重たい水着
何度か川を往復して、僕はようやく気づき始めていた。
この水着が、やっぱり変だということに。
最初に気になったのは、見た目の違和感だった。肩まで布がある、女子用のような水着。着るのは、初めてだった。
学校で配られる男子用の水着は、いつも腰から下だけ。短パンみたいな形で、すぐに慣れたし、動きやすかった。
でも、これは違う。
布が、肩に食い込む。それがずっと気になる。
ラッシュガードのようなものも、僕は今まで着たことがなかった。だから、上半身に布が張りついている感覚そのものが、すでに異常に感じられた。
布がある場所の全部が、少しずつ邪魔をしてくる。
肩は、泳ぐたびに、腕をまわすたびに、水をかくたびに引っ張られて、そこだけ力が抜ける。
それだけじゃない。
川から出ると、布はさらにきつくなる。肌に吸い付くように張りつき、引っ張ってくる。
胸のあたりは、水を含んでじっとりと重い。
ぴったりと貼りついたその布が、息をするたびに微妙に肌を引っ張る。動きにくい。
背中も同じだった。
布が冷えて、締めつけが強くなる。伸びきらないゴムのように、ぎゅっと体を包んで離さない。
この水着が、僕の自由を少しずつ奪っている気がした。
──でも、不思議だった。
下半身だけは、意外と動きやすかった。
布が落ちてくる心配がない。水の中で足を蹴っても、抵抗がない。擦れる感じもしない。
むしろ、いままで使っていた男子用の短パン型よりも、スムーズに動けているように思えた。
きゅっと締まっていて、どこにもずれない。その感覚は、少しだけ安心だった。
でもやっぱり、全体としては変だった。
下半身は快適なのに、上半身はどこか苦しい。
胸のあたり、肩のあたり、背中のあたり。
濡れて、貼りついて、締めつけて、じっとり重くなっていく。
この布は、ただの水着じゃない。
僕の身体に命令するように、ぴったり、ぴったりと貼りついて、離れない。




