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永遠に巡る愛の果てへ 〜XANA、理想郷を求めて〜  作者: とと
第2部:リクとエリナ 〜新たな世界での出会い〜

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第14話:いちご泥棒の存在

 ギルドに戻って依頼の報告を済ませた後、リクは掲示板に貼られたランキングを見つけた。


 「……ん? これは何だ?」


 彼が目にしたのは、ギルド内で毎月更新されている「素材収集ランキング」だった。冒険者たちが集めた素材の種類や質、数に応じてポイントが加算され、その合計値で順位が決まる仕組みらしい。


 「ほら、これ。ランキングってやつか?」


 リクが驚いたように声を上げた。


 「お前もランキングに興味があるのか?」


 ライアンが後ろから声をかけてくる。


 「いや、ただ見つけただけで……でも、1位のポイントが異常なんだ」


 リクが指差したランキングの一番上には、目を疑うようなポイント差をつけて記載された名前があった。


 『いちご泥棒』


 「いちご泥棒……?」


 エリナが首を傾げる。


 「変な名前だよな。だけど、ここじゃちょっとした有名人だ。正体は不明だが、“らふくまの毛”を集める量が尋常じゃないらしい。変化する前に刈り取らないといけないから難度も高く、大量に収集しても需要があるから価格も落ちないんだ。むしろ徐々に上がっていっている」


 「らふくま……あの、森にいるふわふわしたやつ?」


 「そう。それも、ただ刈って素材を集めるってレベルじゃない。何か執念めいたものを感じるくらい、執拗に狙ってるらしい」


 ライアンは少し真剣な表情になった。


 「……俺は一度、『いちご泥棒に遭遇した』って冒険者を介抱したことがある」


 「え……実際に遭った人がいるの?」


 リクが目を見開く。


 「ああ。森の奥で倒れているのを見つけた。目の焦点が合ってなくて、誰の声も届かない状態だった。一度正気に戻ったと思ったら、『いちご泥棒の顔を見た』ってつぶやいて……次の瞬間には、必死な形相で“まるがりーた……まるがりーた……”って延々と叫び続けていた」


 「まるがりーた……?」エリナが不安そうに呟く。


 「それが何を意味するのか、俺にも分からない。でも……あいつはもう、戻ってこれなかった。今も精神を病んで施設に入ってるらしい」


 ライアンは腕を組んで、低く唸るように続けた。


 「それ以外にも奴の話はいくつか聞いたことがある。見た目は暑い日でもコートを着ていて、その内側には大小異なったバリカンやカミソリを装備しているらしい。近接でも遠距離でも対応可能で、らふくまと誤解されたら最後、人に対してでもカミソリシュート!と叫びながらカミソリを投げつけてくるようだ。逃げ遅れた奴は毛という毛が刈られ、裸になって帰ってきたとか、森の奥でらふくまと人影を見た直後に記憶が飛んでいたって話とか……」


 「それって本当に、“いちご泥棒”の仕業なんですか?」


 リクが問いかける。


 「確証はない。ただ、噂の大半に“らふくま”が関係している。不自然に共通点が多すぎるんだ。人によっては、都市伝説みたいなもんだって言うけどな」


 エリナは少し顔をこわばらせながら、静かに言った。


 「正体もわからないし……でも、遭った人が壊れてしまったっていうのは、ちょっと怖いよね……」


 ライアンは真剣な目で二人を見据える。


 「危険かどうかは分からない。だけど、俺が介抱したやつみたいに、“まともじゃなくなる”可能性がある。俺が見たのは一人だけだが、他にもそういう話はあるんだ」


 そして、声のトーンを落とし、念を押すように続けた。


 「だから、お前たちも“いちご泥棒”に関わることがあったら……迷わず逃げろ。少なくとも、軽い気持ちで近づくような相手じゃない」


 「わかった……気をつける」

 リクが頷く。


 「うん。絶対に、無茶はしないよ」エリナも強く返した。


 ライアンは二人の表情を見て、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。


 「ま、それでいい。お前らはまだ始まったばかりだ。変な噂に首を突っ込むより、まずは足元を固めることだな」


 ギルドの喧騒の中、妙な静けさが三人の間を流れていた。名前だけが残る謎の存在――“いちご泥棒”。


 その名は、冗談では済まされない現実として、リクたちの心に深く刻まれた。

「読んでくださって本当にありがとうございます。

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