二つの世界
休憩施設の外では、あの淀んだ川が、まるで何もなかったかのように、静かに流れ続けていた。
窓の外では、泥に膝を取られながら、それでも川を渡る子どもたちがいた。
ずぶ濡れの背中が黙々と橋を行き来し、誰一人、こちらを振り返らない。
濁った水音が風にのって届くたび、そこにあるのは「進み続けること」だけだと知らされる。
一方で、この部屋異様なまでに整っていた。
濡れた足跡もなければ、誰も急いでいない。
まるでここだけが、儀式から切り離された別の国のようだった。
この、温かい休憩施設は、今、まるで目に見えない境界線によって、二つの世界に分かれていた。
過酷な試練から降り、安寧を求める者と、たとえ僅かな希望しか見えなくても、まだ諦めずに戦い続けている者。
同じ黒い水着・水泳帽を着ていても、そこには、決して越えられない、深く、そして冷たい壁が、確かに存在していた。
僕は、疲れた足を踏みしめ、静かに、自分自身に問いかけた。
自分は、一体、どちら側の世界に身を置きたいのか、と。
答えは、もう、とっくに決まっていた。
まるで最後の希望を託すように、休憩施設のドアに手をかけた。
外から容赦なく射し込んでくる、まばゆいばかりの朝の光は、まるで鋭い刃物のように、僕の疲れた目を刺した。
それは、まるで、冷酷な声で「おまえは、もう遅れたんだ」と、静かに告げているようだった。
過酷な川へ向かう、まだ諦めていない者たちの、背中を静かに追った。




