決して諦めない
もう、体には、力なんてほとんど残っていなかった。
あるのは、疲労を乗り越えるための知恵と、決して諦めないという、微かな意志だけだった。持続可能な、最後まで途切れることのない戦略、そして、どんなに疲弊しても、最後まで続けられる道。それだけが、今の遥斗の、唯一の頼りだった。
冷たい川を渡り、軋む橋を渡り、そして、再び冷たい流れを渡ろうとした、その時だった。
見慣れた、白い箱。疲れた指で書いた番号を記した紙を入れる、あの、無機質な箱が──まるで、全てが終わったことを告げるように、僕らと同じ水着と水泳帽の参加者によって、無言で、そして淡々と撤収されていった。
「……え?」
僕の足が、まるで地面に根が生えたように、その場に釘付けになった。まるで、周囲の時間だけが凍結してしまったかのように、疲弊した体が、まるで意思を持たない抜け殻のように、動かなくなった。
他の、疲労困憊した子どもたちも、まるで何かに気づいたように、次々と顔を上げた。黒い水着・水泳帽の、泥だらけの群れ。疲労の色が濃く刻まれた顔。目の下には、まるで深い夜の闇のような青い隈が広がり、乾いた唇は、まるでひび割れた大地のように割れていた。
全員が、まるで信じられないものを見るかのように、その光景を、ただ、呆然と見つめていた。まるで、これは何かの間違いであってほしいという、切実な願いが、重い沈黙の中に、かすかに漂っているようだった。
そして、まるで全てを終わらせる宣告のように、静かに、事務的なアナウンスが、疲れた空気を震わせた。それは、まるで感情を持たない機械が、冷たい言葉を吐き出しているようだった。
『みなさま、時間になりました。これで、終了です。』
あまりにもあっけない言葉の意味を理解するのに、数秒の、まるで永遠のように長い時間がかかった。
『なお、確認作業のため、全員、速やかに休憩施設へ移動してください。日没後、空が完全に暗くなった時点で、体育館へ集合し、番号順に整列してください。』
それだけ。
ただ、それだけだった。まるで、冷たい事務連絡のような指示。そこには、人間の感情のかけらも、温かい労いの言葉も、何も存在しなかった。
誰も、疲れた体に鞭打って拍手をする者はいなかった。
誰も、喜びや安堵の声を上げる者はいなかった。
冷たい川は、まるで人間の悲しみなど、微塵も理解していないかのように、ただ、いつもと変わらず、静かに流れ続けていた。
僕は、まるで操り人形のように、震える足で、ゆっくりと、その場に立ち尽くしていた。足の裏の感覚が、まるで遠い記憶のように曖昧で、膝ががくりと揺れ、疲労困憊した体が、まるで風に揺れる木の葉のように、小刻みに揺れた。
終わったんだ。本当に、終わってしまったんだ。
体の奥底から、まるで熱いマグマのように、じわじわと、何かが込み上げてきた。
それが、長時間の苦しみからの解放による喜びなのか。それとも、全てが終わったことへの安堵なのか。あるいは、まるで空っぽの器のように、ただの虚しさなのか。
ただ、この、まるで地獄のような日々が、今、本当に、終わったのだと、体の隅々の細胞一つ一つが、まるで重い鎖から解き放たれたように、静かに脱力していくのを感じていた。
皆は、まるで抜け殻のように、泥だらけの水着・水泳帽を力なく絞りながら、ふらふらと、あの温かい光が漏れる休憩施設へと向かった。
疲れた肩越しに、最後に見た冷たい川は、まるで何もなかったみたいに、ただ、静かに、そして永遠に、流れ続けていた。まるで、僕たちの耐え難い苦しみも、ようやく訪れた解放の喜びも、全てを、深い川底に飲み込んで、何事もなかったかのように。




