リュックサック
また、あの、まるで死神の囁きのような、無機質な声が、疲弊した体育館に冷たく響いた。
『これから、私物を返却します。運営者が順次、持ってきますので、その間も、必ず起立したまま、一切動かないでください。』
誰かが、まるで絞り出すような、小さな呻き声を上げた。
でも、当然、疲労困憊のあまり、その場に座り込むことなど、許されるはずもなかった。
体育館には、まるで時間が止まったかのような、ぬるい沈黙だけが、重く、そして淀んだ空気のように漂っていた。
僕も、まるで抜け殻のようにフラフラのまま、ただ、そこに立っていた。足は、まるで自分の体から切り離された木製の棒のようだった。腰は、今にも折れてしまいそうだった。首も、肩も、腕も、もはや自分の体の一部ではない、まるで借り物のようだった。
運営者が、まるで施しのように、少しずつ、僕たちの私物の入ったビニール袋を運んでくる。一人、また一人と、疲弊した僕たちの目の前に、まるで墓標のように荷物が置かれていく。みんな、目の前に自分の荷物があるにも関わらず、まるで呪いをかけられたように、微動だにすることができなかった。
だが──もう、限界だった。
ここまで、想像を絶する苦しみに耐えてきたにも関わらず、さらに一人、また一人と、まるで朽ちていくように、疲労困憊で倒れていく子どもたちが出始めた。冷たい体育館の床に、まるで崩れ落ちるように座り込む。まるで死神に導かれるように、すぐに運営者が駆け寄り、無言で、その子どもをまるでゴミのように掴み上げ、体育館の外へと運び出す。
リタイア。
まだ、続いている。
まだ、この、残酷な生き残りの選別は、終わっていないのだ。
僕は、まるで最後の抵抗のように、ぐっと奥歯を噛み締めた。目の前が、まるで歪んだ鏡のように、 ぐにゃりと歪んで見えた。
それでも、僕は、ただ、そこに立った。
自分の荷物が、戻ってくるのを、まるで砂漠で水を待つ旅人のように、ひたすら、待ち続けた。
帰るために、ただ、立ち続けた。
ようやく、僕の目の前に、待ち焦がれた自分の荷物が置かれた。透明なビニール袋に包まれた、使い慣れた僕のリュックサック。
一体、何日ぶりだろう。
一体、何時間ぶりに、自分の荷物を見たのだろうか。
まるで、長い間会っていなかった親友に再会したかのように、懐かしかった。
みんな、目の前に自分の荷物があるにも関わらず、まるで呪いをかけられたように、微動だにできない。その間にも、ほんのわずかに動いてしまい、無情にもリタイアを宣告される者もいる。自分の荷物は、目の前にあるのに、まるで連行される罪人のように、荷物を体育館に置いたまま、無言で体育館から連れ出される。
一体、この悪夢のような時間は、どこまで続くのだろうか。
全員の目の前に、それぞれの荷物が置かれてから、ゆうに一時間が経過した。
その時だった。疲労困憊のあまり、また次々と、まるで操り人形の糸が切れたように動いてしまい、無情にもリタイアを宣告された。その子が、まるで魂の抜けた人形のように、体育館から出る直前。
まるで、全てを終わらせる宣告のように、冷たい、あの、川に入る前に聞いた、大きく、そして重い鐘の音が、体育館全体に、けたたましく響き渡った。




