表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/198

第40話:Manakaの微笑み

挿絵(By みてみん)


 エリナの目の前に浮かぶ、透き通った女性の像――。

 淡いラベンダー色の髪が、まるで水の中で揺れるかのようにふわりと広がっている。

 白と水色を基調とした近未来的なスーツに身を包み、透き通るような紫の瞳が、ただ真っ直ぐにエリナを射抜くように見つめていた。


 その姿は、まったく知らないはずなのに、なぜか胸の奥に懐かしさを呼び起こす。

 優しさに満ちた面差しは、母性のような温もりを湛えていて、エリナの心を一瞬で捕らえた。


 「……あなたの名前……どうしてだろう、ふと浮かんできた……」


 呟きは震え混じり、声というよりは息のように零れ落ちる。

 エリナの口から、意識するより早く言葉が紡がれた。


 「XANA: Genesis #3626……Manaka?」


 その名を聞いた瞬間、女性――Manakaの表情がわずかに変わる。

 驚きと安堵が入り混じったような柔らかな微笑を浮かべ、彼女は静かに頷いた。

 確かに「それが自分だ」と伝えるように。


 次の瞬間、彼女の唇が動き、何かを語りかけようとする。

 しかし――声は、届かない。

 空気を震わせる音は一切存在せず、ただ口の形だけが必死に揺れている。


 「え……? 聞こえない……? どうして……」


 エリナは困惑し、無意識に一歩前へ出る。


 Manakaの唇は確かに動いていたが、音は一切存在せず、映像にもノイズが走る。

 音のない世界に、ただ必死な表情と揺れる唇だけが映る。


 (まるで……幽霊……?)


 その言葉が心に浮かんだ瞬間――Manakaの表情がピクリと変わった。

 強く首を横に振り、必死に否定する。

 怒っているわけではない。ただ「違う」と伝えたくて仕方ないという仕草だった。


 「ごめんなさい……違うんだよね……あなたは幽霊なんかじゃない……」


 思わず謝るエリナの声に、Manakaの瞳がやわらかく揺れる。

 その目元が和らぎ、再び必死に言葉を伝えようとする。

 両手を広げ、胸に当て、また差し伸べ……その仕草は何かの意味を持っているのだろう。


 だが、映像はさらに乱れ、ノイズが走る。

 その輪郭は崩れ、光の粒子にほどけそうになりながらも、Manakaは諦めなかった。

 ――どうしても伝えたい。

 そんな強い想いだけが、確かにエリナには伝わってきた。


 しかし……やがて。

 無理だと悟ったのか、Manakaの動きが静かに止まる。

 そして――最初から知っていたかのように、静かな微笑を浮かべた。


 「……Manaka……」


 その名をもう一度呼ぶと、彼女はゆっくりと手を伸ばし、エリナの胸元に触れた。

 その瞬間、エリナの心臓が大きく跳ねる。


 「……?」


 何かを囁くように、Manakaは口を動かす。

 同時に、熱が胸に走る。


 ――ジリリリリ……!


 金属を擦るような電子音が、鼓膜ではなく脳へ直接突き刺さる。

 頭の奥で機械的な声が鳴り響いた。


 《Genesisカード Manaka 取得》XANAチェーンに火属性 Lv1付加


 突如、頭の中に機械的な声が鳴り響いた。


 「……なに、これ……!」


 エリナの体に衝撃が走る。

 血流とは違う、魔力の新たな奔流が全身を駆け抜ける。

 それはこれまで自分が扱ってきた魔力体系とは異なるもの――

 XANAチェーンに新しい「属性」が接続された感覚だった。


 火属性 Lv1。

 それは確かに、自分の中に存在していた。

 まるで、ずっと前から眠っていた力が呼び覚まされたかのように。


 (わかる……この力……)


 エリナが戸惑いに包まれながらも胸の熱を感じていると、Manakaは静かに手を離した。

 もう何も語らない。ただ、優しく穏やかな笑みを残すのみ。


 その唇が、最後にわずかに動いた。


 声はやはり届かない。

 けれど――エリナには確かに分かった。


 (……さようなら。また、会いましょう)


 その言葉が、胸の奥深くに刻まれる。


 そして――Manakaの姿は光の粒子となり、風に散るように静かに消えていった。

 淡い残光だけを残し、広間には再び重苦しい沈黙が訪れる。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ