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水着

ようやく脱ぎ終えた水着は、床にしずかに落ちた。濡れた布がタイルに触れて、ぺたりと鈍い音を立てる。まだ自分の体温を含んでいる気がして、指先で拾い上げることすらためらわれた。足元のタイルは温かく、裸足で立っていても寒くはなかった。それなのに、全身の肌が空気にさらされていることに、ひどく敏感になっていた。

 シャワーのノズルを回すと、すぐに湯が落ちてきた。音もなく、柔らかく。頭から肩、背中、腰へと、まるで見えない手で撫でられているかのようだった。

湯が肩に落ちた瞬間、ああ、と喉の奥で声が漏れそうになった。

 気持ちいい、という感覚が、一気に身体の芯にまで届いてきた。何かがとけてゆくようだった。塩を含んだ皮膚、川の泥、じわじわと張りついていた倦怠。それらが湯に溶け、熱とともに流れ落ちていく。何も考えなくていい。ただ水の重さに身を預けていれば、それだけで、少しずつ自分が戻ってくるような気がした。

 だけど――その幸福は、まっすぐなものではなかった。

皮膚の色が、くっきりと分かれていた。

 肩から腕にかけては赤茶けていて、光を反射するほど乾いていたのに、胸の中央から下腹にかけての一帯は、驚くほど白かった。焼けていない。まるで、ずっと日陰にいたかのように。

 ――ああ、水着が守ってくれていたんだ。

 そんな風に、思ってしまった。

 着せられて、縛られて、息苦しいとすら思っていたこの水着が、いつのまにか、自分の身体を陽から守っていた。川の中で、橋の上で、風にさらされ、光に照らされ続けていたあいだも、この布だけは変わらずに、皮膚の一部のようにそこにいた。

 見下ろせば、水着の形がまるで、まだ身体に貼りついているようだった。肩の境目。胸のカーブ。脇の下の狭い領域。そして脚の付け根の内側。

 それらが淡く、けれどはっきりと、色の違いとしてそこにあった。

 でも、それは裏返せば、そこ以外のすべてがむき出しだった、ということでもある。

 だからこそ、水の気持ちよさと、焼けた部分の痛みが、こんなにもはっきりと、交互に波打ってくる。


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