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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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幕間【PENPENZ】2:震える

 テルマ村――外れの人気のない岩場。


 そこに、五羽のペンギンたちがいた。


 兄弟チーム「PENPENZ」。


 太郎、次郎、花子、三郎、良子。

 それぞれがボロボロのマントや頭に布を巻き、妙にそれっぽい忍者装束に身を包んでいる。


 「今日も修行だ!」


 「目指すはスーパー忍者!」


 「影を制して、火を斬る!」


 「隠密、暗殺、スッポ抜け禁止!」


 「忍びの道は一日にしてならず、だよ!」


 みな意気込みは十分。

 手製の巻物や、拾った棒きれを武器に、それぞれ気合を入れていた。


 そんな中――


 「ククク……何をやってるデスか?」


 にゅっと顔を出したのは、光沢のある緑の頭に茶色い羽毛を持つ鴨、Caroyanだった。

 のそのそと岩場を歩きながら、口角を吊り上げて笑っている。


 「へなちょこペンギンたちが……忍者? 修行? ぷっ、笑わせるデス!」


 羽根を広げ、パチパチとバカにしたような拍手まで送る。


 「な、なにぃ!!」


 「バカにすんな!」


 太郎と次郎が同時に前に飛び出した。


 「俺たちはな、本物の忍者になるために、日々修練を積んでるんだ!」


 「そ、そうだぞ! 今日は隠れ身の術と影縫いの術をマスターする予定なんだからな!」


 しかしCaroyanは、ふん、と鼻を鳴らすだけだった。


 「クルクルまわるだけで隠れた気になってるお前たちに……できるわけないデス!」


 「ぐ……!」


 「い、今に見てろよ!」


 花子が小さな体をふるわせて叫ぶ。


 「ボクたち、絶対に最強の忍者になって、あんたを見返してやるんだから!」


 「見てろよ!」


 三郎も良子も一緒になって睨み返す。


 だがCaroyanは、からかうのをやめなかった。


 「最強? ペンギンの分際で? 飛べもしないくせに? 影の戦士? おとぎ話もたいがいにするデス!」


 「くっそー!!」


 ついに、太郎が怒りで顔を真っ赤にした。


 「いっぺん黙らせてやる!」


 手に持った棍棒を勢いよく振り上げた――

 その瞬間。


 「うわっ!?」


 棍棒がすっぽ抜け、空高く飛んでいった。


* * *


 「と、とんでった!」


 「どこいった!?」


 「バカ! 振りすぎだって言っただろ!」


 ペンギンたちは空を仰ぎ、わたわたと右往左往する。


 そんなとき――


 ズゴッ!!


 湯気の向こう、遠くで鈍い音が響いた。


 「……え?」


 きょとんと首をかしげる五羽。


 次の瞬間、彼らの目に飛び込んできたのは――

 棍棒が顔面をかすめた地雷嫌が動きを止め、エリナが放った燃え盛る鎖に捕らわれ、そのまま灰となって崩れ落ちる光景だった。


 「……」


 「……」


 「……や、やっちゃった?」


 しばらく固まった後。


 「これはマズいデスーーーッ!!」


 誰よりも早く、Caroyanが叫びながら走り去っていった。


* * *


 「ど、どうする!? 絶対ヤバい!!」


 「に、逃げる? 隠れる? 水に潜る?」


 三郎と良子が半泣きになりながら騒ぐ。


 太郎は必死に考えた。


 「ま、待て……俺たち、当てたわけじゃない!」


 「かすっただけだ!」


 「倒したのは、あの金髪の女の子だ!」


 「……そ、そうだ!」


 次郎も必死に便乗する。


 「だから、俺たちのせいじゃない!」


 「悪くない!」


 満場一致で決定。


 「よ、よし……今のことは、なかったことにしよう!」


 「知らない!」


 「聞いてない!」


 「見てない!」


 わちゃわちゃと互いに確認しあった末、五羽のペンギンたちは、煙のごとくその場から逃げ出していった。


 こうして――

 何も知らないふりを決め込んだPENPENZ兄弟の"黒歴史"が、またひとつ積み上がったのだった。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

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