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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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第22話:王都への旅路

 ゼインとの出会いから数日後、リクたちはフェルダンの街を後にし、王都へと向かっていた。


 「この道を辿れば、二週間ほどで王都に到着するだろう」


 ゼインが淡々と説明する。


 「二週間か……結構な距離だな」


 ライアンが頷きながら呟いた。


 「救援や調査に来たという割には、随分と少人数なんですね。ゼインさん以外に兵士とかはいないんですか?」


 リクは少し疑問を感じて尋ねた。


 「偵察と接触が目的の先遣任務だからな。私の部隊には、フェルダン周辺での医療支援や物資搬入、仮設住居の設置などを任せてある。私はその間に、君たちを王都へ同行させる判断をした」


 ゼインは事も無げに答えた。


 「つまり、部隊はフェルダンに残して、ゼインさんだけが王都に戻るってことですか?」


 リクが確認するように尋ねる。


 「そうだ。君たちの訓練を見る限り、すでに聞いていた以上のものだった。色欲の魔人『k』の影響は王都にも及びつつある。私自身が状況を見極め、適切な判断を下す必要がある」


 「部隊を率いてるのに、わざわざ前線に出るんですか?」


 エリナが目を丸くする。


 「騎士団長である前に、私は剣士だ。報告書や伝令では伝わらぬ空気がある。現場に身を置き、自らの目で確かめたものだけが、真の判断材料になる」


 ゼインの言葉は静かでありながらも、芯の通った重みを帯びていた。


 「なるほど……だから、王国から信頼されてるんですね」


 リクは素直に感心して頷いた。


 「信頼というより、私は私の矜持に従って動いているだけだ。守るべきものがあるなら、誰であれ剣を抜く。それが、私の在り方だ」


 ゼインはわずかに口元を緩めながらも、眼差しは真剣だった。


 「矜持……ですか」


 リクはその言葉を噛みしめるように繰り返した。


 「すごいかどうかは分からないが、私は己の使命を全うするだけだ。貴族の名を継いでいようが、剣を取る理由に違いはない」


 ゼインの声には、迷いのない強さがあった。


 「貴族……だったんですね」


 リクが少し驚いた表情を見せた。


 「ああ。私の家は代々、王国に仕えてきた家系だ。だが、それだけでは人は動かぬ。だからこそ私は、名ではなく行動で示すと決めている」


 ゼインは静かに言った。


 「貴族とかそういう肩書きより……あの人は“覚悟”を背負ってるって感じがする」


 ライアンが小さく苦笑しながら言った。


 「でも、優しい人ですよね。私たちを対等に見てくれてる……」


 エリナも嬉しそうに笑った。


 「ふん、優しいってのとはちょっと違うだろうが……まあ、悪い人間じゃなさそうだな」


 ライアンは肩をすくめた。


* * *


 旅の途中、リクたちはいくつかの村を通り過ぎた。

 しかし、どの村も異様なまでに静まり返っていた。人々は外出を避け、家に閉じこもっているようだった。


 「ここも……魔物の脅威に怯えているんだな」


 リクは重い口調で呟いた。


 「そうだ。魔物の活動が活発化しているのは、ただの偶然ではない。何かしらの意図が働いていると考えるべきだ」


 ゼインは冷静に分析する。


 「意図……魔王の仕業ってことか?」


 ライアンが尋ねる。


 「おそらくはな。『七つの大罪』が動いている以上、我々もその対処を急がなければならない」


 ゼインは険しい表情を浮かべた。


 「王都も、そんな状況にあるんですか?」


 エリナが不安げに尋ねた。


 「そうだ。色欲の魔人『k』が現れて以来、王都周辺の地域でも被害が続出している。私がこうしてフェルダンに来たのも、調査の一環だ」


 「じゃあ、早く行かないと……王都も危ないってことか」


 リクの表情が引き締まる。


 「君たちの力を借りたいのは、ただ魔人を討つためだけではない。人々に希望を取り戻すためでもある」


 ゼインは静かに語った。


* * *


 旅路は続いた。昼間は道を急ぎ、夜になると野営を張り、交代で見張りを立てながら休息を取った。


 ゼインは仲間を見下すような態度は一切見せず、むしろ共に戦う仲間としてリクたちに接していた。高い実力を持ちながらも、必要以上に高慢にならない姿勢は、リクたちに好印象を与えていた。


 ゼインはリクたちの会話を聞いていたわけではないが、夜の見張りを交代する際に一言だけ告げた。


 「私にとって重要なのは、君たちの実力だ。対等に扱うのは当然のことだ。どちらが上だなどと判断するつもりはない」


 その言葉に、リクは小さく頷いた。ゼインの言葉は厳格でありながらも、彼の誠実さを感じさせた。


* * *


 やがて、遠くに王都の高い城壁が見えてきた。


 「もう少しで到着だ」


 ゼインが前を指差しながら言った。


 「これが……王都……」


 エリナが目を輝かせる。


 「綺麗な城だな……でも、戦いが続いてるんだよな」


 リクは複雑な表情を浮かべた。


 「そうだ。今もなお、色欲の魔人『k』の手によって多くの人々が苦しめられている」


 ゼインは厳しい表情で続けた。


 「君たちの力が必要だ。どうか……王都を救うために協力してほしい」


 「もちろんです。全力を尽くします」


 リクは力強く答えた。


 ゼインは微かに微笑み、リクたちを王都へと案内した。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

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