完走者
また、あの、まるで死神の囁きのような、無慈悲なアナウンスだ、もう聞きたくない。
『残った皆様だけが、今回の完走者になります。』
一気に天の声に聞こえた。
『これから、男女別の更衣室に分かれて、着替えてください。』
アナウンスのその一言を聞いて、僕は──ようやく、思い出した。
そういえば、この儀式が始まってから、一度たりとも「男」とか「女」なんて分けられていなかった。ただの番号。見た目の区別も曖昧で、声もほとんど聞かない。性別の感覚なんて、とうに忘れていた。懐かしい響きだった。
参加者たちは、疲労でフラフラの足を引きずりながら、夢遊病者のように自分の荷物を抱え、更衣室へと流れていく。僕もその流れに紛れながら、ふと、視線を横にやった。
肩に赤色のマジックで番号を書かれた人は動いていなかった。
橋のそば。泥と水にまみれた冷たい地面の上に、運営者と思しき数人が、ただ黙って立ち尽くしていた。僕らとまったく同じ黒い水着、水泳帽、番号付き。けれど、彼らは更衣室へ向かうこともなければ、荷物を取りに行くこともなかった。
整然と、まっすぐに立ち続けていた。
まるで、まだ「試練の中にいる」ように。終わりが与えられていないかのように。
彼らは、まだ着替えることすら、許されていないのか。
ふと、そんな考えが脳裏をよぎった。僕らと同じ水着を着ていても、立場は違う。あの冷たい川を、静かに見守ってきた彼らは、まだ番号を背負ったまま、そこに残されていた。
みな疲労でフラフラの足を引きずり、まるで夢遊病者のように、自分の荷物を抱きしめ、更衣室へと向かった。




