表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/73

休憩所へ向かう参加者

 橋を渡り、番号を書いた紙を箱の隙間へ入れた。

 ──これで、三回目だ。

 まだまだ行ける。そう思っていた。


 でも、その直後だった。

 すぐ隣で、同じように紙を入れていた誰かが、何の迷いもなく、ふいに向きを変えた。

 足は、川ではなく——休憩所へ向かっていた。

 ガラス張りの入り口。その奥には、暖かい光。まるでホテルのロビーのように、柔らかな照明と落ち着いた色調に包まれた空間が広がっている。

 橋を渡った直後の流れのまま、当然のように、迷いも見せず、その誰かは休憩所へと吸い込まれていった。

 一人だけではなかった。ぽつぽつと、少しずつ。

 紙を入れ終えた参加者たちが、川へ戻ることなく、代わりに休憩所のほうへ向かっていく。まるで、それが自然な選択であるかのように。


 誰も、止めない。誰も、声を上げない。

 疲れているようにも見えなかった。むしろ、表情は平坦で、呼吸も乱れていないようだった。

 それでも、彼らはそちらを選んだ。

 川ではなく、休憩を。


 それを見て、僕は戸惑っていた。

 ──まだ、始まったばかりじゃなかったのか?

 たったの三回。ほんの三往復。

 疲れなんて、ほとんどない。体も動くし、息も上がっていない。なのに、もう、休むのか?

 僕の感覚が、何か狂っているのか。

 それとも、彼らのほうが早すぎるのか。その違いさえ、うまく測れなかった。


 けれど、気づけば僕の足は、何も考えずに、自然と川の方へ向かっていた。

 僕だけじゃない。

 まだ多くの参加者が、濡れた水着のまま、無言で川岸へと歩いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ