静かに許せた
僕が回数を稼ぐ中、ほとんどの子どもたちは、あの温かい光を放つ休憩施設へと、まるで蛾が火に吸い寄せられるように消えていったか、あるいは、もう、この過酷な場所には、存在していなかった。
夜の、静まり返った渡河エリアには、まるで寂しい星のように、数えるほどの人影しか見当たらなかった。
幾度目かの、終わりの見えない渡河を終えた、その時。
重く垂れ込めていた夜空が、ほんの、本当にわずかに、明るさを取り戻し始めていた。
東の、遥か遠い地平線が、まるで水彩絵の具が滲むように、かすかに、しかし確かに、その色を変え始めていた。
深い墨色から、静かな藍色へと。
もう、自分が一体、どれだけの回数、この冷たい川を渡ったのか、見当もつかなかった。何時間もの間、疲弊した体を動かし続けていたのかも、わからなかった。
それでも、自分の、疲れた足で、確かに、乗り越えたのだ。
──ここからだ。
夜明けは、決して、疲労からの安堵などではない。
夜明けは、新たな、そして過酷な戦いの始まりを告げる、静かな鐘の音だった。
けれど、
それでも──変わりゆく空の色を、まるで希望のように見上げながら、
心の奥底で、ただひとつ、静かに思った。
生きてる。
確かに、ここに、いる。
最後の一往復を、まるで儀式のように終えた後、ふと、東の空に広がる夜明けの光を見上げたとき
、まるで長い夢から覚めたように、ようやく、自分の身体が、もう限界に近いということに気づいた。
長い夜を、ただひたすらに越えた、という、かすかな達成感は、確かに、胸の奥底に残っていた。けれど、このまま、無理をして進み続けてしまえば、、、
今は、もう、休もう。
その、まるで重い鎖を断ち切るような一言を、遥斗は、ようやく、疲弊した自分自身に、静かに許すことができた。




