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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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第25話:女王との対面

挿絵(By みてみん)


 ゼインの案内で、リクたちは壮麗な宮殿へと足を踏み入れた。

 白亜の壁に彩られた彫刻や絵画が並び、煌びやかな装飾が隅々まで施されている。


 「すごい……こんなに豪華な場所、初めて見たかも」


 エリナが圧倒されながら呟いた。


 「王都の中心にある宮殿だからな。一般の者が立ち入ることはほとんどない」


 ゼインが淡々と説明する。


 「やっぱり俺たち、場違いなんじゃないか?」


 ライアンが不安そうに眉をひそめた。


 「安心しろ。女王陛下は君たちを歓迎している」


 ゼインは微笑を浮かべながら言った。


 やがて、彼らは謁見の間へと通された。

 広大な空間に、豪華な椅子が高い台座の上に据えられている。

 その椅子に座っているのは、若く美しい女性――女王シーユキ。

 長く艶やかな黒髪が背中まで流れ、その目には優雅さと慈愛が宿っていた。


 彼女の隣には、一人の男が控えていた。

 鋭い眼差しを持つ宰相、とうし。

 まだ二十代後半ほどの若さでありながら、既にその名を広く知られている才覚の持ち主。

 黒髪は短く整えられ、端整な顔立ちに冷静で鋭い眼差しを湛えていた。

 厳格で無駄を嫌う性格が、立ち居振る舞いの全てに表れている。


 「ようやく現れたか。無駄な時間は取らせるな」


 とうしの声は冷徹で鋭い。まるで相手の実力を瞬時に見極めるような眼差しをリクたちに向ける。


 「私はこの国の宰相、とうし。女王陛下に代わり、必要な事柄を伝達する」


 リクは圧倒されながらも一礼した。


 「……俺はリクです。こちらはエリナとライアン」


 「ゼインから報告は受けている。貴様らが『傲慢の魔人』ヴェリスを討った者たちか」


 「はい……なんとか倒せました」


 リクが控えめに答える。


 「結果のみを語れ。余計な謙遜は不要だ」


 とうしが一歩進もうとしたその時、女王シーユキが柔らかく口を開いた。


 「とうし、少しお待ちなさい。まずは歓迎の言葉を」


 彼女の声に、宰相は静かに一歩引く。


 私はシーユキ。この国を治める者です。あなたたちに会えて嬉しいわ」


 「……ありがとうございます、陛下」


 リクはもう一度、深く頭を下げた。


 シーユキは穏やかな笑みを浮かべながら、静かに告げる。


 「あなたたちが傲慢の魔人ヴェリスを倒したこと、それは王都にとっても希望となる知らせでした。」


 とうしが続きを引き取る。


 「貴様らがヴェリスを討ち取ったことは確かに評価に値する。しかし、ヴェリスを倒して終わりではない」


 とうしは一度間を置き、厳しい視線をリクたちへと向ける。


 「現在、王都にも大きな脅威が迫っている。『七つの大罪』の一人――色欲の魔人『k』がこの地を脅かしている」


 「『k』は色欲を司る魔人だ。その手口は極めて狡猾で、破壊行為による攻撃ではなく、人心を惑わし国家の中枢へ浸透することを好む」


 「奴は魔力を利用し、人々の欲望を増幅させることで混乱を引き起こしている。貴族や高官の間で色欲に溺れ、権力を巡る争いが激化する事態となっている」


 「更に、王都の各地で不可解な事件が相次いでいる。市民が突然狂乱状態に陥り、無差別に暴力を振るうなどの症例も確認されている」


 「内部から崩壊する危険がある」


 とうしの言葉は冷酷なほど正確で無駄がなかった。


 「リク、エリナ、ライアン。あなたたちの力を貸していただきたいの」


 シーユキが静かに口を開いた。


 「ヴェリスとの戦いで決意しました。俺は、もう誰にも悲しい思いをさせたくない。もっと強くならなきゃならないって」


 「私も……」


 「……そうだよな」


 リクたちは当時の状況を思い出し、それぞれの想いがあふれる。


 「冒険者として、これ以上の危機を見過ごすわけにはいきません。俺たちでできることがあるなら……協力させてください」


 リクはしっかりと頭を下げた。


 「嬉しいわ、リク。それにエリナ、ライアンもありがとう。あなたたちの協力をとても頼もしく思うわ」


 シーユキは優しく微笑んだ。


 「とうし。彼らには必要な援助を整えてあげて」


 「承知しました、陛下」


 とうしは頷き、冷静に説明を始める。


 「ゼイン、彼らに対し装備の支給、必要な資金の提供、訓練施設の使用許可を与える。さらに、必要な権限を柔軟に融通するよう取り計らえ」


 「かしこまりました。彼らの活動が円滑に進むように最大限の支援を行います」


 ゼインは落ち着いた口調で応じた。


 「そして……」


 シーユキは静かに言葉を継ぐ。


 「あなたたちには連絡役をつけましょう」


 「連絡役、ですか?」


 リクが首を傾げる。


 「リリィ、出てきなさい」


 シーユキが呼びかけると、何もない空間から少女の姿がふっと現れた。


 彼女は細身の体に黒い装束を纏い、鋭い眼差しを持っていた。年齢は十代後半ほどに見えるが、その雰囲気は只者ではない。


 「お初にお目にかかります。私はリリィ。女王陛下に仕える者です」


 「普段は姿を隠しているけれど、用がある時は名前を呼んでくれればすぐに現れるわ」


 シーユキが説明する。


 「あなたたちの活動を支援するために、彼女を連絡役としてつけることにしました。必要な情報や指示があれば、リリィを通じて伝えます」


 「分かりました。ありがとうございます、陛下」


 リクは深く頭を下げた。


 「どうか無事であることを祈っています。あなたたちの力を信じています」


 シーユキは柔らかく微笑みながら言葉を締めくくった。


 リクたちは再びゼインに案内され、謁見の間を後にした。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想をいただけたら、今後の創作の励みになります。」

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