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俗に言う転生ってやつですか?!  作者: luna
第一章:第二王子の婚約者
8/22

07

 長期休みも終わり、今日から学院生活が始まる。

 噂のせいもあり、学院生活もあんまり良い思い出が無い。本音を言うと行きたくない。

 行きたくは無いけど、王立学院を卒業出来ないと貴族として認められない。

 貴族には未練も興味も無いけど、平民になるとリュカ殿下と結婚も出来なくなる。そんな事は耐えられない。

 憂鬱(ゆううつ)なのがもう一つ、長くて美しい髪は貴族女性の証みたいなもので、毎回大変な思いをしながら髪の毛をセットしている。

 本当は専属の侍女がそばで私生活を支えてくれるだけど、(やしき)には使用人は全て男性で女性がひとりも居ない。不満は無い。ただ、不器用な私には毎回同じ髪型をしている。

 ドレッサーの前に座り髪を編み込んでいく、フィッシュボーンと言う髪型。私にできる唯一お洒落な髪型がフィッシュボーン。せっかく長い髪だから色々試したいけど不器用すぎてできない。準備が終わると、リュカ殿下を見送り、私も邸を出る。

「行ってきます」

「いってらっしゃいませ、ステラお嬢様」

 使用人一同に見送られて王立学院へ向かった。


 やっぱり、学院は居心地が悪い。

 ちらちら見て、小声で話しているつもりで居る彼女らは異母妹の取り巻きたち。

「あれ、でしょ」

「妹の婚約者を奪ったて」

「はしたないわ」

「私なら外を歩けないですわ」

 奪っていないし、暴言を吐いて嫁げと上から目線で言われたのですが。その出鱈目(でたらめ)何処から流れたのかな? 言わずともわかるけど。確かめもしないで、噂だけを鵜呑みにすると痛い目に遭うわよ。


 休み明けの理由もあるのか、王家からの婚約の話は、1ヶ月の前に過ぎているのに王立学院ではまだ話題に上がっている。その理由には原因がある。

「お姉様たらひどいですぅ、私には……ひっく、……王家に嫁ぐのは……ひっく……無理だから寄越せ、言われたですぅ」

 ポロポロと涙を流して訴える異母妹のアンジェラ。私はあくまでも被害者で、悪いのは私と訴えているつもりでいる。誰にでも分け隔てなく優しいアンジェラのイメージを壊したくはない。

 三文芝居で騙されるって、大丈夫? って心配になってくる。

「まあ、酷いことで。抗議すればよろしいですわよ」

「良いです。お姉様が幸せなら、私が身をひけば」

「アンジェラ様はお優しいのですね、それに比べて……」

 目線を此方に向けて不快そうに私を見る、異母妹の取り巻きたち。アンジェラの今の顔をご覧なさい。愉快そうに顔が緩んでいるだけど。

 売られた喧嘩は買いましょう。

「申しても良いでしょうか?」

「何か?」

「その話が事実だとして、王家側が頷くと思いで?」

「それは……貴女が――」

「私は他かが伯爵の長女ですよ、身分も随分と下の者の我が儘が、まかり通ると思いで? それとも、貴女は、私の婚約者リュカ殿下なら――」

「そんなこと、思っていませんわ」

 言葉を遮るかのように声を張り上げたのは、異母妹の取り巻きのひとりの令嬢。

「何を、そんなに慌てているのですか? 私は、リュカ殿下なら優しいから許してくれると思ったのですか? って訊ねるつもりだったのですが……何を言われると思ったのですか?」

「それは……用事を思い出しましたわ。失礼致します」

 初日から嫌な思いをした、これからの学院生活に憂鬱(ゆううつ)になった。

 王立学院では、貴族社会の基礎を学んだり、その他にも母国の歴史や文化、近隣諸国の言語などさまざまなことを学ぶ。

 学ぶことは苦では無いけど、順位は中の下の下あたりをキープしている。それも何も異母妹より順位が上にだと「私よりも上なんて生意気よ」って理不尽に当たり散らし癇癪(かんしゃく)を起こして手のつけようが無い。多く点数を取らない様に計算しながらテストを受けていたな……遠い目をする。過去の私が。

 カメロン伯爵家を出たから態々(わざわざ)順位を下にキープする必死もなく、勉強のやる気も出てきて、私の最後の学院生活が始まった。

 思ったよりも充実した学院生活をおくっている………ぼち生活を。


 学院が休みの日は相変わらず騎士団の練武場に通っている。

「学園は楽しか?」

 と、レーヴェレンツ様が聞くので、私はありのままの気持ちを伝える。

「楽しいですよ」

「おお、友達もできたのか」

「いやですね、お友達はいませんわ。ぼっち生活を過ごせています」

「ぼっち……?」

「一人ぼっちのぼっち(・・・)です」

「あはは、楽しいならいい」

 リュカ殿下にも同じ質問をされ、同じように答えたら同じ反応をされた。

 お友達が出来たらもっと楽しくなると思うけど、学院生活は水槽と同じで、そのちっぽけの世界で、孤独にならないように、取り残されないように、必死に(もがき)足掻(あが)いて悩んだって(おのれ)が苦しくなるだけ。折りが合わないと思えば楽になるし、無理に取り巻く必要はないと私は思う。

「初めは努力はしたのです。お茶会とか、お友達とすることが夢でしたもので」

 此れも、リュカ殿下に話したこと。


 貴族女性は定期的にお茶会を開いて、社会情報を得るのも仕事でしょ? その為には、友達がいなければお茶会も開けないし、呼ばれることもない。このままじゃ不味いと思って、友達をつくる努力はしたの、ひとりもできなかったけど、残念ながら。


 学院の勉強も他にも、アシュリお義母様から淑女として嗜みと王子妃として必要な知識を学んでいる。絶対に必要になるからと云われて。

 初めの頃は、貴族女性の最低限のマナーの一つでもあるカーテシーさえも真面(まとも)に出来なかった。ほら、良くある転生のチートな特権みたいなやつ。私には何故、それが無いの? やっぱり、人生はそんなに甘く無いのね。

 カーテシーって意外にも難しいの。頷くまでに何度失敗した事か。今は、アシュリお義母様も頷くまでに完璧にマスターはしたけど、本当に大変だった。カーテシーだけでは無い。歩く姿とか、立ち姿とか、貴族女性って本当に大変。生きづらい。

 一番苦労したのは社交ダンス。リズム感も無く、運動音痴も相まってか、自分の足に絡まって転けることもしばしば。今も完璧とは言えないけど、リュカ殿下が後はカバーしてくれるから大丈夫だとも云われた。たぶん、半分は諦めモード。

 欠かさず今もダンスは練習をしている。

 明日はいよいよ学院のテストの日。

「リュカ殿下」

「なんだ?」

「今回のテストで1位になったらご褒美をください」

「……」

「……駄目ですか?」

「構わないが、何をお願いするんだ?」

「今は秘密です!」


  ✳︎ ✳︎


「リュカ殿下」

「なんだ?」

「今回のテストで1位になったらご褒美をください」

「………」

「………駄目ですか?」

 意図的では無いと思うが、瞳を(うるお)し尋ねてきたステラ嬢。

「構わないが、何をお願いするんだ?」

「今は秘密です!」

 お願い事なら叶えてもいい、軽い気持ちで承知をした。どんな願い事を頼むのか、聞いてみたが今は秘密らしい。頑張っていた事を知っていたし、ご褒美の一つや二つくらい言われなくてもするつもりだったが……何を願いだろうか。

 そして、テストの結果が発表される日。

「聞いたか?」

「何をだ?」

「ステラ嬢のことだ」

 今回難しかったのも関わらず一人だけ満点を取ったと騒ぎを聞いた。喜んでいる姿が目に浮かぶ。

「嬉しそうだな」

「………そうか?」

 友人のルークに云われて気づいた。口元が緩んでいることに。

 今か、今か、待っているだあろステラ嬢の為に、今日は早めに帰宅することにした。


 子犬のように駆け寄るステラ嬢。

「リュカ殿下! お帰りなさい」

「ただいま」

「聞きましたか!」

「ああ、1位になったらしいな」

「はい! ………覚えていますか?」

「ああ」

 ステラ嬢の瞳がキラキラと輝くのを見て、頬が緩む。

 ステラ嬢からの初めてのおねだり。何を言われるか内心、心臓が早く脈を打つのを感じながら彼女の言葉を待っていた。


「なんでも良いぞ」

「――抱いてください!」

 ………ん?

 今、なんと言った?

 聞き間違えかな? 聞き間違えだよな?

「! ま、まままま、間違えましたああぁぁあ!! 本音が出ただけです!!」

 茹蛸(ゆでだこ)のように真っ赤な顔に染り、涙目になっている。

「お姫様抱っこしてください」

 と、小さな声で告げられた。

 立前と本音が同時に聞こえたが、聞かなかったことして、ステラ嬢の可愛らしいお願い事の、お姫様抱っこをした。お姫様抱っこで、このまで喜ぶ令嬢はステラ嬢だけだと俺は思う。

「えへへ、幸せです!」


  ✳︎ ✳︎


 其れは、テストの二週間前まで遡る。

『ステラちゃん』

「はい」

『ステラちゃんが邸宅(ここ)に来てどのくらい経ったかしら?』

「3ヶ月くらい、でしょうか?」

『そんなに経つのね。あ! そうだわ』

 パーンと、何か良い案を閃いたかのように両手で重ねた。

『リュカとステラちゃんデートまだよね』

 アシュリお義母様は楽しそうに笑う。

『リュカも何をしているのかしら、もう』

 次は、プンプンと怒りだす。

『テストを頑張ったご褒美が欲しいって言いなさい』

「……え? テストは頑張るのは当たり前ではないでしょうか……」

『堅苦しいことは言わないの、ステラちゃん! 理由はなんだって良いのよ』

 そうと決まれば早速おねだりをして来なさいと、背中を押されたのが始まりだった。

 リュカのお母様の思惑は外れて、ステラがお願いをしたのは「お姫様抱っこをしてください」だった時は『そこは、デートでしょう! ふたりでお出かけ』と、叫んだ。


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