表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/198

第41話:記録は語らずとも

 エリナの視線は、崩れ落ちた天井の裂け目からのぞく空へと吸い寄せられていた。

 そこには、もうManakaの姿はない。

 けれども、あの温かく優しいまなざしと、心の奥に響いた確かな想いの余韻だけは、まだ消えずに残っていた。


 「……消えちゃった」


 かすかな吐息のように漏れた呟きは、広間の静寂に溶けていった。

 その肩を、リクが慌ただしく掴み、揺さぶる。


 「おい、エリナ! 大丈夫か!? さっきから急に動かなくなって……!」


 「何があったんだ? ……何か、見えたのか?」


 リクとライアンの目には、光も幻影も映っていなかった。

 二人が目にしたのは、ただエリナが茫然と立ち尽くしていた姿――それだけだった。

 ただ、その瞳に宿る静かな力だけが、彼女が確かに“何か”を体験した証だった。


 「……うん。私は大丈夫。でも……すごく、大事な人と会ったきがするの」


 エリナは胸元にそっと手を置く。

 そこには、まだかすかな熱が残っていて、脈動のように自分の内側を確かに震わせていた。


 「……会ったって、誰と?」


 リクが息を飲んで問いかける。

 エリナは一度目を伏せ、呼吸を整えると、はっきりと答えた。


 「“XANA: GenesisのManaka”。……まるで古い友人と再会したみたいに、遺跡の石板を通して、彼女と会ったの」


 「Manaka……?」


 ライアンが小さく呟く。


 「映像は乱れてたし、声も届かなかった。たぶん、この遺跡の設備が壊れてるせいだと思う。 でも……それでも彼女は、必死に何かを伝えようとしていたの」


 エリナの言葉に、リクとライアンは無言で顔を見合わせる。

 重苦しい沈黙が三人の間に流れた。


 「“XANA: Genesis”って……なんだ? 初めて聞いたはずなのに……いや、胸の奥が勝手にざわめく……」


 リクが胸を押さえるように呟いた。

 言葉の意味もわからない。

 だが、その響きが過去のどこかに繋がっているような感覚が、心の奥底から押し寄せていた。


 「……それにね、“Genesisカード”を受け取ったの。火の力が私の中に流れ込んで……今なら、炎のXANAチェーンを使える」


 「炎……だと? 魔法に属性が加わったってことか」


 ライアンの声には驚きが混じる。

 これまでエリナの魔法体系“XANAチェーン”には、属性などという概念は存在していなかった。

 だが今、それは明確な“火”というかたちで彼女に宿ったのだ。


 「ただの遺跡じゃないな……」


 リクが呟く。

 その目はすでに石板を超え、遥かな未来を見据えているかのようだった。

 古の遺物などではない。これは“始まり”を告げる装置だ。


 「……この遺跡、きっと“始まり”なんだと思う」


 エリナの声には、迷いのない確信が宿っていた。


 「Manakaがいたってことは、きっと他にも“Genesis”が眠っている。世界のどこかで、私を待ってる」


 リクとライアンはしばし言葉を失ったが、やがて強く頷いた。


 「なら……一度、王城に戻って報告だな。女王にも宰相にも。これは――王国全体に関わる問題かもしれない」


 「うん。ここで止まっちゃいけない。絶対に、もっと大きな何かに繋がってる」


 三人は最後にもう一度石板を振り返り、無言でその姿を胸に刻んだ。

 石板は相変わらず沈黙を守り、ただ静かに彼らを見送っている。

 語ることはない――けれど、確かにそこには“存在”していた。


* * *


 遺跡の奥。崩れた天井の隙間から差し込む光が、長い影を床に落としていた。

 その陰に――かすかに、別の“気配”が潜んでいた。

 いや、“気配”というよりは、遠くから覗き込むような“視線”。

 誰かがそこにいて、三人の背を追いかけているような――。


 (……ん?)


 リクが不意に足を止め、振り返る。

 だが、そこには誰もいなかった。ただ、風が吹き抜けるだけの静かな空間があるだけ。


 「……気のせい、か」


 小さく呟き、再び歩みを進める。

 だが、その背を見つめる“何か”は――確かに存在していた。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ