幕間【PENPENZ】4:きのこにウンは禁物
* * *
火山の爆発から命からがら逃げ出した五羽のペンギン――PENPENZ。
森の中に入ってからも、しばらくは息も絶え絶えだった。
「はあ、はあ……なんとか逃げ切れたかな」
「煙も見えなくなったし、火の気もない」
「無事、生きてる……奇跡だね」
全員がバタリと地面にへたり込み、ようやく一息ついたその時だった。
「……あっ……」
花子がぴくりと体をこわばらせる。
「どうした?」
「お腹でも痛いの?」
「……トイレ行きたくなってきた」
沈黙が流れる。
「このタイミングで?」
「さっき火山の中にいた時は平気だったじゃないか?」
「違うの! 緊張で止まってただけで、今ゆるんだら限界きたの!」
花子は慌てて立ち上がり、周囲をきょろきょろと見渡す。
「……あそこ、木陰になってて大きなキノコが生えてる。ちょっと拝借してくるね」
「気をつけてねー!」
小走りでその大きなキノコの陰に隠れた花子。
キノコの根元にしゃがみこみ、慎重に体勢を整えた――その時。
「おい!」
「……え?」
花子の耳に、低くはっきりとした声が響いた。
「……誰?」
周囲を見渡すが、誰もいない。
「気のせいかな……トイレの幻聴……?」
再び体勢を整え、気合いを入れてしゃがんだ――その瞬間。
「おい!!」
「ひゃあああッ!?」
声はさっきよりも明らかに強く、怒っていた。
花子は思わず後ろに転がり、尻餅をつく。
その瞬間、目の前の巨大なキノコの傘が微かに揺れ、その根元から――
人間の顔が、土の中からニョキリと見えた。
「俺が埋まってるところにうんこするな!」
「ひいぃぃぃッ!? なに!? 誰!?」
花子は地面を這いながら後退し、震えながら叫ぶ。
「……俺は、キノコバードだ」
「き、キノコ……バード!?」
「そう。きのこになりたい男だ。将来的には鳥のようにも飛びたい」
「なんでそんなところに埋まってるの?」
「きのこの気持ちを理解するためだ。あと、ここ落ち着くんだよな……風通しも悪いし……」
「近寄らないでーーーッ!!」
恐怖と混乱のあまり、花子は半泣きになりながら兄弟たちのもとへ一直線に逃げ帰った。
* * *
「で、で! そのキノコから顔がニョキって出て、人間がしゃべって……!」
花子は早口でまくし立てる。
「落ち着けって!」
「意味がわからなさすぎる……」
「幻覚じゃないの?」
「違う! 本当にいたんだって!」
「で、その人……何者?」
「名前は……キノコバードって言ってた。きのこになりたいって」
「鳥にもなりたいってことは……飛ぶの?」
「ううん……わからない、意味わかんなかった……」
「で、結局……トイレはどうしたの?」
「……あっ」
花子の表情が凍りつく。
「……あああッ!!」
ぶしゅうっ!!!
「きゃあああああ!!」
「来るなー!!」
「くさいっ!! 空気がやばい!!」
「早く水! 水ぅぅ!!」
「これは……災害認定……!」
森の静寂を破って、PENPENZの悲鳴が木々の間に響き渡った。
* * *
涙と臭気の一件を乗り越えたPENPENZ。
彼らは知らず知らずのうちに王都に近づいていく……また一波乱ありそうな予感。
次回をお楽しみに!
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