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バイキング

  休憩棟の奥にある食堂。天井は高く、空調は静かで、照明はあたたかい。

 その中央には、バイキング形式の食事台がずらりと並んでいた。

 白米、炊き込みご飯、焼き魚、唐揚げ、煮物、パスタ、パン、カレー。野菜スープにフルーツ、ヨーグルト、ゼリー。ドリンクコーナーにはスポーツドリンクに牛乳、麦茶、ココア、冷たい水。

 僕は思わず目を見張った。こんなにあるのか。こんな、まるでホテルみたいな。

 でも彼女は、列の途中でひとつだけ、小さな器を手に取った。

 白いスープ皿に、スープを少しだけ。さらさらと、具の少ない透明な液体。

 「……それだけ?」

 つい聞いてしまった。すると彼女は、器を持ったまま、わずかに笑った。

 「うん。今はこれでいい。食べすぎたら、また動けなくなるから」

 さらっとした声だった。何かを抑えるような、でもちゃんと自分で決めているような、強さの混じった声。

 僕はというと、気がつけば、炊き込みご飯を一膳、唐揚げを三つ、温野菜、パン、ミネストローネ、ゼリー、そしてココアまでお盆に乗せていた。

 えっ、やばい、取りすぎた……と内心焦る。でも戻せない。なんとなく、男として見栄を張ってしまった気もするし、正直、腹が減っていた。

 彼女はそんな僕のトレーをちらっと見ただけで、何も言わなかった。

 でも、何も言わなかったことが、逆に恥ずかしかった。


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