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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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第56話:灰煙の中で交わる剣

 火山灰が渦巻く断崖。

 大地は赤熱し、時折、割れ目から吹き上がる熱風が白い煙とともに噴き出していた。

 耳の奥では、ゴウゴウと風が唸り、肌を刺す硫黄の匂いが纏わりつく。

 そんな不毛の大地で、二人の剣士が鋼を打ち合わせていた。


 ライアンの大剣が唸りを上げて横一文字に振り抜かれる。

 巨躯に似合わぬ速さで繰り出された一撃は、重さと鋭さを兼ね備えた必殺の斬撃。

 しかし――momonosukeは土煙を巻き上げるほど低く身を沈め、刃先を紙一重で躱すと、大太刀を大蛇のようにしならせて横薙ぎに振るった。


 「ぐっ!」


 空気を裂く重圧。

 ライアンは咄嗟に剣を立てて受け止めたが、両腕に凄まじい衝撃が走った。

 骨が軋み、肩が抜けそうになる。

 まるで大地そのものが襲いかかってきたかのような、圧倒的な一撃だった。


 「……まだだ!」


 踏み込んだ足が、ずぶずぶと火山灰に沈む。

 靴底が焼けるほどの熱を感じながらも、ライアンは怯まず、大剣を振り抜いた。


 「うおおおッ!!」


 怒声と共に繰り出された斬撃は鋭く、灰を払い飛ばして光の弧を描く。

 だが、momonosukeは一歩退き、さらに身を沈めてかわすと、逆に懐へと踏み込み、鋭い目を光らせた。


 「良い斬撃だ。だが、まだ甘い!」


 唸りを上げて振り下ろされる大太刀。

 受け止めた瞬間、大地を叩き割るような衝撃がライアンの剣にのしかかる。

 巨体の彼ですら押し負け、膝が地に沈み込んだ。


 「……クソッ!」


 呻きながらも必死に剣を支える。

 周囲では火山灰が爆ぜるように舞い上がり、熱風が二人の髪と外套を翻す。

 その只中でmomonosukeは低く、しかし確信に満ちた声で告げた。


 「覚悟が違う。俺は、すべてを背負ってここに立ってるんだ」


 「覚悟……だと?」


 ライアンは汗に濡れた額を振り払い、肩で息をしながら睨み返す。


 「だったら教えてやるよ」


 momonosukeの声音が低く沈み、炎と灰のざわめきに重なるように響く。


 「生まれてすぐに売られた。肌の色が違うってだけで奴隷にされ、物のように扱われた。踏まれ、焼かれ、笑われて……助けようとする者は一人もいなかった」


 ライアンの拳が、ぎり、と震えた。


 「俺を売った女は、金貨一枚と酒樽一本で取引を終えた後、笑ってたよ。その後も同じように子供たちを売り続けた。……誰も止めなかった」


 風が唸りを増し、黒い灰が雨のように降り注ぐ。

 視界がかすみ、二人の姿を覆う。


 「生き延びたくて、何度も手を伸ばした。でも、その手を握ってくれる奴は一人もいなかった。……だから、救いなんて信じない。信じるに値しない世界ごと、叩き潰してやる」


 その言葉は、鋼よりも重い絶望を帯びていた。

 ライアンは歯を食いしばり、叫んだ。


 「……そんなことのために、今を生きる人たちまで巻き込むのかよ!」


 「巻き込むんじゃねぇ!」


 momonosukeの目が炎のように燃える。


 「奴らも、あの時見て見ぬふりをした連中と同じだ。世界中が同罪だ。だから……全部、焼き払う!」


 次の瞬間、momonosukeが猛然と飛び込んだ。


 「うおおおッ!!」


 火山灰を蹴散らし、大太刀を振り下ろす。


 ライアンは剣で受け止める。

 だが押し込まれ、足がめり込み、石が砕ける。


 「ぐっ……!」


 鋼と鋼がぶつかり合い、断崖に轟音が響き渡る。


 「……俺は、誰にも期待してない!」


 momonosukeの怒声が熱風を裂く。


 「だから後悔もしねぇ。たとえ死んでも、俺たちみたいな存在を生んだことを人間たちに悔いさせる。止められなかった後悔とともに、永遠に刻みつけてやる!」


 火花が四散し、二人の身体が灰にまみれる。

 瞳に宿るのは、それぞれの生きざまの結晶。


 「そんなの……!」


 ライアンは震える腕に力を込め、吠えた。


 「そんなの……あんた自身が、自分を見捨ててるだけだろ!!」


 「……何だと?」


 momonosukeの目に、一瞬だけ揺らぎが走った。


 ライアンは荒い息の中で言葉を叩きつける。


 「俺はお前を否定しねぇ……。でも、今ここにいる俺たちを、未来を、絶望に巻き込むことは……絶対に許さない!!」


 灰煙の中で、ライアンが全力で振りかぶる。

 その一撃に、怒りも、悲しみも、未来への祈りも――すべてを込めて。


 閃光のように鋼が走る。

 断崖の上、爆ぜる灰の嵐の中で、二人の戦いはなお続いていった。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

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