最後の抵抗
最後の抵抗のように、冷たい水の中に、震える足を踏み入れた。冷たい水が、限界まで疲れ切った筋肉に触れ、ほんの一瞬だけ、まるで麻酔のように痛みを和らげた。
それは、まるで泥沼にはまった亀のような、信じられないほど、のろい動きだった。
彼らの背中を追いつけないことは、もはや、痛いほどわかっていた。頭では、冷静に、論理的に理解していた。それでも、疲弊した体は、まるで操り人形のように、ゆっくりと前へと進んだ。
だけど。
追いつけない。
「……っ」
悔しかった。
苦しかった。
考えろ。必死に、この状況を打破する方法を考えろ。
このまま、ただ力任せに、疲弊した体を動かし続けても、確実に潰れる。まるで、燃料切れの機械のように、完全に停止してしまうだろう。
それなら、少しでも長く生き残るために、今の自分にできることを、全てやるしかない。
足が、冷たい泥に取られる。なら、なるべく水の浅い場所を選んで、慎重に進もう。
重い体を持て余す。なら、手足を無駄に大きく動かすことをやめ、最小限の動きで、効率よく渡ろう。
荒い呼吸が苦しい。なら、一定のリズムで呼吸することを意識して、無駄に心拍数を上げないようにしよう。
何もかも、無駄を徹底的に削ぎ落とす。
ただ、生き残るために。
冷たい川を渡り、軋む橋を渡り、濡れた記録用紙に番号を書く。
その、単調な動作を、まるで魂の抜けた人形のように、ひたすら、しかし、疲労した脳をフル回転させ、緻密に、繰り返していく。




