休憩所へ向かう参加者
橋を渡り、番号を書いた紙を箱の隙間へ入れた。
──これで、三回目だ。
まだまだ行ける。そう思っていた。
でも、その直後だった。
すぐ隣で、同じように紙を入れていた誰かが、何の迷いもなく、ふいに向きを変えた。
足は、川ではなく——休憩所へ向かっていた。
ガラス張りの入り口。その奥には、暖かい光。まるでホテルのロビーのように、柔らかな照明と落ち着いた色調に包まれた空間が広がっている。
橋を渡った直後の流れのまま、当然のように、迷いも見せず、その誰かは休憩所へと吸い込まれていった。
一人だけではなかった。ぽつぽつと、少しずつ。
紙を入れ終えた参加者たちが、川へ戻ることなく、代わりに休憩所のほうへ向かっていく。まるで、それが自然な選択であるかのように。
誰も、止めない。誰も、声を上げない。
疲れているようにも見えなかった。むしろ、表情は平坦で、呼吸も乱れていないようだった。
それでも、彼らはそちらを選んだ。
川ではなく、休憩を。
それを見て、僕は戸惑っていた。
──まだ、始まったばかりじゃなかったのか?
たったの三回。ほんの三往復。
疲れなんて、ほとんどない。体も動くし、息も上がっていない。なのに、もう、休むのか?
僕の感覚が、何か狂っているのか。
それとも、彼らのほうが早すぎるのか。その違いさえ、うまく測れなかった。
けれど、気づけば僕の足は、何も考えずに、自然と川の方へ向かっていた。
僕だけじゃない。
まだ多くの参加者が、濡れた水着のまま、無言で川岸へと歩いている。




