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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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第77話:再編される戦局、集う戦力

 王都近郊の森林地帯――

 鬱蒼とした木々の間を抜けると、徐々に視界が開け、簡素な木製の柵と大小さまざまなテントが連なる防衛拠点が姿を現した。

 まだ建設途中と見える場所も多いが、辺りにはぴんと張り詰めた空気が流れている。

 ここが、ただの避難所ではないことは一目で分かった。


 「……ここがロビンの拠点か」


 ユリウスが足を止め、木の門に目を向ける。

 入口には槍を構えた衛兵が二人、厳しい表情で立っていた。


 「紅蓮の盾、団長ユリウスだ。ロビンに至急取り次いでもらいたい」


 名を告げると、衛兵たちは驚きに目を見開いたが、すぐに敬礼し、小走りで中へと駆けていった。

 彼らが去った後の沈黙の中、リクたちの背筋が自然と伸びる。


* * *


 数分と経たぬうちに、足音が響き、女性騎士が姿を現した。


 銀灰色の長髪を左右で高めの位置に結んだ、特徴的なツインテール。

 髪留めには、戦場でも邪魔にならぬよう造られた装飾を抑えた金属製の留め具が使われており、騎士としての実用性を備えている。

 白銀の鎧を纏い、洗練された動きの中に静かな気迫を漂わせる彼女の眼差しは、鋭く、わずかな言葉にも威厳が宿っていた。


 「ご足労いただき、感謝いたします――いえ、お帰りなさいませ、ユリウス団長」


 彼女の名は”なん”。

 白銀の矢副団長にして、ロビンの右腕と称される精鋭の騎士である。


 「……”なん”か。無事でよかった」


 「はい。ロビン団長が本部にてお待ちです。皆さま、どうぞこちらへ」


 なんの先導で、リクたちは拠点の中へと足を踏み入れた。

 テントの合間を縫うように進む一行に、周囲の兵士たちの視線が集まる。

 警戒と同時に、彼らの中に宿る“何かにすがりたい”というような祈りが、その目に滲んでいた。


 「この拠点には、白銀の矢を中心に、紅蓮の盾の一部、蒼天の剣の生き残り、王都から逃れてきた冒険者たち、そして志願してきた義勇兵が共に戦っています。……皆、王都を見捨てていません」


 なんの言葉には、誇りと希望の両方が込められていた。

 リクたちも静かに頷く。


 やがて彼らは、拠点の中心――ひときわ大きな天幕の前へと辿り着く。

 その中には、長身で凛とした気配を放つ人物が立っていた。


 銀と白を基調とした騎士服に身を包み、鋼のようなまなざしと整った容姿。

 毅然としたその立ち姿は、誰の目にも迷いがなかった。


 それが、白銀の矢の団長、ロビン。

 この戦乱の中でなお冷静さを保つ、類まれなる指揮官であり、戦士だった。


 「……ユリウス。よく戻ってきてくれたな」


 ロビンの声は澄んで低く、だが芯に確かな強さを感じさせた。


 「陛下の命で動いていた。だが、嫉妬の魔人は討ち、ようやく戻れた」


 「その報は聞いている。命じられた役目を果たしたのなら、それは何よりだ」


 ロビンは視線を、ユリウスの後ろに立つリクたちへと向けた。


 「そちらの方々は?」


 「紹介しよう。リク、エリナ、ライアン、リセル――嫉妬の魔人の討伐だけではない。こいつらは、傲慢、そして王都で色欲の魔人も倒してきた」


 一瞬、ロビンの瞳が鋭く細まった。


 「……王都で色欲が討たれたという報は届いていたが……まさか、君たちが」


 「はい。ゼインさんの援護を受けながら、僕たちで仕留めました」


 リクの口調は控えめだったが、揺るぎない事実がそこにあった。

 ロビンはしばし沈黙し、静かに息を吐いた。


 「……そうか。ゼインが君たちを選んだのなら、疑う余地はないな」


 ゼインの死、王都の喪失、そして残された可能性。

 ロビンの中で、その全てが一瞬で整理されたようだった。


 「なるほど。であれば――話が変わる」


 天幕の空気が変わる。

 それは指揮官の脳内で新たな戦略が生まれた合図だった。


 「本来は、少ない兵力を保持し、長期的な持久戦で王都奪還の機会を待つ方針だった。だが……王都には未だ逃げ遅れた市民がいる。女王陛下の行方も不明だ。悠長な戦は許されない」


 リクたちは無言で耳を傾ける。


 「だが、君たちがいるなら……状況は変わる。奇襲、突破、そして速攻――作戦を再構築する価値がある」


 静かながらも確かな確信と共に、ロビンは言い切った。


 「王都奪還に向けて――戦力を再編しよう」


 その言葉に、天幕の中にいた誰もが背筋を伸ばした。

 戦局は、いま――動き出す。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

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