表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/73

重たい水着

 何度か川を往復して、僕はようやく気づき始めていた。


 この水着が、やっぱり変だということに。


 最初に気になったのは、見た目の違和感だった。肩まで布がある、女子用のような水着。着るのは、初めてだった。


 学校で配られる男子用の水着は、いつも腰から下だけ。短パンみたいな形で、すぐに慣れたし、動きやすかった。


 でも、これは違う。

 布が、肩に食い込む。それがずっと気になる。


 ラッシュガードのようなものも、僕は今まで着たことがなかった。だから、上半身に布が張りついている感覚そのものが、すでに異常に感じられた。


 布がある場所の全部が、少しずつ邪魔をしてくる。

 肩は、泳ぐたびに、腕をまわすたびに、水をかくたびに引っ張られて、そこだけ力が抜ける。

 それだけじゃない。

 川から出ると、布はさらにきつくなる。肌に吸い付くように張りつき、引っ張ってくる。

 胸のあたりは、水を含んでじっとりと重い。

 ぴったりと貼りついたその布が、息をするたびに微妙に肌を引っ張る。動きにくい。

 背中も同じだった。


 布が冷えて、締めつけが強くなる。伸びきらないゴムのように、ぎゅっと体を包んで離さない。

 この水着が、僕の自由を少しずつ奪っている気がした。


 ──でも、不思議だった。


 下半身だけは、意外と動きやすかった。

 布が落ちてくる心配がない。水の中で足を蹴っても、抵抗がない。擦れる感じもしない。

 むしろ、いままで使っていた男子用の短パン型よりも、スムーズに動けているように思えた。

 きゅっと締まっていて、どこにもずれない。その感覚は、少しだけ安心だった。


 でもやっぱり、全体としては変だった。

 下半身は快適なのに、上半身はどこか苦しい。

 胸のあたり、肩のあたり、背中のあたり。

 濡れて、貼りついて、締めつけて、じっとり重くなっていく。


 この布は、ただの水着じゃない。

 僕の身体に命令するように、ぴったり、ぴったりと貼りついて、離れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ