「ルート的にここから1番離れた村までって契約でどうだ?」

「よし・・・乗った!」

「おぉ!」

「ただし!」

「うん?」

「荷物の積み下ろしから商売の手伝いもやって貰うからな?」

「待て。それなら宿代もそっち持ちだ」

「宿・・・代は無理だ。晩飯に酒を1杯までが限界だ」



そこらへんが良いラインか。


瞬きで頷きOKの合図を出して。無言で契約成立の握手をした。


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