幕間【PENPENZ】3:サンプール
テルマ村――村外れのぬかるんだ平地に、五羽のペンギンたちが集まっていた。
「よーし! 今日は“水遁の術”を習得するぞ!」
太郎の掛け声に、次郎、花子、三郎、良子がそれぞれ真剣な顔つきで頷く。
「水遁って名前だけで、なんかカッコいいよね」
「水たまりで特訓とか、風情があるじゃない」
「今日こそスーパー忍者ペンギンに一歩近づけそう!」
すぐそばには、温泉から流れ出したと思われる、ぬるめの水たまりが広がっていた。
だが――その時だった。
ドオオォォン!!
「ひゃあッ!?」
突然、村の南から轟音が響き渡り、地面がぐらりと揺れる。
「な、なにこれ……!」
「地面が……揺れてるよ!」
バランスを崩し、三郎がしりもちをつく。
続けて――
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
空を見上げた良子の目に、赤黒い炎が噴き上がるのが映った。
「火山が……噴火してる!」
緑色の水たまりからも、ぼこぼこと泡が上がり始める。
「これ……やばいやつじゃない?」
「水遁の術どころじゃないよ! 一旦撤収しよう!」
太郎の指示に、全員が頷いたその瞬間――
「どいてどいてどいてどいてえぇぇーーッ!!」
ズガアアァンッ!!
突如、遠方から凄まじい勢いで現れたのは―― 豚のBGだった。
「あ、BGじゃ――」
言い終える間もなく、
ドゴォッ!!
「うぎゃあああああッ!?」
「花子が空飛んだ!」
「三郎が回転してる!」
BGは五羽をまとめて跳ね飛ばし、そのまま突き抜けていった。
「ど、どこへ行く気なの!?」
吹き飛ばされた花子と三郎は、緑色に変色した池の縁へと転がる。
「やばい……落ちる……」
「が、がんばれ自分……この羽で耐えるんだ……!」
だが、その時だった。
ドボォン!
真上から、火山の噴石が池に落ち、大量の熱水が跳ね上がった。
ビチャッ!
「うぎゃっ!? あっちぃぃぃぃぃ!!」
次郎の羽に一滴、跳ねた水が当たる。
ジューッ……という音と共に、白煙が上がった。
「なにこれ!? ただの水じゃない……これ、酸性!?」
「この池……サンプールじゃない!? 酸のプールってこと!?」
「訓練に適した池じゃなかったの!? 騙されたーー!!」
「もう無理! ここにいたら死ぬ!!」 「撤退! 全力で撤退だ!!」
パニックの中、PENPENZは誰ともなく全力で駆け出した。
「テルマ村、しばらくバイバイだぁぁ!!」
火山の噴煙が上がる夜空の下――
五羽の小さな忍者候補生たちは、命からがら村を離れていった。
そして、彼らが去ったその場所では、緑の池が、今なおぼこぼこと泡立ち続けていた。
* * *
「読んでくださって本当にありがとうございます。
ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」




