1話 ため息
「はぁ~~~~~~~~~・・・」
次は。次こそは絶対にミスらない。
どこで間違えたのだろうか?
まぁ、ぶっちゃけると最初から詰んでいたのかもしれない。
最初から説明すると・・・。
俺の名前は清水徹。ちょっとブラックめな会社で社畜をやってい・・・たのはかなり前の話だ。
まぁ、25の時に何の仕事だったかは忘れたがあちこち駆けずり回っていて夕方にかなり遅れた昼食を取ろうとコンビニに寄った。
それで、買い物を済ませてて店の外に出たタイミングで地面に謎の光る魔法陣が現れて異世界へと召喚されてしまった。
ただ、その召喚は俺をターゲットにしたものではなく店の前でたむろしていた高校生5人組。
俺は巻き添えで召喚されたのだ。
そこからは小説でよくあるパターンで・・・。
魔族に侵攻されてる我が国の窮地を救ってくれーってやつだった。
ガキんちょどもは上手い事乗せられて降って湧いた能力に浮かれ上がり魔王討伐を簡単に請け負ってしまった。
これまたテンプレの巻き込まれハズレスキルの俺には発言権なんてものは無かった。
という訳で、高校生5人と俺の6人に見張り役の騎士1人。計7人でのドキドキわくわく魔王討伐ツアーを敢行。
俺を含め高校生達も当然だけど命を奪った事など無かった。
虫とかならあるけど大きくて指先サイズが精々。
知ってるか?ゴブリンなんて色がちょっと違うだけでほぼほぼ人間の子供なんだぜ?
頭があって手足もあって身長1メートルくらい。もう完全に色違いバージョンの幼稚園児。
そんなのを手当たり次第に殺していく。
そうするとどうなると思う?受け入れるか心が壊れるかのどちらか。
ゲーム感覚の高校生達は簡単に受け入れてたけど、それこそが1番のチートだったんじゃないかとも思う。
しかし、雑魚と侮ると余裕でこっちが殺されるくらいには知恵もあるし数の暴力ってのは本当に恐ろしい。
色々あって4人は死んで、1人は壊れる方を選んだ。そこからは俺と騎士の2人っきりのドキドキわくわく魔王討伐ツアー(ポロリもあるよ)は続行された。
紆余曲折あって2年程掛かったけどなんとか魔王を討伐する事が出来た。
同行した騎士は大出世。俺も爵位と領地を与えられここからは内政チートのターンだと意気込んだ。
が・・・魔王を失い統制の取れなくなった魔物達が暴れに暴れて魔王の居た時よりも被害が大きくなり。
その責任を全て押し付けられた。
という訳で、俺は逃げた。無責任に思うかもしれない。
責任を追求されて前線に送られたり各地を回って魔物の討伐を行えと言われたとしたら受け入れていたと思う。
でも、送られてきた書簡には大罪人だから王都に来てギロチンで首チョンパされろ。
お前の領地は取り上げる。
いやいや、殺された後で領地とかどうでも良い。
でも、向こうさんの目的はそっちがメインだった様で・・・俺が領地で広めた現代知識による内政チートの技術や知識が欲しかったらしい。
そりゃ逃げるでしょ。
途中で放りだして領民には申し訳ないとは思うが領主がすげ替えられるだけで生活に大差は無いだろうから申し訳なくは思ったが逃げさせて貰った。
当然、世界中に指名手配された。世界を破滅に導かんとする大罪人として。
とりあえずお隣の国に逃げて身を潜めたが指名手配の内容を見た国や市民の反応は「またやってるよ」といった感じであの国は昔からそんな感じだったらしい。
とはいえ、バレて良い事は1つも無いので名前を変え冒険者として各地を転々としつつほとぼりが冷めるのを待った。
結果から言うと指名手配されていた期間は1年ほど。その間は一箇所には留まらずGから始まる冒険者ランクも一人前と言われるCどころかDに上がるタイミングで名前を変え冒険者ライセンスと再登録して別人へとなりすまし身を潜めた。
そうして1年が経った頃、俺を捕縛し斬首が行われたと御触れが出た事で指名手配が解かれた。
当然、俺は捕まってもなければ首も繋がったままだ。
国として犯罪者に逃げ切られたというのも外聞が悪いので全くの別人を俺の身代わりとして斬首に処したらしい。
その事は他国にもバレバレでわざわざやる価値も無いが外聞というのは大事らしい。
ちなみに、無辜の民が処された訳ではなく、死罪になる様な犯罪者を流用しているそうなので俺が罪悪感を抱く必要は無かった。
そうして気兼ねする事無く冒険者ライフを送れる事となった訳だが・・・この世界に召喚された時同様に俺が巻き込まれ体質なのを失念していた。
定住し、冒険者ランクを順調に上げていった。そこまでは良かった。
いや、それが良くなかったのか・・・。
見慣れない見た目。見慣れない道具を使い。あり得ない速度での昇格。隠しきれない実力。
今、思い返せばいくらでも原因は思いつくが・・・あの当時は生きるのに必死だったので仕方ない。
そう。仕方ないと思いたい。
目立ちすぎた結果・・・美人局を送り込まれたり、寄生しようと擦り寄られたり、お零れに預かろうと擦り寄られたり、美人局に騙されそうになったり、脅されたり、襲われたり、美人局にサイフを持っていかれたり、性病を貰ったり・・・。
女絡みは自分の責任による所が大きいとは思うが・・・短期間に儲け過ぎたんだろうと思う。
俺が冒険者を引退した理由は冒険者ギルドの職員に俺の口座を凍結→没収されたからだ。
冒険者ギルド自体は国から独立した団体ではあるが、職員もそうとは限らない。
学が無いと出来ない職の所為もあって家督を継げない貴族の次男やら三男やらも多く。権力という後ろ盾を持った厄介なやつが結構な数居たりする。
そんな元貴族のギルド職員の中には現代日本の教育を受けた身からすれば鼻で笑ってしまうような知識量でマウントを取ってきたりするやつが居て、余りにもウザすぎて論破してやった事もあった気がする・・・って、ん?あれ?もしかして、それの報復で俺の口座を没収したのか?
今からでももう1回ぶっ潰してやろうか・・・いや、わざわざそんな面倒な事に首を突っ込まなくていいか・・・。
言い忘れていたけど、巻き込まれたやつの方がチートってテンプレ通り。自分で言うのもなんだけど俺も大概チートだ。
じゃないと魔王なんて単独で倒せる訳ないしな。
まぁ、それはさておき・・・そんなこんなで冒険者ギルドやら貴族達と一悶着があってまた名前を変えて逃亡するハメになった。
逃げた先で働きもせずにプラプラしてると怪しすぎるから今度は商業ギルドに登録して露店で適当な物を売ったりしていた。
金に関していえば一生遊んで暮らせるくらいにはある。
魔王討伐の報酬だけでもそうだけど、冒険者としても稼ぎまくったし揉めた時に貴族どもが隠し持ってた資産をちょろまかしてきたから何代か先までは余裕で遊んで暮らせるくらいには金がある。
更には容量無制限で時間停止機能もあるアイテムボックスには高ランクの魔物の素材もあれば魔王城からかっぱらってきた金銀財宝に武器や防具も大量に突っ込んである。
ただ、そんな魔王城にあった貴金属やら装備品なんて市場に出したら足がつくから死蔵するしかない。魔物の素材も然りだ。
という訳で、薬草から錬成したポーションを売ったりしている。
街から歩いて10分くらいの森にでもいけばそこかしこに生えてるから元手もタダで済む。
アイテムボックスに薬草を入れてアイテムボックス内で操作すれば必要な成分のみを抽出出来て純度の高いポーションが何の施設も無く器具も必要とせず時間も掛けずに簡単に作れる。
それでちょっと調子に乗ってポーションを売りまくった結果・・・市場価格が崩れまくって錬金ギルドに目を付けられてしまった。
そこで、商業ギルドも俺を守ってくれるかと期待したが何もしてくれずまたしても逃げるハメになってしまった。
そう。
これが異世界に召喚されてからのあらましだ。
この後にも色々あったが、気付けば30も半ばに差し掛かっていた・・・。
久しぶりの長期連載です。多少のストックはあるので毎日投稿予定です。