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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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第43話:揺らぐ大地、旅路の果てに

挿絵(By みてみん)


 王都での騒がしさが一段落し、リクたちはしばしの静けさを味わっていた。

 だが、その安堵は長くは続かなかった。王宮からの急報が、再び彼らを戦場へと駆り立てる。


 「火山地帯にあるテルマ村で、異常気象と地震が続いている。魔物の活動も活性化しており、ただならぬ事態だ」


 謁見の間に集められた三人の前で、宰相とうしの声が厳しく響いた。

 緊張感が張り詰め、玉座の間の空気が一層重くなる。


 リクは自然と背筋を正し、女王と宰相の前で深く息を整えた。


 「今回の任務には、もう一つの騎士団――“紅蓮の盾”が同行する。これは騎士団長の強い要望によるものだ」


 重厚な扉がきしむ音を立てて開かれ、深紅のマントを翻しながら一人の男が現れる。

 その歩みは力強く、揺るぎない自信をまとっていた。


 「……なるほど。ヴェリス、EROKINGを討ったというのは本当のようだな」


 堂々とした佇まい。鍛え抜かれた体躯は鎧に包まれながらも圧倒的な存在感を放ち、鋭い眼光は一瞬で周囲を射抜く。

 だがその瞳には、ただの猛々しさではなく、冷静さと知略を兼ね備えた光が宿っていた。


 「紅蓮の盾、団長のユリウスだ。共に行動することになった。よろしく頼む」


 重々しい声に、リクもすぐさま一歩前へ出る。


 「リクです。こちらこそ、よろしくお願いします」


 差し出した手をユリウスは力強く握り返した。

 骨ばった掌の熱が、彼の強さと経験を雄弁に物語っている。


 「……嫉妬にまつわる争いの土地、テルマ村。甘く見ないことだ。特に“心”の乱れにはな」


 意味深な言葉に、エリナとライアンは一瞬息を呑む。

 魔物ではなく、人の感情そのものが災厄の火種となるのか――二人の胸に、不安と緊張が広がっていった。


* * *


 数日後。

 リクたちはユリウス率いる紅蓮の盾の小隊と共に、テルマ村を目指して王都を発った。


 街を離れるにつれて道は細く険しくなり、周囲の景色も次第に荒々しさを増していく。

 山道を進むにつれ、空気は熱を帯び、やがて肌を刺すような灼熱の気配がまとわりついてきた。


 「……これが火山地帯ってやつか。想像以上に息苦しいな」


 ライアンが額の汗を拭いながら吐き捨てる。

 蒸し風呂のような熱気が体力を容赦なく奪っていく。


 「地面も……ずっと揺れてる。不安定すぎるわ」


 エリナも息を整えながら不安げに周囲を見渡す。

 地鳴りのような振動が途切れず続き、岩肌からは蒸気が絶え間なく吹き上がっていた。


 「地脈が騒いでいる。ただの自然現象では済まない可能性があるな」


 ユリウスが険しい表情で呟いた。

 その横顔には経験から来る警戒心と、戦士としての直感が刻まれている。


 「嫉妬の魔人……関係してると思うか?」


 リクの問いに、ユリウスは無言で頷く。


 「人の感情に作用する力。それが火山の怒りと混ざれば、災厄になる」


 低く響いた言葉は、未来に待ち受ける脅威の大きさを予感させた。


 やがて、山の向こう――霞の彼方に、灰色の屋根のような影がうっすらと浮かび上がった。

 まだ輪郭はおぼろげで、確かな形は掴めない。


 「……あれが、テルマ村か」


 リクが小さく呟いた。

 しかし、その距離はまだ遠く、険しい山道が行く手を阻んでいた。


 そのとき、不意にエリナが振り返る。


 「……今、誰かに見られている気がした」


 「気のせいじゃないか? ここに来てから、空気が妙に重いからな」


 ライアンが肩をすくめて笑うが、その表情はわずかに強張っている。


 しかし、エリナの直感は確かだった。

 遠く離れた影の中で――“何者か”が確かに彼らを見つめていた。

 音も気配もなく、ただ鋭い視線だけが、静かに彼らを追っていたのだ。


 リクたちはその存在に気づかぬまま、テルマ村へと続く坂道を歩み進めていった。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

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