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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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第50話:裏十三夜、胎動

 森の中に集った黒装束の影。

 タケダ、くらしょう、地雷嫌、momonosuke――そして、戦装束に身を包んだ芳坊が、焚き火の光の中に並び立つ。


 リクたちは目を疑った。


 「あの不審者たちと……どうして芳坊さんが一緒に……?」


 エリナが困惑と恐怖の入り混じった声でつぶやく。


 「まさか……裏切ってたのか……?」


 ライアンが剣の柄に手をかけた。


 「「「・・・・」」」


 「クク……もう正体を隠す時期でもないだろ、芳坊さんよ」


 くらしょうがニヤリと笑う。


 「計画は仕上げ目前。今さら取り繕う必要なんてねぇ。裏十三夜の“影首”がここまで村に溶け込んでたなんてな……ご苦労なこった」


 その言葉に、一瞬、空気が凍りつく。


 「裏十三夜……?」


 リクたちはその名に聞き覚えがなかった。


 だが、続く言葉がすべてを覆す。


 「お前たち、俺たちが村に張った仕掛けの意味、ようやく気づいたんだろ?」


 momonosukeが静かに口を開く。


 「でも、もう遅い」


 「結界は完成に近い。村人たちの“嫉妬と疑念”を媒介にして――魔人はこの地に肉体を得る」


 地雷嫌の声は淡々としていた。


 「止めたきゃ止めてみろ。もうカウントダウンは始まってんだよ」


 くらしょうが挑発するように言う。


 リセルが一歩踏み出す。


 「芳坊……どうして……。この村を大切にしてくれてたんじゃなかったの……?」


 芳坊はゆっくりと目を開けた。


 「リセル……私はこの村に根を下ろして生きてきた。だからこそ、この村を“器”に選んだのだ」


 「そんな……っ」


 「バレてしまっては仕方がない。人知れず実行したかったが」


 芳坊の声には感情の起伏はなかった。


 「芳坊さん! まだやり直せる! このままじゃ村が……!」


 リクが叫ぶ。


 「もう遅い。仕掛けの起動まで、残された時間はわずかだ」


 芳坊は淡々と告げる。


 「結界が完成すれば、村全体が“嫉妬”に覆われる。そして――魔人が、この地に現れる」


 「くそっ……もう始める気か!」


 ユリウスが即座に剣を抜いた。


 「止めろ! お前たちのやろうとしていることは――!」


 「行くぞ、お前たち。悲願達成の幕を開ける時だ」


 芳坊の一言と共に、タケダが前に出る。


 「構わずいくぞ。仕掛けを起動させるのが先だ」


 「おうよ!」


 くらしょうが印を組むと、濃霧が場を覆い始めた。

 地雷嫌は札を撒き、魔力の痕跡を遮断する。


 「待て、逃がすな!」


 リクが叫ぶが、霧の中で敵影は四方に散っていた。


 「リセル!」


 リクの声を背に、リセルは怒りと悲しみに突き動かされるまま、ひとり駆け出す。


 「リセルを一人にさせるわけにはいかない……!」


 エリナもすぐに後を追った。


 「あいつは俺が行く。でかい武器だ、他の奴じゃ相性が悪い」


 ライアンは短く言い残し、momonosukeの姿を追って走り出す。


 「お前たちは村の警護にまわれ! 俺は侍を追う!」


 ユリウスが部下たちに短く指示を出し、刀を抜いて駆けていく。


 リクは最後に残り、焚き火の向こうに立つ芳坊を見据えた。

 そして、ゆっくりと剣を構える。


 「……芳坊さん。止まるつもりは、本当にないんですか?」


 「もう止まれぬ。私は、この村の破滅の先にこそ“救い”があると信じている」


 「救いなんて、誰も望んでない!」


 リクの斬撃が閃き、芳坊の錫杖と正面から激突した。

 ギィィンッ! と金属が擦れ合う甲高い音が夜気を裂き、火花が四散する。


 その瞬間――村を揺るがす決戦の火蓋が、ついに切って落とされた。


* * *


 ――南の断崖付近:momonosuke vs ライアン

 霧の中から現れた大柄な影に、ライアンは迷いなく剣を振るう。

 鋭い一閃が風を裂き、前を走っていた敵の背を狙う。


 巨大な大太刀が、まるで音もなくその攻撃を受け流した。


 「ほう……振り返る前に斬りかかってくるとはな。気に入ったぜ」


 敵はゆっくりと振り向き、刀を構える。


 巨大な大太刀が月光を反射し、刃先が蒼白に光る。

 その影はゆっくりと振り向き、鋭い眼光でライアンを射抜いた。


「……俺はmomonosuke。“裏十三夜”の外使だ」


 「……ライアン。王都の冒険者だ」


 剣を構え直し、睨み合いが始まる。


* * *


 ――温泉地帯:くらしょう&地雷嫌 vs エリナ&リセル

 霧を裂いて放たれた矢が、くらしょうの足元へ突き刺さる。

 足を止めた彼に向かって、リセルが二射目を構える。


 「ふざけた口叩くな……!」


 「おっと危ねぇ。歓迎の矢ってやつか?」


 くらしょうが軽く笑うと、隣で地雷嫌が即座に札を散らし、風の結界を展開する。


 そこへ、エリナが駆けつけた。


 「リセル! 感情だけで飛び出すなんて……危なすぎるわ!」


 険しい声で叱責するエリナに、リセルが肩を落とす。


 「ご、ごめん……でも、どうしても許せなくて……」


 「わかる。でも今は冷静に。二人で、確実に止めるわよ」


 エリナが優しく言い直し、リセルが頷いた。


 「うん……一緒に止めよう、エリナ」


 ふたりは横に並び、敵の前に立ちふさがる。


 「……見えたわ」


 エリナが魔力を集中し、杖を前に出す。


 「私はエリナ。あなたたちが何者でも、ここは通さない!」


 「深淵の牙――くらしょう」


 「口寄せの術師――地雷嫌」


 四人の視線が交差し、戦闘の幕が上がる。


* * *


 ――寺の裏手:タケダ vs ユリウス

 刀を抜いて霧を裂き、ユリウスが全速で斬りかかる。

 その刃を、タケダは鞘に入れたままの刀でいなし、軽く距離を取った。


 「俺の相手は王国の名を背負う男か」


 「貴様は……なるほどな……あの時ただ者ではないと思ったが、やはり芳坊の仲間か」


 タケダは静かに構え直す。


 「タケダ。裏十三夜、“武断”を預かる者だ」


 ユリウスも剣を構え直し、鋭い視線を返す。


 「ユリウス。王国騎士団《紅蓮の盾》の団長だ」


 静かな決意とともに、ふたりの剣がぶつかり合う時が来た。


* * *

「読んでくださって本当にありがとうございます。

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