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ステラは、厨房で鍋とヘラを準備すると、鍋に搾りたての牛乳を鍋に注ぐと火をかけた。ベラでゆっくり掻き混ぜながら白い何かを作っているのを見て、リクは疑問に思い聞いた。
『何を作っているだ?』
「クリームチーズよ。酒粕を使ったチーズケーキを作ろうと思ってね」
中火で沸騰寸前まで加熱すると、火を止めてレモン汁を加えて十回ほどゆっくりと混ぜると、水分とボコボコした塊が出来たら、5分くらい放置して置く。
『何で? 放置するんだ?』
「詳しい理由はわからない」
『わからないのかよ』
「そんな事を言われても知らないわ」
網目の細かいザルに開け水分を切り、キッチンペーパーをかぶせ、重石を置き、30分程水切りする。そして、塩を加えて滑らかになる混ぜて纏める。
「これで完成よ」
『美味そうにみえねえぜ』
「失礼ね、ほら、食べてみて」
ステラは、クラッカーにクリームチーズを乗せると、リクに渡す。リクは恐る恐ると一口食べた。
『おー、うまいな!』
「でしょ? 相性が良いのよ。クリームチーズとクラッカーは」
パクパクと食べ進めるあたりお気に召した様子。
『リクだけ、ずるい』
「フゥーもどうぞ」
『わーい!』
『わたしも欲しいわ』
「スーもどうぞ」
この展開、前にもあった気がするのは気のせいかな。
『俺様もいるぜ』
『私にも食べさせのは当然よね』
レンに、ララ様。
『私も食べたいです』
『ぼくも』
ハクに、ジンまでも来た。
何となく予想はついたけど、ここまでクリームチーズとクラッカーの組み合わせが人気になるなんて思わなかった。折角、チーズケーキを作る為にクリームチーズも手作りをしたのに、クリームチーズが殆ど残っていない。この量では、チーズケーキは作ることは出来ないので、ステラは諦める事にした。
チーズケーキは諦めて、クラッカーをお皿に乗せて、クリームチーズを小皿に入れてリュカ様とティータイムを楽しもうとステラは考え直した。
ステラは、天気が良いからと御庭でティータイムをしましょうとリュカを誘った。
ステラが作ったクリームチーズの他に、シェフがスコーンやカップケーキも用意しており、楽しい一時を過ごす。
「クリームチーズは私のお手製なのです」
「これを、ステラが作ったのか?」
「はい」
「チーズケーキを作るつもりだったのに」
「妖精たちに食べられたと」
「そうなんです!」
「美味しかっただろうな。分かる気がするよ」
リュカ様は、クラッカーを取りクリームチーズをクラッカーに乗せて一口食べた。
「ステラが作るものは美味しいからな」
「喜んで貰えたなら光栄です。――リュカ様を思って作りましたので」
リュカ様に食べて欲しくて、クリームチーズを自家製にして、酒粕を使ったチーズケーキを作りたかった。酒屋に行ったときに、酒粕を捨てようとしていたのを買い取って、大人のチーズケーキを一緒に食べたかった。作れなかったのは残念だけど、妖精たちも、リュカ様も喜んでくれたし結果的に良かった。
リュカ様が忙しい方だから、またにしかゆっくりとティータイムは出来ないけど、こうして時間を割ってくれる事が私は嬉しく思っている。
『こいつも、ステラのことわかっているじゃねえか!』
リュカ様の目の前でリクは、やっぱり上から目線で云う。
「妖精がいるのか?」
「お口が悪い妖精がいます」
「妖精にもいろんな性格がいるからな」
「リュカ様は、私のことを分かっていると褒めていますわ」
『褒めてねえし』
「あら、そうなの? てっきり、リュカ様を褒めているのかと思ったわ」
『思ったことを言ったまでだ!』
ちょっと、この子、もしかして――。
「リクってツンデレ!?」
『それ、美味しいのか?』
「好きな方には、萌えるわ。私も好きなタイプよ。人前ではツンツンしてそっけないのに、ふたりきりのときはデレるなんて! 最高に可愛いわ。興奮しちゃう。甘えられたりなんかしたら! ……たまらなく抱きたくなちゃうわ」
『何の話だよ』
「ツンデレの話よ」
『わかんねえ』
リクは興味を無くして何処かへ飛んで消えていた。
✳︎ ✳︎
ステラからは時々、聞いたことない単語が出てくる時がある。今もそうだが。つんでれとは何だ? 疑問に思っているとステラから説明が入る。
人前でつんつんしてそっけない。ふたりきりのときは、でれとしている。……なんとなくだが、イメージはできたが何が燃えるだ? そもそも、燃えるであっているのかも微妙だな。
「もえるとは何だ?」
「キュンと、する例えです」
「ステラは変わった言葉を使うときがあるな」
異国の言葉なのか、聞いたことのない言葉が時折出てくる。
「……信じられないかも知れないですが、前世? って言うのでしょうか。私じゃないもう一人の私の記憶が存在するです」
「前世の記憶?」
「はい」
「どんな記憶だ?」
「前世の私は、詠月星と言います」
ステラは使用人に紙と筆を持って来てもらい、漢字で前世の名前を書く。
「――と言う国で、高校を卒業したばっかり女子です」
「こうこう?」
「今、私が通っている王立学園と同じです。習っている範囲は違いますが学舎ですね。……文明も発展しています。飛行機と言って、鉄の塊が数百人の人間を乗せて空を飛び簡単に国外へ旅行にも行けます」
ステラは、今度は飛行機の絵を描いて説明をする。その時に海や陸も含めて、日本や外国の地球地図を描き説明し、ここが日本で飛行機で海を飛び国外へ渡ることが出来ますと絵で説明していく。
「一般的に車や電車や新幹線が基本的な交通です」
ステラは同じように車や電車や新幹線の絵を描く。このよう感じの鉄の塊が地上を走ってます。と、絵が上手いからか解り易い。
「新幹線は時速250ー300キロくらいで走るので目的地まで時短で行けることも出来ます」
「想像がつかないな」
「テレビやiPhoneといったもので、簡単に世界中の情報を見たり聴いたり出来ました。掌くらいのサイズのiPhoneは、遠く離れた人と会話をすることもできるです」
またしても、絵で説明をする。こんな感じで遠くにいる人と会話が出来るですと。……絵が上手すぎないか。
「それは凄くな」
「簡単に美味しいものお腹いっぱい食べられるし、綺麗な水だって簡単に手に入れられます。毎日に暖かいお風呂にも入れるし、風邪をひけば直ぐに病院にも行けます」
ステラが話す内容は何れも夢のような内容だった。
鉄の塊が空を飛ぶのも想像も付かないが、他国の情報が簡単に手に入るのは危険ではないのか、弱みに漬け込まれないのか心配になる。
当たり前の生活を送っていた。記憶を取り戻した初頭は戸惑いもあった。
私の知っている世界は身分制は存在しないし、淑女とか言われてもピーンと来ないし、女性は男性の一歩後ろを歩き、男性の言うことを聞くものだと言われても理解できない。
小説のように簡単に受け入れられなかったし、転生や憑依したヒロインに出てくる小説にように貴族令嬢のように綺麗な言葉遣いなんて出来るわけもない。どんなチートよ、思ったくらいよ。実際は無理でしょ! 私には無理だった。今でもできている自信は一ミリも無い。
「身分制は存在しません。―― 全ての国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない。……私が生きていた国、いいえ、時代はそう言う世界でした」
リュカ様は、黙って相打ちをうち耳を傾ける。
「変わった令嬢と思ってはいたが、そう言う事情があっただな」
「信じてくれるの?」
「君が嘘をつくような女性ではない事は知っているからな」
「リュカ様が認めるような淑女になるは私には無理よ」
「……だろな」
リュカ様は何故か遠い目をした。
「俺やあいつらの前では、今のステラのままでいい。そこがステラの良さだと俺は思っている」
「いいの?」
「無理に淑女の真似事をしなくても、ステラの良さを解かるやつは解るからな。――話してくれてありがとう」
「どういたしまして――?」
で、良いのかな。
♢♦︎♢
【 クリームチーズ 】
材料
牛乳(脂肪75%以上)――500g
レモン汁――大さじ1
塩――ひとつまみ
作り方
01―― 鍋に牛乳を入れ中火弱で、沸騰直前まで加熱する。
02―― 火を止め、レモン汁を加えて、ゆっくり10回ほど混ぜる。
03――水分とボコボコした塊が出来たら、5分置く。
04―― 網目の細かいザルに開け水分を切り、キッチンペーパーをかぶせ重石をおき30分水切りする。
この時、しっかりとホエーを切る。
05―― 塩を加え滑らかになるまで混ぜる。




