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晴れた日

 どれくらいの日数が、この過酷な試練の中で過ぎ去ったのか、もう、まるで遠い星の光のように、わからなかった。何回、冷たい夜が明け、そして沈んでいったのか。何回、容赦ない雨が降り続いたのか。

 でも──今日は、確かに、これまでとは違っていた。

 空は、信じられないほど深く、そして澄んだ青色をしていた。まるで、どこまでも続く透明なガラスのようだった。雲ひとつない晴天。吹く風も、まるで春のそよ風のように穏やかで、昨日までの、足元も見えないほど酷い泥濁りが、まるで嘘のように、少しずつ、しかし確実に引いていた。まるで、これまでの耐え難い苦難を、全て忘れ去ってしまえとでも言うように、自然は、これまで見せたことのない、穏やかな顔で僕を見つめていた。

 僕は、疲労困憊した筋肉は、一歩踏み出すたびに悲鳴を上げ、冷たい雨と泥に晒された皮膚には、無数の赤い擦り傷と、破れた水ぶくれが点々と残っていた。それでも、前に進むしかなかった。それが、今の僕に残された、唯一の道だった。


 そして、まるで幻を見たかのように、目を疑った。


 休憩施設のドアから、まるで堰を切ったように、次々と、黒い水着・水泳帽を身につけた子どもたちが溢れ出てきていた。まるで重力から解放されたかのような、軽い足取り。彼らの表情には、疲労の色は微塵も感じられない。まるで、待ち焦がれた時が来たと言わんばかりに、一斉に、あの冷たい川に向かって走り出した。躊躇いも、恐怖の色もなく、滑らかに、そして正確に動いていた。


 早い。信じられないほど、速い。


 水を掻く力強い動きも、軋む橋を駆け抜ける信じられないスピードも、濡れた記録用紙に番号を書き込む、無駄のない手つきも、その全てが、疲労困憊し、泥水の中で必死にもがいている僕よりも、遥かに速かった。まるで、長年の訓練を積んだアスリートのように、無駄のない洗練された動き、計算し尽くされた完璧な呼吸、そして、極限まで研ぎ澄まされた効率。僕がまるで重い鎖を引きずるように進んでいた冷たい水の中を、彼らはまるで生まれた時からそこにいた魚のように、いとも容易く泳ぎ抜けていく。

 それまで、ずっとあの温かい休憩施設に、まるで冬眠する熊のように身を潜めていたはずの子どもたちだ。僕は、彼らはもう諦めて、あの温かい場所に安住の地を見つけたのだと、勝手に思い込んでいた。


 でも、現実は全く違っていた。


 彼らは、この、決定的な瞬間を、まるで獲物を待ち構えるかのように、静かに待っていたのだ。最初から、この、体力を消耗することなく動きやすい“穏やかな晴天”を待ち望み、雨の日も、容赦なく吹き荒れる風の日も、濁流が押し寄せる水かさの増した日も、まるで冬眠する動物のようにじっと耐え忍び、貴重な体力を、一滴たりとも無駄にすることなく温存していたのだ。

ずっと、この、一瞬で全てを覆すための、渾身の一撃のために。


 「……っ」

 僕の体には、一歩前に踏み出す力さえ残っていなかった。足は、今にも攣ってしまいそうだった。冷たい泥水と、拭いきれない汗で擦れた水着・水泳帽は、まるで火傷のように、体中がひりひりと痛んだ。皮膚の下では、まるで怒り狂ったように血管が脈打ち、冷たい空気を吸い込むたびに、乾いた肺が焼けるように熱かった。

 彼らのように、まるで重力から解放された鳥のように軽やかに、あの冷たい川を渡ることなど、今の僕には、到底不可能だった。


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